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怪物鉱山

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 「その岩山と言うのは?」
 イゼさんが尋ねる。
 
 「元は鉱山だ。
 銅やダルテイト鉱石が採掘されていたんだが、採掘量が減って、30年ほど前に、閉山になったんだよ」
 団長の説明に、町長さんが補足する。

 「このロキアは、鉱山開発と共に生まれ、栄えた町ですから、閉山と共に潰れてもおかしくはなかったのです。
 しかし、閉山になる10年ほども前、たまたま訪れた転生者の方が、鉱石が枯渇したときに備えるべきだと、提言してくれたのです」
 
 「町の主産業が変わったのですか?」
 「はい。採掘ではなく加工へシフトしました。
 ロキアで作られる、ダルテイトの武具や加工品は評判が良く、今では、王都や他国からも注文がきます。
 ほかにも、アルバニという果実の栽培、品種改良を行い、これの生産も順調です」
 イゼさんの質問に答える町長さんの表情は、そのときの転生者への感謝に満ちているように見えた。

 あたしも感謝である。
 もし、その転生者が、この町で悪事を仕出かしていたら、あたしたちは、こうも歓迎されなかったであろう。

 「それより怪物だ。
 怪物は、迷路のように広がった、坑道を棲み家にしている」
 団長の言葉に、現実に引き戻された。
 閉ざされた坑道は、怪物の徘徊する地下の迷宮というイメージなのだろうか?
 絶対に入りたくない穴である。
 
 「襲われて、逃げ延びた人もいるんですよね。
 その人たちは、怪物の姿を見ていないのですか?」
 「それがなあ……」と、団長は苦い顔になった。

 「巨大なサソリに追われたというヤツもいれば、坑口から出てきたリビングデッドの集団に、仲間がさらわれたって騒ぐヤツもいた。
 巨大なクモだ。いや、コルボドの集団だ。
 いやいや、巣食っているのは、ハーピィだというヤツまで出る始末だ。
 知っているかい? ハーピィってのは、女の顔をしたバカでかい鳥だよ」

 もちろん、よく知っている。
 あたしは色々と思い出し、胃の辺りが痛くなった。

 「そういう種類の違う怪物が、集まって棲みつくということはありえるのでしょうか?」
 「……いや、ちょっと考えられんな。
 お互いに相手をエサとみて、殺し合うだろう」

 「あの」と、あたしは、団長に声を掛けた。
 「今まで、駆除をすることは無かったんですか?」
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