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35話
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地面に叩きつけられた俺の方がダメージは大きそうに見えるが、こちらは殆どダメージが無い。
というのも、麗奈さんは相当無茶な体勢で攻撃をしてきたからだ。
ファイティングポーズのような体勢のまま上にジャンプして、ジャンプする前の膝の位置より低い相手に腕で攻撃しているのに威力が出るわけがない。
麗奈さんでも流石に当てることで精いっぱいだった。
「最初の攻撃程ではないが、あの体勢からでもこの威力とはな」
「ありがとうございます」
俺も同じく無茶な体勢のまま攻撃をしていたのだが、俺の方は最初の攻撃の7割程度の威力は出ていた。最初の攻撃は自分の出せる最大火力の為、その7割となれば及第点と言えるだろう。
理由はただ一つ。先ほどの攻撃に際し、スキルが大量に発動していたから。
同じ状況から麗奈さんが攻撃をしたとしても、多分俺の半分も威力は出ないだろう。
「あの体勢であそこまでの攻撃力が出るか……?最初の攻撃が最大威力と考えると、あまりにも不自然だな…… 訓練したら出来るようなものなのか?思い返してみればこの間の悪魔も似たような事が出来ていたな……」
「悪魔?」
「ああ、飛鳥の先ほどの攻撃がそいつに似ていてな。とはいっても、あちらは魔法で何かしらをしていたようだが」
「不思議な戦術をとる敵も居たものですね」
こんな戦法、スキルで補正をかけまくれる俺くらいしか意味が無さそうなのに。不自然な体勢での攻撃を魔法で補助出来るとしても、魔法を使えるのなら普通に遠距離攻撃した方が強そうだし。
「とそんなことはどうでも良い、続けるぞ」
「はい!」
それからもしばらく戦闘は続き、最後に麗奈さんから一本背負いをくらって戦闘は終了した。
「お疲れ様。良い戦いだったぞ」
「ありがとうございます……」
結局、麗奈さんにダメージらしいダメージを与えることは出来なかった。麗奈さんのレベルが異常に高いとはいっても、攻撃力には自信があったので少し悔しい。
「先に結論から言うと、Aランク昇格試験は合格だ」
「本当ですか!?」
「ああ、私は嘘をつかない。ただし合格したのは昇格試験のルールに沿った結果であり、私個人としてはもう少しBランクとして経験を積むことを推奨する」
「ルール、ですか?」
「ああ。今回試験の中で確認していたのは、攻撃力と防御力という基礎能力と、応用的な部分である対人戦闘能力。攻撃力に関しては文句なしの合格だ。現時点でAランク探索者の中でも良い位置につけるだろう」
「はい」
攻撃力に関してはもともと自信があったので、まあそうだろうなといった感じだ。
「また、対人戦闘能力に関しても個人的には申し分なかった。どんな体勢でも高い威力を出せるという長所を利用し、お互いに戦いにくい体勢を要求させ、一方的に有利を取るという戦闘スタイルは非常に面白い」
「ありがとうございます」
普通にボコボコにされていた記憶しかなかったけれど、対人戦闘能力は意外に好評だったらしい。
「問題は防御力だ。合格条件は試験終了まで戦闘不能にならないこと。そして飛鳥は見事に条件を満たしたのだが、あくまで回復力を高めていたお陰だ。一撃に重きを置いたモンスターの攻撃を耐えるのは難しい。回復する以前に耐えられずに死ぬだろうからな」
「ですよね……」
回復力は一撃を耐えきれることが前提なのだから、一撃で倒されたら全く価値が無い。
「どうしてそんな歪な戦闘能力になっているのか気になるところではあるが、そこは企業秘密だろう?」
「そうですね」
「だから私から聞くことは無い。とはいっても実は原因の想像はついているのだがな。回復力を補助する道具なんて最初から持っていないだろう?」
えっ、バレてる……!?
ってそうじゃん。
最初に『師走の先』の施設を使って蓮見さんと共にスキルを乱獲したんだからそれがギルドマスターの耳に入っていてもおかしくないよね。
「とりあえず、妹のところへ向かうぞ」
「そうですね」
俺たちはまだ戦闘を続けている杏奈さんたちのところへ向かうことに。
「ほらほら、攻撃が軽いよ!」
「はああっ!!!!」
杏奈さんが攻撃をして、氷浦さんがそれを生身で受けるという形だった。試験で調べる項目は同じ筈なので、防御力に関しては既に終わっているのだろう。
「あれって本当に剣と生身がぶつかった結果なんですか……?」
ぶつかっているのが金属同士でもないのに、何故か金属同士がぶつかり合っているような音が鳴り響いている。
「氷浦が身に着けている防具は透明だからな。見えていないだけで金属の鎧だ」
「そんな防具があるんですね」
透明な防具か。確かによくよく見ると攻撃が通る寸前に跳ね返されているように見える。
「ああ、その癖してあれの防御力は異常に高い。本人から聞いた話によると、自分が得た経験値の一部を注ぎ込むことで防具を成長させられるのだとか」
「成長する防具ですか。そんなものがあるんですね」
「あるらしい。残念ながら私と『師走の先』はそういう防具は一つも持っていないがな」
「じゃあ珍しい防具なんですね……」
「恐らくな。とは言っても『師走の先』に並ぶようなギルドは最低でも一つは持っているらしいのだが。まあ、私は運がよくない方らしいからあまり気にするほどの事でもないのだがな」
