~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A

文字の大きさ
上 下
36 / 87

36話

しおりを挟む
「にしても、妹は短期間でよくここまで成長できたものだな。姉として非常に喜ばしい」

「ほんとうに異次元のペースですよね」

 出会った当初ですら同世代でダントツトップだったのに、今ではそれを軽く引き離している。

「これなら私を超えてくれるのかもしれないな……」

「麗奈さんより早いんですか?」

「当然だ。環境による差を考慮しても、当時の私がここまで成長できていた自信はない」


「ということはある意味で麗奈さんを追い越しているんですね」

 本人は納得しないだろうが、今の杏奈さんは麗奈さんよりも凄いらしい。

「まあ、当時の私と今の妹が直接対決したら私が勝ってしまうのだがな!」

「え?」

 レベルって探索者の中で何よりも大事なものじゃありませんでしたっけ。

 杏奈さんは別に同レベルの人と比べて実力が劣るわけでもないし、何なら勝っている部分すらあるだろう。そんな杏奈さんをレベルが低い状態で倒す。流石に無茶な話ではなかろうか。

「私は姉だからな。妹には負けない」

「そういうものなんですか?」

「ああ、姉は最強なのだ」

「姉は最強、ですか……」

 俺には孤児院の皆という家族のような人たちは居たし、姉みたいな人も居たけれど、血の繋がった本当の姉が居たわけでは無いのでそこらへんはいまいち分からない。

「と私の冗談はどうでも良いんだ。愛しの妹の戦闘を見るぞ」

「はい」

 それからは特に会話を交わすことなく、杏奈さんの戦闘を見た。


「はい、お疲れ様。これで試験は終了だよ」

「はあ、はあ、ありがとう、ござい、ました……」

 涼し気な顔で試験終了を宣言する氷浦さんに対し、杏奈さんは息があがりきって立っているのですらやっとのようだった。


「えっと、そっちはもう結果とかも全て言ってあるのかな?」

「ああ。飛鳥の実力に少し気になるところはあったのだが、昇級試験は見事合格。そして妹の生涯のパートナーとしても合格だった」

「生涯のパートナーって」

 仲間としてふさわしいかどうかを確かめに来ているのは分かっていたけれど、まさかそこまで考えて見られていたとは思わなかった。

「私は飛鳥と妹が結婚することを歓迎するぞ。もっと個人的な話をすると飛鳥の方が卯月に苗字を変えてほしい。やはり妹とはずっと同じ苗字でいたいからな。やはり繋がりは多ければ多いほどいいからな」

「……」

 麗奈さんが美人な姉だから今までのシスコンぶりは微笑ましいとかそのレベルでスルー出来たのだが、流石にそれは気持ち悪い。

「と、とりあえず、杏奈さんの方の試験結果を報告させてもらうよ。二人とも覚悟は良い?」

「「はい」」

「今回、杏奈さんはA級試験に不合格となりました」

「どうしてですか?」

 外から見ている感じ、杏奈さんの能力に不足があったように感じられなかったので、俺は思わずそう言ってしまった。

「一緒に探索者として活動していて、今回の試験を途中から観戦していた如月君としては不思議に思うだろうね」

「私はA級として完璧だと思ったのですが。一体どこが駄目なんでしょうか……?」

 不合格の理由は杏奈さんも理解できないらしく、氷浦さんに同じく質問していた。

「そうだね、先に良かった点から話そうか。一番良かったのは防御力、厳密には回避力だね。あそこまで僕の攻撃を避けられるのであれば多少耐久が怪しくても問題ないよね。で、その影響からか対人戦闘能力も高かった。有り余る回避能力をカウンターに活かすことが出来ていた点は非常に良いと思う」

「ありがとうございます」

 この二点に関しては、恐らく二人でダンジョンに潜っていた時のボス戦で引き付ける役割をずっと担ってくれていたことで強く成長していたのだと思う。

 実際、昇級条件を満たした回のボス戦では見るからに余裕そうに立ち回っていた。

「それもあって、二人がこちらに来た時にはその部分のチェックは必要ないからと攻撃を止め、防御に徹していたわけなんだ。残る一点、攻撃力が気になっていたからね」

「攻撃力、ですか?」

 杏奈さんの攻撃力に問題とかあったっけ?

「そう、攻撃力。多分攻撃力が異様に高い如月君が味方にいるせいで全く問題にはならなかったんだろうけど、杏奈さんの一撃の攻撃力はAランクの水準には全く届いていない。なんならB級になりたての子の方が強いかもしれない」

「杏奈さんのレベルってそんなに低くないですよ……?」

 俺と違い、杏奈さんは皆と同じようにレベルが上がり、順当に強くなっていっている。そして、杏奈さんのレベルは40後半。B級なりたての人たちと比べられる程度の攻撃力ではないはずだ。

「そうだね。移動スピードとかを見ている限り、レベルは全く低くはない。といっても、A級昇級に必要な標準レベルとされている50レベルにはぎりぎり届いていないようだけれどね。48くらいかな?」

 正しくは47だが、杏奈さんのレベルはあっさりと見破られていた。

「ただ、攻撃力以外の分野に関しては十分すぎるほどに足りていたから無謀では無いよ。だけど、杏奈さんの攻撃力はその水準にすら届いていなかった。理由は分かるかな?」

「理由、ですか……?」

 杏奈さんは氷浦さんからの突然の問いに困惑しているようだった。

「そう、理由。でもその様子だと分からないみたいだね。杏奈さん、君は手数を重視するあまり必要最低限の威力しか乗せない癖がついている」

「そんなはずは……!」

「じゃあ試しに如月君に攻撃してみてよ」

「氷浦、飛鳥の耐久力の水準はAランクに届いていないのだが大丈夫か?」

「そうなの?まあ、大丈夫だと思うよ」

「だそうだ。妹よ。攻撃してみろ」

「知りませんよ……」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~

夜夢
ファンタジー
剣と魔法の世界に生まれた主人公は、子供の頃から何の取り柄もない平凡な村人だった。 盗賊が村を襲うまでは…。 成長したある日、狩りに出掛けた森で不思議な子供と出会った。助けてあげると、不思議な子供からこれまた不思議な力を貰った。 不思議な力を貰った主人公は、両親と親友を救う旅に出ることにした。 王道ファンタジー物語。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...