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第2章・婚約破棄は新たなる珍事を招く。
メシテロ級の香り?
しおりを挟むふう。お腹いっぱい。体力満タン。魔力満タン。気合い満タンって感じ。他のメンバーもしっかり食べた様だから、そろそろ御裾分けタイムにしよう。あ!おばちゃん達来たー!
私はこっちこっちと、大きく手を振りおばちゃん達を招く。おばちゃん達内勤の皆様は、先程片付けを終了し、これから賄い作りを食べる。
何時も忙しくて直ぐにでも休みたい。また直ぐに夕食準備だからね。だからさっき声をかけたのよ!パンと食器だけ持って来てってね。
・・・・・。
・・・・・。
「どうりで多すぎると…。まあ何時も世話になってるしな。、俺はバッファの切り盛り手伝ってくるわ。」
「あ!俺も行くよ。」
「有難う。此方のテーブルで食べられる様にして置くよ!」
私はテーブルをセットし、スープにお水を用意する。ソースも中央に置きOK。では切り盛りのお手伝いに…。
「おい。」
「リーダー何よ?」
「お前匂いの遮断はしたか?」
「当たり前じゃ無い。血抜きの時だって未処理集めて結界張ったし、今も森前まで結界張ってるわよ。森から魔物が引き寄せられたら不味いじゃない。」
魔物は動物と同じく匂いに敏感だ。煮炊きの匂いは勿論、血の匂いにも敏感に反応する。その為通常は、血溜りの傍からは直ぐに離れる。調理も火を使い牽制したり、匂いの余りしない物を選ぶ。魔法が使えるなら、結界や消臭で遮断するのが一般的。私は結界で外部に匂いを出さぬ様にしている。
しかし何を今更言ってるのかしら?
あっ…。
もしかしなくても、事務方さんや訓練生。内勤の皆様にまで匂いが…。でも皆さんはもうお昼食べたんじゃない。おばちゃん達にも悪いわよ。
「エリーちゃん。私達は良いから若い者に食べさせておやり。特に訓練生は、昼だけじゃ足りないんだよ。丁度騎士団から扱きが来てるんだ。来週は隣国の魔術師団も交代で来るんだろ?」
おばちゃん達…。確かに我国の騎士団の扱きは厳しいらしい。メンバーも訓練の時は、毎回ヘロヘロになってる。私は隣国の魔術師団の訪問時に混じらせて貰ってる。我国の魔術師団は、本当に申し訳無い程度なのよ。だから隣国に教わってる訳ね。
「おばちゃん達は心配なく食べて。バッファのお肉ならまだまだ有るのよ。おーい!食べたいなら焼くの手伝ってー!働かざる者食うべからずよ!」
どどどどどーっと、若者が走り出してくる。更にはあちこちからワラワラとわきだしてきた。
おわーっと。こりゃ凄いな。30人位は居るかな?まだまだ残りは有るけど、外してもう3匹焼いちゃおう。
メンバーの2人に指導させてバッファを丸焼きにする。私は大鍋でスープを追加した。クリームスープを足して、更にトマトスープの追加だ。
おばちゃん達が、お皿とカップとホークを用意してくれた。若者達は行儀良く並び、己達で焼き上がったお肉を取り分けて行く。旨い!美味しい!お代わりを連呼する。何だか楽しいね。
「訓練生の間は兎に角腹が空くからな。己が死なぬ為には強くなるしかない。その為の訓練だからだ。未来有る若者達に鋭気の差し入れ感謝する。」
突如背後に渋いお声が!振り向くとそこには騎士団長様が居た!
ど、ど、ど、どーして?あ!訓練に来てるからね。ドキドキ。逃走してから、初の知り合い接近遭遇だわ。目眩まし使用してるからバレないと思うけど…。
「妹さんの節は、愚息がご迷惑をかけた。まさかあそこまでアホだとは…。魅了を使用されたとしても、到底許せはしません。この魔の森の訓練生から鍛え直します。」
バレてましたね。しかし良く解ったね?ん?あそこで肉をかっこんでるのがそうじゃ無い。お隣では未来の魔術師団長(仮)まで、頬っぺたパンパンにしてるのは見間違いなの?
「魔術師団長候補も息子と同様に自称ですから。あれの父はまだ魔術師と言えるかもしれません。しかし隣国に比べたらゴミクズです。息子は人よりすこし優秀なだけ。父はそれよりはみたいな物。なので今回子息は騎士団にて預かりとなりました。魔術師団で芽が出なくとも、此方でなら少しの魔法が役にたちますからね。」
そうだよね。リーダーが良い例だね。出世の道も残されてる。
「因みに私にも魔力が多少有ります。その為、貴女の偽装の魔力を感じたのです。皇太子様には魔力は有りません。今日もいらしてますが、多分大丈夫でしょう。しかし魔術師団長にはお気を付けて下さい。あれは根性が捻曲がってます。私は彼とは同期でした。しかし私が魔術師団入りを許否した為、まるで親の仇の様にして嫌われてます。」
確かに我が国では魔力持ちが少ない。魔術師団も研究職が多いと聞く。少しでも魔力が有ればちやほやされるから、実力が伴ってないそうだ。
「なら次回の隣国との合同練習は気を付けなきゃ。見付かったら即監禁決定かな?流石に嫌だな。」
「何を仰います。貴女なら直ぐに逃げられるでしょう?皇太子様は何とか貴女を拘束する為の案を日々思案してます。瞬間移動が1番厄介だと悩んでますよ。拘束さえ出来れば、器は完成したそうです。」
何それ怖い…。
器はって!監禁まっしぐらよ!
