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第7章
第一の試練2*
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光の魔法を使い、杖を下の方へ掲げる。薄暗く、冷凍室のようにひんやりと冷気が漂う洞窟の中を慎重に歩く。
洞窟内は最初、ランプの灯っていない狭くて暗い炭鉱のようだった。虫型の魔獣やモグラによく似た下級魔獣と吸血コウモリがわらわら出てきて、襲いかかってきた。そのたびに簡単な魔法を使ってやり過ごし、アリの巣のようになっている道を進んだ。
歩き続けているうちに洞窟の壁や足元に、水晶や、貴金属・宝石の原石が見られる。
開けた場所に出て、僕はその光景に圧巻される。
ほのかに青白く水晶が光り、その光に照らされて原石がきらめいて、まるで夜空の星のようだ。夏場でもないのに蛍が飛び交い、足元にはヒカリゴケが生え、白い花が咲き乱れている。その近くを水底の石が見えるほどに透き通った川が流れている。
「すごい……こんな場所があるなんて……」
幻想的な風景に見入っていると突然、首元にヒタリと冷たいものが触れた。水じゃない、ナイフだ!
全身黒服を纏った刺客が、どこからともなく現て、僕を取り囲んだ。
その数は十人以上。
僕は兄様やピーターのように武術に長けていないし、ビルのように攻撃魔法もろくに使えない。手も足も出ない状態になり、このまま首をかき切られ、死ぬのだろうかと全身に冷や汗をかく。唯一の武器である杖も取られ、後ろ手に縛られる。
「ルキウス・クライン。我々の言うことを聞いてもらおうか」
「……エドワードさまの差し金ですね」
ぷつりとナイフが首を刺す痛みとともに生暖かい血が首筋へと流れてくる。
男たちは下卑た笑みを浮かべてベラベラと喋った。
「あの方は、おまえが悶え苦しみながら死ぬことを望んでおられるのだ」
男たちの言葉に背筋が凍った。
無理やり地面に押し倒され、頭と足を押さえつけられる。もがいて抵抗するものの屈強な男たちに体を押さえ込まれて、なすすべもない。
地面に這いつくばった状態で長と思しき人物を睨みつける。
長は温度の感じられない目で僕を見下ろした。
「おまえの手足の腱を切り、動けないようにする。そのまま、この洞窟に住む魔物や野獣、虫たちの餌となれ」
「なっ!?」
「安心しろ。頭だけは食われないように防御魔法を張ってやる。エドワードさまに、おまえを殺した証を見せなくてはいけないからな」
命の危険を感じ、身震いが止まらなくなる。
「まずは足の腱から切らせてもらおう」
「いやです、やめてください!」
ズボンをたくし上げられ、足首にナイフの冷たい刃が触れる。心臓がドクンドクンと大きく音を立てる。
突如「ギャアッ!」と男たちの悲鳴があがり、男たちが文字通り吹き飛んだ。
「なんだ!?」
長は、男たちの吹き飛んでいった方向を注視し、戦闘態勢をとる。
「ったく、こんなところで人殺しか? 場内荒らしは困るぜ、旦那ぁ」
大剣を肩に担いだ男性がニヒルな笑みを浮かべる。
長は両手にナイフを手にした。
部下たちも各々の武器や杖、魔術書を手に取って男性を警戒する。
「貴様、何者だ。名を名乗れ!」
「名乗るほどの者じゃねえよ。しがないギルドの一員、さ!」
そうして男性は長に向かって大剣を振るった。
すんでのところで長は大剣を避け、そして部下たちに命令を下す。
「もういい、そいつの首をさっさと切れ!」
僕を押さえつけている男のひとりがダガーを振り下ろした。僕は目を見開いて刃が自分に向かってくるのを凝視する。
ガキンッ! と金属音がしてダガーの刃が折れ、横に飛んだ。
ダガーの刃があったところにブーツを履いた足がある。
次の瞬間、男の左頬に左の拳がめり込んだ。暴れ馬も驚くほどのスピードで洞窟の壁際へ男は飛んでいった。
栗毛のポニーテールヘアの女性が、次々に男たちを殴り、蹴っていく。大剣を手にした男性とともに黒服の男たちを倒していった。
「クソ、虫けらの分際で!」
長い金の杖を持った男が攻撃魔法を仕掛け、火の玉が飛んでくる。
瞬間、体がフワリと浮いた。
攻撃魔法を仕掛けてきた男の両手に小型ナイフが刺さっている。持っていた金の杖は炎に包まれ、灰と化す。
長い白髪に長い顎髭をたくわえた老人が木でできた杖を頭上高く掲げ、僕の周りに防御魔法を作った。老人とは思えない速さで走り、男たちを杖で薙ぎ倒していく。
「エリザ、こやつらはただの人間じゃ! 頭に来たからといって殺すでないぞ!」
「わかっていますわ、おじい様! 虫の息にはしますけど、ね!」
あっけにとられていると赤い衣を纏い、ハシバミ色の目をしたオールバックの男性に「大丈夫かね?」と訊かれる。
僕は無言のまま首を縦に振った。
縄を取ってもらった腕が、じんじん痺れている。
「飲みたまえ」
彼に手渡された回復薬の小瓶を口にする。瞬間、腕の痺れが治まり、じくじくと痛んでいた首筋の傷が消える。
「あなたたちは……?」
「詳しい話は後だ。こいつらを一掃してからにしよう」
いつの間に取り返したのだろう? 赤い衣を纏った男性が僕の杖を渡してくれた。
そうして彼も両手剣を手に持ち、戦いへ参加する。
洞窟内は最初、ランプの灯っていない狭くて暗い炭鉱のようだった。虫型の魔獣やモグラによく似た下級魔獣と吸血コウモリがわらわら出てきて、襲いかかってきた。そのたびに簡単な魔法を使ってやり過ごし、アリの巣のようになっている道を進んだ。
歩き続けているうちに洞窟の壁や足元に、水晶や、貴金属・宝石の原石が見られる。
開けた場所に出て、僕はその光景に圧巻される。
ほのかに青白く水晶が光り、その光に照らされて原石がきらめいて、まるで夜空の星のようだ。夏場でもないのに蛍が飛び交い、足元にはヒカリゴケが生え、白い花が咲き乱れている。その近くを水底の石が見えるほどに透き通った川が流れている。
「すごい……こんな場所があるなんて……」
幻想的な風景に見入っていると突然、首元にヒタリと冷たいものが触れた。水じゃない、ナイフだ!
