上 下
42 / 506
第1問 理不尽な目覚め【出題編】

40

しおりを挟む
 白川と黒井、青野と赤間。この双方は交際状態にあるカップル同士だった。それならば、自由行動の際にバラバラに動くのは違和感がある。ましてや、白川は相手の黒井とではなく、赤間の相手である青野と合流している。これが示しているのはすなわち――。

「浮気ってやつか? 実は白川と青野がいつのまにかできていたってパターンだな」

 小野寺が答えを言う前に、ぽつりと答えを漏らしてしまう出雲。小野寺は咳払いをすると、それに付け足した。

「補足するのであれば、黒井と赤間も同様の関係にあったと考えるのが自然ですね。少なくとも、ここまでの情報から察するに、それぞれのカップル仲が冷め切っていたことが伺えます。例えば、どちらか一方が、それぞれの恋人に内緒で交際していたとすると、いくら自由行動の時間だとしても、同じキャンプ場内で合流するのはリスクが高すぎる。むしろ、こういう時こそ、疑われぬように、それぞれの相手と過ごすのではないでしょうか?」

 白川と青野が合流する。この事実、もし黒井と赤間が何も知らない状態であるのならば、かなりリスキーなことである。下手をすれば、2人で一緒にいるところを、黒井か赤間に目撃されてしまうかもしらない。そこから互いの浮気がばれてしまったら身もふたもないだろう。しかしながら、白川と青野は、自由行動で合流することになった。堂々とこんなことができるのは――それぞれのカップル仲が冷え切っていたか、双方ともに浮気をしており、それが定着しつつあったかのいずれである可能性が高い。

「確かになぁ。ってことは、そういうことをしても問題ないくらいには、互いのカップル仲は崩壊寸前だったってことか」

 自由行動なのにバラバラに行動する。恋人ではない相手と合流をする。白川と青野の行動から推測しただけなのであるが、可能性としては充分にあり得ると思う。

「あくまでも可能性ですけどね」

 ただ、それが決定的な論拠となるわけではない。推測は推測にすぎないというやつだ。

「となると、黒井が殺された理由は――痴情のもつれってやつなのかもなぁ」

 出雲こと、小野寺が【ケンさん】と呼んでいる男は、俗に言う叩き上げの刑事だ。情報は足で稼ぎ、犯人もほとんど執念のようなもので逮捕する。こう言ってしまうと出雲には失礼なのであるが、いまだに根性論が根深く残っているような、やや古いタイプの刑事だ。時代が進むにつれて、警察の仕事も効率化されてきたが、それに馴染めないタイプというべきか。少なくとも、小野寺が知っている限り、頭を使うよりも体を使い、根性論で事件を解決する刑事――それが出雲という男だった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

鬼退治に行こう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

冴えない俺

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

虚構の檻 〜芳香と咆哮の宴~

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

婚約破棄された令嬢「うわっ・・・私の魅力、低すぎ・・・?」

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:23

グロくない

Ken
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

【完結】一本の電話

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...