リスタート―三度目の正直―

鶴機 亀輔

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第7章

第一の試練1

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「待ってください! 僕の話を……」

 話の途中で転送魔法をかけられ、外へ追い出されてしまう。再度扉を押し開けようとするものの鍵を掛けられて中へ入れない。

 フロレンスのもとへ戻れば、気落ちしている僕を慰めるように鳴いた。

「大丈夫、ギルドはここ以外にもある。ギルドに加入さえすれば、なんとかなるよ」

 その日、僕はフロレンスとともに家へは帰らず、宿へ泊まった。

 簡素だが、手入れの行き届いた部屋のベッドに腰掛ける。手持ちの地図をベッドサイドのテーブルの上へ広げる。黒インクをつけた羽根ペンを手にし、今日行った場所にバツ印をつけた。

 残る国内のギルドは十二ヵ所。このうちのどこかでギルドへ加入して、英雄の手がかりを探す。

 もしかしたら英雄もロビンおじ様のようにギルドとして働いているかもしれない。

 そんなにうまい話が転がっているとは思えないけど、城下町の人たちの反応や勇者が農村出の少年でギルドに加入していたことを考えれば、出会える可能性はある。何より今回は手応えのようなものを感じる。

 こうして僕のギルド参りが始まった。



   *



 結局、十一ヵ所のギルドの戸を叩いたけど、門前払いを食らった。

 一ヵ月間、家に戻らず国内を旅した。王宮で文官をしていたときの貯蓄があるから、宿や飲食には困らなかった。

 ただこんなにも長期間、家を留守にしたことがなかったから父様と母様が僕を心配しているのだ。家へ早く帰ってくるようにと書かれた手紙が何通も送られてきた。返事を書いてはいるもののギルドに加入したい意思は伝えてない。

 一連のショックのあまり放浪の旅をしていると勘違いをした父様から「一週間以内に家へ帰宅しないなら強制送還の魔法を使う」という手紙まで来ている。

 おかしい。こんなはずじゃなかったのに……と焦りを感じる。それでも、ほかにできることが思いつかないまま僕はフロレンスに乗って、国内最後のギルドへ向かった。



   *



「ダメです」

 鼻の下にちょびヒゲを生やしたおじさんが笑う。

「お貴族様のご道楽に付き合っている暇なんかありませんよ」

「道楽じゃありません! 本当にギルドになりたいんです!」

 僕はおじさんに背中を押され、出入り口へと連れて行かれる。

「じゃあ、ギルドに加入したい理由を言ってごらんなさい!」

 おじさんは眉を釣り上げて大声で怒鳴った。

 フェアリーランドの存亡のためとは言えず「人を探してるんです。名前も、顔もわかりませんが、おそらくギルドに加入している方です。何卒お力添えいただきたいでしょうか」と力説する。

 おじさんは腹を抱え、床に転がって笑った。

「顔も、名前もわからない方に会いたい? これは、たまげた! そんなバレバレの嘘をつくなんて驚きです」

「嘘ではありません。どうか信じてください!」

 むくりとおじさんは起き上がるなり、悪魔のような笑みを浮かべた。

「そんなに言うんでしたら、この先のイワーク洞窟にいるビッグゴブリンを倒してきてください」

 ゴブリンは知っているが“ビッグゴブリン”は初めて聞いた。僕はおじさんの言葉をオウム返しする。

「やつはここら一帯で悪さをするゴブリンの親玉です。あいつは旅人を襲って金目のものを盗むんでさあ。馬や、牛なんかも食料としてっちまいやがる」

「わかりました、倒します」

 おじさんは目玉を飛び出し、全身からダラダラと汗をかいた。

「お貴族様が単身で!?」

「そうです」

 外で草をんでいるフロレンスのことを彼に頼み、外へ出る。

「そんな無茶な! やつは熟練のギルドでも倒せない大物ですぞ!?」

 おじさんから、どれだけビックゴブリンが恐ろしい魔物か説明を受けても、僕の意思は変わらない。

「ビックゴブリンを殺さなくても、人を襲わない状態にすれば倒したことになりますか?」

 しどろもどろになったおじさんが「な、なります……」と歯切れ悪く答えた。

「それなら、よかったです。僕にも、勝算があります。すぐに倒してきますので、約束は守ってくださいね」

「お待ちを、お貴族様!」

 言質は取った。一刻も早くビックゴブリンを倒そう。

 指笛を吹けば、鷲が空の彼方からやってくる。

 僕は両手を上げて山小屋ほどのサイズがある“大鷲コンドル”の足に掴まった。ふわりと身体が宙に浮く。

 そして大鷲は僕の身体を空中へ放り投げた。

 おじさんが「ひええっ!」と大声をあげ、腰を抜かした。

 フロレンスは、おじさんに文句をつけるようにブルルと鳴く。

 そうして僕は大鷲の背に乗って、イワーク洞窟へ向かうように頼んだ。



   *



 イワーク洞窟の前に大鷲が下りる。

 彼に礼を言って大鷲の好物である木の実を渡し、柔らかな羽毛を撫でる。

 クルルと大鷲は鳴き、翼を広げて空へ飛び立った。「何かあったら呼んでくれ」と心強い言葉に勇気づけられる。

 真っ黒な口を開けている洞窟の前で念のために防御魔法を張り、カバンから手持ちのアイテムを出す。ギルドを回っている最中に町の出店で入手したものを数えた。

 怪我をしたときの回復薬、魔力を補充するエーテル、魔物・悪魔除けつきの簡易宿泊キットと非常食のお弁当、死者蘇生要のお守り。

 すべて揃ってる。

 僕はフォルダーから杖を取り出し、暗い洞窟の中へ入っていった。
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