・・・・・。
「可愛いでは無いですか?全ては愛故なのです。少し変な方向へ努力しすぎですが、温かい目で見てみてあげて下さい。私ってば愛され過ぎちゃってどうしよう。もう仕方無いなぁと、思える様になりますよ?」
・・・・・。
お・も・え・る・か!
この人も変…。もしかしてコレ、私を懐柔しようとしてるの?何故か皆何処か変!絶対に変!嫌なものは嫌よ!
「おい騎士団長。貴様は何女と油を売ってるのだ。訓練生達が討伐隊から肉を分けて貰ったらしい。お礼を言っといてくれ。後私達にも届いてる。お前も食べに来い。巷でも大人気の、大商会の調味ソルトとスープの素らしい。旨ければ軍でも使えるだろう。」
・・・・・。
ヤバい。話し込んでて、気配に気付くのが遅れてしまった。どうしよう。認識阻害をかけてるから、姿も声も全く違う筈だけどやはりビビるな。
「これは皇太子様。丁度訓練生達が騒いでたので様子を見に来たのです。此方が討伐隊の方で、今回のお肉の提供チームのお1人です。お礼と討伐のお話をしていたのです。」
良し!今の内に認識阻害を強くしよう。
「何でも普段は森の中では多数で群れぬバッファが、かなりの数で居たそうです。しかもご馳走はゴールデンバッファですよ。勇姿を称えてたのです。お嬢さん。本当に有難うございます。ではご馳走になりますね。」
騎士団長が私の肩を叩き、皇太子様の方へ振り返り歩き出す。私も一緒に振り返り…。目がバッチリあったよ…。そのまま頭を下げる。
「訓練生が世話になった。私からも礼を言う。だがお前今、何か魔法を使用しただろう?私の魔道具が微かに反応した。わたしに悪意は無い様だが?」
・・・・・。
認識阻害の魔法で反応したの?確かに相手からしたら、真実を知るには不都合な魔法だ。もうやだ!私ってば、変に高性能に作った訳ね。
「ご気分を害されたなら申し訳ございません。私は討伐から戻ったばかり。少し疲れた為、回復の魔法を使用したのです。もしかしたら、それに反応したのでしょうか?なんならお2人にもかけましょう。」
「訓練で疲労した体を癒せ。」
騎士団長と皇太子様の体が淡く発光する。やがて収まった。
「どうでしょう?」
「あ。あぁ。そうか。悪かった。ゆっくりと休んでくれ。」
「皇太子様にその様なお言葉を戴き、こちらこそ感謝致します。では失礼致します。」
・・・・・。
クルリと振り返りって…。皆まだお肉食べてるし…。取り敢えず戻ろう。
「・・・。あ。ちょっ…。おい!少し待て!」
突如後ろからガバリと、抱き付かれた。頭1つ程背の高さが違うから、頭頂部を顎で抑えられると動けないんですけど!?
!?!?!?
皇太子様の吐息が首筋にかかる。荒い息遣いでクンカクンカと匂いを嗅いでる。汗をペロリとなめられたわ…。やがてついでの様に掌が私の胸を掴み揉みしだき、腰を撫で回し始めた。。大きさが違う?柔らか違う?うんねんと唸りながら…。
匂いは同じなのにって何?
「何するのよ!この変態皇太子!大衆の面前で恥を知れ!2度と私の前に顔を出すな!近付いたら急所めがけて、雷ぶっ放すからね!死ねば良いのに!ゲス!クズ!アホ!」
ヤバい…。平民になってから口が悪くなってつい…。不敬罪になる?まあそれなら転移で逃げるけどね。
しかしコイツ何時まで揉んで撫でてるつもりだ。いい加減にせい!
体から思いきり風を噴射し吹き飛ばす。背後に吹き飛ばされ尻餅をつく皇太子様。
「ま、待ってくれ。悪かった。旨そうな同じ香りに釣られ、ついつい確かめたくなってしまったのだ。何度でもお代わりしたくなる香り…。まさか同じ香りを持つ者が存在するとは…。本当に申し訳無い。失礼をわびたい。せめて名を教えて欲しい。私はエドワードだ。」
旨そうなお代わりしたくなる香り?私はごはんなのでしょうか?頭可笑しいんじゃないの?私には全く意味が理解できません。
名乗りたくないんですけど?でも皇太子様に先に名乗られちゃったら、平民が名乗らない訳にはいかないじゃないの!
「私はエリーです。わびは結構です。2度と現れないで下さい。確か皇太子様には婚約破棄までして得た、真に愛する者がいた筈ですよね?お相手が哀しまれますよ。解りましたか?」
!!!
・・・・・。
それは…。
・・・・・。
ふうスッキリ。呆然とする皇太子様を残し、スキップで皆の中に戻る。あれ?お肉をまだまだ有るんだね。ほらほら皆食べちゃいなー。もう無理なら魔法で干し肉にしちゃおう。
絶対に美味しいぞ。
お腹いっぱい。眠い。さあ昼寝をしよう。起きたら魔道具の続きをして、お風呂に入ってから夕食食べよう。家事付き3食昼寝付き。
エリザベート改めエリー。
只今素敵な平民ライフを楽しんでまーす。ね?心配ないでしょ?
私ってば普通の女の子してるよね?
公爵令嬢止めて、普通の女の子になりました。普通の優しい素敵な旦那さま。大募集中でーす。
翌朝には既に皇太子に惚れられたと噂になっており、普通の優しい旦那さま(仮)は誰も近寄ってはくれなくなった。
皇太子のバーカーターレー!!
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