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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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『これらのことを参考に、警察は――橋の上から渓谷に飛び込んでの自殺であると断定しました。しかし、実際のところ黒井さんを殺害した犯人は白川さん、青野さん、赤間さんの3人のうちのいずれかです。ここからは、もう少し周辺の情報を交えて進めて参りましょう』

 警察は自殺と断定――いやいや、これまでの情報だけでも、被害者が自殺であることは否定されているではないか。少なくとも、橋の上から渓谷に飛び込んだことは否定されるはず。もし、これが本当に起きた事件であれば、かなり捜査が杜撰ずさんだったということになる。

 出雲は黙ったまま画面を眺め続けている。彼の意見を聞きたいような気もしたが、しかし再現映像は待ってくれない。ブラックアウトをした画面に改めて映ったのは、白い全身タイツ――白川だった。

『それぞれがバラバラに行動を始めたのは午後8時頃。そして、戻ってきたのが9時頃となります。その1時間――黒井さんの分も含め、判明している限りで何をしていたのかをご説明します』

 午後8時から午後9時までの間、4人は別行動をとっていたと思われる。そして、黒井は9時になっても戻ってこなかった。つまり、もし何者かの手によって黒井が殺害されたのであれば、午後8時から午後9時の間ということになる。この時間帯のそれぞれの動きが分かれば、何か手がかりを掴めるかもしれない。

『まず、白川さんの行動です。自由行動が始まって数分もしないうちに――実は青野さんと合流していました』

 そのナレーションに、出雲は「ん?」と声を上げる。一方、小野寺は小さく溜め息を漏らした。そもそも、この午後8時から午後9時の自由行動に違和感を抱いていたのだが、なるほど――そういうことか。

「おい、小野寺。俺の記憶が正しければ、白川は黒井と交際していたはず。それなのに、どうして青野と合流しなきゃならんのだ?」

 出雲の言う通り、黒井と白川、青野と赤間でカップルとなっていたはず。しかしながら、自由時間で白川が一緒にいたのは黒井ではなく青野だった。溜め息混じりで小野寺は口を開く。

「――そもそも、自由時間でそれぞれバラバラになること自体がおかしいと思ったんです。普通、そういう時こそ、カップル同士で動くものでしょう? それなのに、それぞれがバラバラに動いていた。これらの情報から、ある可能性が浮かび上がります。しかも、白川と青野が一緒に行動していたことが分かった時点で、その可能性はかなり信憑性の高いものになると思います」
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