全身黒服を纏った刺客が、どこからともなく現て、僕を取り囲んだ。
その数は十人以上。
僕は兄様やピーターのように武術に長けていないし、ビルのように攻撃魔法もろくに使えない。手も足も出ない状態になり、このまま首をかき切られ、死ぬのだろうかと全身に冷や汗をかく。唯一の武器である杖も取られ、後ろ手に縛られる。
「ルキウス・クライン。我々の言うことを聞いてもらおうか」
「……エドワードさまの差し金ですね」
ぷつりとナイフが首を刺す痛みとともに生暖かい血が首筋へと流れてくる。
男たちは下卑た笑みを浮かべてベラベラと喋った。
「あの方は、おまえが悶え苦しみながら死ぬことを望んでおられるのだ」
男たちの言葉に背筋が凍った。
無理やり地面に押し倒され、頭と足を押さえつけられる。もがいて抵抗するものの屈強な男たちに体を押さえ込まれて、なすすべもない。
地面に這いつくばった状態で長と思しき人物を睨みつける。
長は温度の感じられない目で僕を見下ろした。
「おまえの手足の腱を切り、動けないようにする。そのまま、この洞窟に住む魔物や野獣、虫たちの餌となれ」
「なっ!?」
「安心しろ。頭だけは食われないように防御魔法を張ってやる。エドワードさまに、おまえを殺した証を見せなくてはいけないからな」
命の危険を感じ、身震いが止まらなくなる。
「まずは足の腱から切らせてもらおう」
「いやです、やめてください!」
ズボンをたくし上げられ、足首にナイフの冷たい刃が触れる。心臓がドクンドクンと大きく音を立てる。
突如「ギャアッ!」と男たちの悲鳴があがり、男たちが文字通り吹き飛んだ。
「なんだ!?」
長は、男たちの吹き飛んでいった方向を注視し、戦闘態勢をとる。
「ったく、こんなところで人殺しか? 場内荒らしは困るぜ、旦那ぁ」
大剣を肩に担いだ男性がニヒルな笑みを浮かべる。
長は両手にナイフを手にした。
部下たちも各々の武器や杖、魔術書を手に取って男性を警戒する。
「貴様、何者だ。名を名乗れ!」
「名乗るほどの者じゃねえよ。しがないギルドの一員、さ!」
そうして男性は長に向かって大剣を振るった。
すんでのところで長は大剣を避け、そして部下たちに命令を下す。
「もういい、そいつの首をさっさと切れ!」
僕を押さえつけている男のひとりがダガーを振り下ろした。僕は目を見開いて刃が自分に向かってくるのを凝視する。
ガキンッ! と金属音がしてダガーの刃が折れ、横に飛んだ。
ダガーの刃があったところにブーツを履いた足がある。
次の瞬間、男の左頬に左の拳がめり込んだ。暴れ馬も驚くほどのスピードで洞窟の壁際へ男は飛んでいった。
栗毛のポニーテールヘアの女性が、次々に男たちを殴り、蹴っていく。大剣を手にした男性とともに黒服の男たちを倒していった。
「クソ、虫けらの分際で!」
長い金の杖を持った男が攻撃魔法を仕掛け、火の玉が飛んでくる。
瞬間、体がフワリと浮いた。
攻撃魔法を仕掛けてきた男の両手に小型ナイフが刺さっている。持っていた金の杖は炎に包まれ、灰と化す。
長い白髪に長い顎髭をたくわえた老人が木でできた杖を頭上高く掲げ、僕の周りに防御魔法を作った。老人とは思えない速さで走り、男たちを杖で薙ぎ倒していく。
「エリザ、こやつらはただの人間じゃ! 頭に来たからといって殺すでないぞ!」
「わかっていますわ、おじい様! 虫の息にはしますけど、ね!」
あっけにとられていると赤い衣を纏い、ハシバミ色の目をしたオールバックの男性に「大丈夫かね?」と訊かれる。
僕は無言のまま首を縦に振った。
縄を取ってもらった腕が、じんじん痺れている。
「飲みたまえ」
彼に手渡された回復薬の小瓶を口にする。瞬間、腕の痺れが治まり、じくじくと痛んでいた首筋の傷が消える。
「あなたたちは……?」
「詳しい話は後だ。こいつらを一掃してからにしよう」
いつの間に取り返したのだろう? 赤い衣を纏った男性が僕の杖を渡してくれた。
そうして彼も両手剣を手に持ち、戦いへ参加する。
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