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第103話 盗賊たちの末路とリリ 前半

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 成人式の次の日。エリスに優しく起こされて目を覚ました。昨夜、色々と汚したがキレイになっており、ベッドのシーツもキレイなものとなっていた。僕と一緒にいたのはミヤだけだった。ミヤは、まだすやすやと眠っていて起きる気配はないようだ。僕は、ミヤが起きないように静かにベッドを出たときに、裸であることに気付いたがベッドに戻ることも出来ずに立ち尽くしていると、エリスがすかさず服を準備してくれた。エリスは、僕の着替えを手伝おうとしたが、流石に断った。

 マグ姉とリードのことをエリスに聞くと、マグ姉は朝早くから薬草畑の管理をしに朝早くから出ていったらしく、リードは早朝から出かけたらしい。リードは目的地も告げずに行ったから、どこに行ったかわからないらしい。結構、リードは散歩とか好きでよく出掛けているみたいだから、今日もそうだろう。

 エリスと少し遅い朝食を食べ、コーヒーを二人で飲んでゆっくりとした朝を過ごしていた。エリスとは、昨日の成人式で村人の前で婚約の発表をしたことで名実ともに婚約者となったわけだ。僕はミルクと砂糖を多めに入れたコーヒーを美味しそうに飲んでいるエリスを見て、僕は心から幸せを感じていた。エリスも僕が見つめているのに気付いて、恥ずかしそうな顔になり、二人の世界に没頭しそうになった時、玄関の方からノック音が聞こえ、現実に引き戻された。エリスは、ちょっと機嫌が悪そうに玄関の方に向かっていった。

 エリスは、すぐに戻ってきて僕の方を見ると、その後ろからライルが顔を出した。

 「村長さん。昨夜の盗賊たちが目を覚ましたぞ。一応、聴取をしようとしたんだけど、全く話にならないんだ。すまないが、一緒に来てくれないか?」

 僕は、昨夜のことを思い出し、盗賊への怒りが湧いてきた。僕は、ライルと共に屋敷を出て、自警団本部の方に向かっていった。途中で、散歩中のスタシャと出くわし、話をすると面白そうだと言って付いてくることになった。僕は、拒否したんだけどスタシャって僕の言う事聞かないよな。一応、ライルに事業聴取の状況を聞くことにした。

 「早朝に盗賊たちが目を覚ましたんだ。それから奴ら縛られているのにも拘わらずかなり暴れてな。一度、気絶させたんだ。それから、一人ずつ聴取をしていったんだが、一人として口を割らなかったんだ。それどころか、オレ達を亜人だと言って見下してやがった。仲間が手を出しちまったんだが、そいつが変なことを口走ったんだ。オレはフィルカウス教の宣教師で、手を出すと教団が黙っていないぞって言い出したんだ。そんな教団聞いたこともないし、適当に言っているだけと思うんだが、亜人には何も話さないっていうんで、村長さんに協力を頼んだってわけで」

 いわゆる人間至上主義ってやつか。厄介なやつが来たものだ。ルドの部下にも主義者はいたが、そこまで酷いやつもいなかったと思うが。すると、黙って後ろから付いてきたスタシャが話しかけてきた。

 「おい、赤髪の、お前。今、フィルカウス教と言ったか?」
 ライルはスタシャがあまり好きではないみたいで、嫌そうな顔をしながら、頷いた。

 「ふむ……」

 えっ⁉ 続きは? 何かあるんじゃないの? 僕は、スタシャが言葉を発するのを待っていたが、それは訪れなかった。その前に自警団本部に着いてしまったからだ。スタシャは、顎に手を当てて考え事をしている様子だったが、スタシャが何を考えているなんて、皆目見当もつかない。僕達は、自警団本部に入り事情聴取をする部屋に入ると、髭面の30歳くらいの男が拘束されながらもふてぶてしく地面に転がっていた。顔にはいくつかアザがあることから、団員にこっ酷くやられたようだな。

 髭面の男は、なんとか体を起し、僕の方を睨んできた。

 「やっと、話が出来る奴が来たな。この亜人の態度を見る限り、結構なお偉いさんなんだろ? 悪いことは言わないから、オレ達を解放しな。それがお前さんらのためになるんだぜ。それとな、この村には亜人がたくさんいるんだろ? フィルカウス教団に奴隷として渡すんなら、お前さんを教団の幹部にすることだって出来るんだぜ。悪い話じゃないだろ?」

 何を言っているのかさっぱり分からない。奴隷? そもそもフィルカウス教団ってなんだよ。

 「その顔。まさか、フィルカウス教団を知らないのか? だから、俺達にこんな仕打ちをしても平気な顔をしているんだな。納得したぜ。いいか? フィルカウス教団は、フィルカウス教祖が興したありがたい教団だ。その昔……」

 話が長かった。信じられないことだが、この汚い男が宣教師だと言う。それだけで碌でもなさそうだが、話を聞いていると馬鹿には出来なかった。北方の商業都市を拠点に活動しており、王都の各地から亜人を奴隷として集めてきて、強制労働をさせているらしい。その規模は、徐々に大きくなっており、周囲の村々を傘下に収めつつ南下をしているらしい。この村とは、まだまだ距離は離れているが、いずれはこの村に来てしまうかもしれない。世界の流れの一端を聞くことが出来、村のことだけを考えている場合ではない段階かもしれない。もちろん、この男の話を全部信じるわけにはいかないが。

 「聞きたいのは、この村をどうやって知った? そのフィルカウス教団とはこの地は無縁のはず」

 「さっきも言っただろ? オレ達は宣教師だ。この辺りも教団の傘下に収めるべく旅をしていたんだ。まぁ、街に立ち寄りながら食料を提供してもらっていたんだが、この辺りに街がなくて食料が底をついちまったんだ。仕方ねぇから北に戻ろうとしたら、変な男がいてな。やけに食料を持ってたんで話を聞いたら、この村のことを知ったってわけよ。そいつが何者なんかはオレは知らねぇぞ。食料もねぇから、その辺でくたばっただろうがな」

 こいつらかなり酷い奴らだな。こいつらを村の外に逃すわけにはいかない。なんとか教団に目をつけられることだけは避けなければならない。現状、勝てるだけの戦力を持っているとは言い難い。それにしても、話に出てきた食料を持っていた男って、おそらくルドの参謀を務めていたやつに違いないだろう。この村の存在を知っていて、食料を大量に持ち逃げをした男はそいつしかいない。そうすると、参謀もどこかで命を落としたということか。

 「話はわかった」

 僕がそう言うと、髭面の男は自分の意見が通ったと思い、安堵した表情をした。

 「じゃあ、オレの拘束を外してくれないか。あとは、仲間たちの解放と……あと、食料も頼むぜ。話が早くて助かる。オレをぶん殴った奴を後で殴り返してやる」

 「何を勘違いしているだ? 僕はなんとか教団なんかの傘下に入るつもりなど毛頭ないぞ。まぁ、情報をくれたことには感謝しているぞ。まぁ、村の中でのんびりと暮らしてくれ」

 髭面の男は、何がなんだか分からないような表情をしていたが、状況が分かると喚き散らし始めた。聞くに耐えないので、一旦部屋を出て、ライルには盗賊たちを絶対に村から出さないように頼んだ。処分については、追々考えよう。村の外に追放するわけにもいかず、村の移住を認めるわけにはいかない。あいつらは危険過ぎる。
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