逆にそれで他のギルドに並びたてていることの方が凄い気もするけれど、それも含めて『師走の先』の凄さなんだろうな。
というのも、麗奈さんは相当無茶な体勢で攻撃をしてきたからだ。
ファイティングポーズのような体勢のまま上にジャンプして、ジャンプする前の膝の位置より低い相手に腕で攻撃しているのに威力が出るわけがない。
麗奈さんでも流石に当てることで精いっぱいだった。
「最初の攻撃程ではないが、あの体勢からでもこの威力とはな」
「ありがとうございます」
俺も同じく無茶な体勢のまま攻撃をしていたのだが、俺の方は最初の攻撃の7割程度の威力は出ていた。最初の攻撃は自分の出せる最大火力の為、その7割となれば及第点と言えるだろう。
理由はただ一つ。先ほどの攻撃に際し、スキルが大量に発動していたから。
同じ状況から麗奈さんが攻撃をしたとしても、多分俺の半分も威力は出ないだろう。
「あの体勢であそこまでの攻撃力が出るか……?最初の攻撃が最大威力と考えると、あまりにも不自然だな…… 訓練したら出来るようなものなのか?思い返してみればこの間の悪魔も似たような事が出来ていたな……」
「悪魔?」
「ああ、飛鳥の先ほどの攻撃がそいつに似ていてな。とはいっても、あちらは魔法で何かしらをしていたようだが」
「不思議な戦術をとる敵も居たものですね」
こんな戦法、スキルで補正をかけまくれる俺くらいしか意味が無さそうなのに。不自然な体勢での攻撃を魔法で補助出来るとしても、魔法を使えるのなら普通に遠距離攻撃した方が強そうだし。
「とそんなことはどうでも良い、続けるぞ」
「はい!」
それからもしばらく戦闘は続き、最後に麗奈さんから一本背負いをくらって戦闘は終了した。
「お疲れ様。良い戦いだったぞ」
「ありがとうございます……」
結局、麗奈さんにダメージらしいダメージを与えることは出来なかった。麗奈さんのレベルが異常に高いとはいっても、攻撃力には自信があったので少し悔しい。
「先に結論から言うと、Aランク昇格試験は合格だ」
「本当ですか!?」
「ああ、私は嘘をつかない。ただし合格したのは昇格試験のルールに沿った結果であり、私個人としてはもう少しBランクとして経験を積むことを推奨する」
「ルール、ですか?」
「ああ。今回試験の中で確認していたのは、攻撃力と防御力という基礎能力と、応用的な部分である対人戦闘能力。攻撃力に関しては文句なしの合格だ。現時点でAランク探索者の中でも良い位置につけるだろう」
「はい」
攻撃力に関してはもともと自信があったので、まあそうだろうなといった感じだ。
「また、対人戦闘能力に関しても個人的には申し分なかった。どんな体勢でも高い威力を出せるという長所を利用し、お互いに戦いにくい体勢を要求させ、一方的に有利を取るという戦闘スタイルは非常に面白い」
「ありがとうございます」
普通にボコボコにされていた記憶しかなかったけれど、対人戦闘能力は意外に好評だったらしい。
「問題は防御力だ。合格条件は試験終了まで戦闘不能にならないこと。そして飛鳥は見事に条件を満たしたのだが、あくまで回復力を高めていたお陰だ。一撃に重きを置いたモンスターの攻撃を耐えるのは難しい。回復する以前に耐えられずに死ぬだろうからな」
「ですよね……」
回復力は一撃を耐えきれることが前提なのだから、一撃で倒されたら全く価値が無い。
「どうしてそんな歪な戦闘能力になっているのか気になるところではあるが、そこは企業秘密だろう?」
「そうですね」
「だから私から聞くことは無い。とはいっても実は原因の想像はついているのだがな。回復力を補助する道具なんて最初から持っていないだろう?」
えっ、バレてる……!?
ってそうじゃん。
最初に『師走の先』の施設を使って蓮見さんと共にスキルを乱獲したんだからそれがギルドマスターの耳に入っていてもおかしくないよね。
「とりあえず、妹のところへ向かうぞ」
「そうですね」
俺たちはまだ戦闘を続けている杏奈さんたちのところへ向かうことに。
「ほらほら、攻撃が軽いよ!」
「はああっ!!!!」
杏奈さんが攻撃をして、氷浦さんがそれを生身で受けるという形だった。試験で調べる項目は同じ筈なので、防御力に関しては既に終わっているのだろう。
「あれって本当に剣と生身がぶつかった結果なんですか……?」
ぶつかっているのが金属同士でもないのに、何故か金属同士がぶつかり合っているような音が鳴り響いている。
「氷浦が身に着けている防具は透明だからな。見えていないだけで金属の鎧だ」
「そんな防具があるんですね」
透明な防具か。確かによくよく見ると攻撃が通る寸前に跳ね返されているように見える。
「ああ、その癖してあれの防御力は異常に高い。本人から聞いた話によると、自分が得た経験値の一部を注ぎ込むことで防具を成長させられるのだとか」
「成長する防具ですか。そんなものがあるんですね」
「あるらしい。残念ながら私と『師走の先』はそういう防具は一つも持っていないがな」
「じゃあ珍しい防具なんですね……」
「恐らくな。とは言っても『師走の先』に並ぶようなギルドは最低でも一つは持っているらしいのだが。まあ、私は運がよくない方らしいからあまり気にするほどの事でもないのだがな」
逆にそれで他のギルドに並びたてていることの方が凄い気もするけれど、それも含めて『師走の先』の凄さなんだろうな。
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