遅発性Ω

枝浬菰

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第二章

悩み事

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「東雲の話を聞いていかがでしたか?」
「やはり私のような人間でも変われる日がくるのですね」

少し明るい表情になった。

「少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい」

「柊さんはあの有名なバーテンダーさんですよね?」
「え、有名かは分かりませんが、大会には出ていました」

「それじゃ、さぞかし私のような人生経験はされていないと」
「あ……。α時代は順調でしたがΩになってからは辛いときが多かったです」

「Ωは体自体が変化してしまい、体力だったり、眩暈や頭痛など驚くほどに大変な日々を送っているのだと実感しました」
「私もΩの母さんがいるのでそれは分かるよ、いつも大変そうなんだ、だから私がもっと仕事を上手にこなせて人間関係もよくしていかないとと思っていてね」

「そうでしたか、差し支えなければ教えていただきたいのですがどのような業界で働いているのですか?」

「私は銀行役員だよ」
「役員、それだけ努力されていて仕事が上手にこなせないのですか?」

「役員になれたのは妻のおかげでね、すごく情けないだろ」
「いえ、とても素敵なご縁ですね」
「うっ君は褒め上手なのか?」

「いえ、ただ私にはできないことなので羨ましいなと思っただけです」
「そうか、君は本当にいい子のようだね」

「そ……そんなことは」
「さきほどの東雲さんの言葉もなんとなく理解できるよ、君は一緒にいて癒される」
「あ、ありがとうございます」

「ほらね、素直ないい子は、私みたいなおじさんにはころりだよ」


「羽衣様の笑顔が見れて私もうれしいです」
「君はご結婚しているんだよね、お相手の方はαかい?」

「はい、とても優しくてかっこよくて俺のとても大切な人です」
「君たちはテンション上がると一人称が変わってくるのは面白いね」


「あっ……大変失礼いたしました」
「いや、なんだか私も頑張らないとなという気分になったよ、ありがと」
席を立ちあがり廊下を歩こうとしたらぐらっと体が傾いた。


「おっと」と羽衣様の腕の中に納まる。
「大丈夫かい?」

「はい、すみません」
「君」
と声を掛けられ、顎に手がかかる、ここは防犯カメラの死角だ。
まずいと目をつぶる。

「少し熱があるんじゃないか?」
へ? ドキドキと心臓の音がうるさい。


「あ、熱……い、いえ、問題ないです」
「そうか、Ωは体調崩しやすいからな、君も気を付けなさい」
「はい、それでは」

「あ、そうだ、今日水曜日だから、バーに行くね」
「はい!! ぜひお越しください」
ぺこりと挨拶してバックヤードに戻る。
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