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第104話 盗賊たちの末路とリリ 後半
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僕は髭面の男と話をしている時、スタシャが時々頷いているのを見ていた。僕は、スタシャに知っていることを白状するように迫ると、意外とあっけなく話し始めた。
「どうでも良い話だぞ。昔な、錬金術仲間に変な爺さんがいてな。その男が、不老不死の秘術を編み出したと言って当時は話題になったのだ。それから、しばらくして、その男が姿を消し、次に現れた時は教祖様になっておった。姿は若者そのものだったが、間違いなくあの爺さんだったな。錬金術で若返ったんだろうな。錬金術で若返ると独特な雰囲気をまとうのだが、まさにそれだった。確か、そいつの名前がフィルカウスと言ってた気がする。私は人の名前など覚えないが、奴はそこそこ錬金術が出来るんで覚えていたんだが、こんなところで耳にするとはな」
スタシャが認めるとなると油断ならないな。一応は頭の隅においておこう。今すぐにどうにかなるものでもないしな。それよりも、盗賊たちの処分のほうが緊急の課題だ。スタシャとはその場で別れ、僕は屋敷に戻った。屋敷に向かう途中、会う者に婚約を祝う言葉を掛けられ、少し気分が明るくなった。
屋敷に入ると、なにやらいつもと違う雰囲気が漂っていた。この香りは……まさか。エリスが急いで僕を出迎えてくれて、ハイエルフのリリが来ていることを教えてくれた。エルフもたくさん来ているようで、魔牛牧場の方で待機しているようだ。何しに来たんだ? 来るなら、昨日の成人式に来ればよかったのに。僕は、リリがいる居間に向かった。
リリは居間のソファーに座って寛いでいた。なぜか、リードがリリの前に正座をさせられていた。これは、どんな状況なんだ? 近くにいたエリスを見ると、エリスが僕の耳元で話し始めた。
「それが、リードさんがリリさんに成人式の嘘の日取りを教えていたみたいなんです。リリさん、今日だと思って来たのに、成人式が終わっていることを知って、リードさんを説教していたんです」
なんで、リードは嘘の日取りを教えたんだ?
「なんでも、成人式にリリさんが来ると村が混乱するからだそうなんです。私にはよく分からないですけど、エルフの性質が関係しているみたいなんです」
なんとなく分かる気がする。リリは、いるだけで男を惹きつける魅力がある。こんなのが村人の中に入り込んだら大変な騒ぎになるのは目に見えている。そういう意味ではリードの判断は正しかったのかもしれない。リリに叱られて項垂れているリードがだんだん、かわいそうに見えてきた。
「リリ。今日会えるとは思っていなかったぞ。リードをあまり叱ってやらないでくれ。良かれと思ってやったことなのだ。僕の顔に免じて、頼む」
「我が君に会えて、うれしいぞ。これで会えなかったらリードにはきつい仕置をするつもりであったが、まぁいい。リード立ってもよいぞ。さて、我が君、妾が来た理由は分かっておるだろ?」
僕の成人を祝いに来たというわけでないことはなんとなく分かった。エルフが、こうやって動くのは二つしかない。男とお菓子だ。今回は後者だろう。僕は、エリスにお菓子を用意するように頼み、ラーナさんにも協力してもらうように言った。エリスは、はいと返事をして、ラーナさんの食堂の方に向かった。お菓子が出来るまで、時間がかかりそうだな。リリだけならともかく、かなりの数のエルフを連れてきているみたいだからな。
しかし、リリがこのタイミングで来てくれたことは良かったのかもしれない。盗賊たちの処分について、リリにしか頼めないことがあるからだ。
「リリ。急に変な質問をするが、里で男は必要としているか?」
リリの表情がピクリと動いた。話は聞いてくれるようだ。僕は、盗賊たちのことを説明し、村の外に出すわけにいかないことを素直に話した。リリは、目を閉じ、しばらく考えていた。
「正直言ってな、男は十分間に合っている。前に借りた男たちが頑張っているおかげで、返す頃には身籠るものも多かろう。だが、条件をこちらから付けさせてくれるならば、話は別じゃ。聞くか?」
僕は、頷いてリリの言う条件を聞くことにした。リリの条件とは、未来永劫、盗賊たちをエルフの里に渡すこと。その一点だった。僕としては、その条件は有難かった。村に留める気がなかったので、願ったり叶ったりだ。そうか、リリはその辺りもわかった上で言っているのだな。これで、リリに借りが出来てしまったな。僕は、リリに盗賊に会ってみるかと聞くと、暇だから行くかと軽い感じで答えた。
僕は、リリとリードを連れて自警団本部に向かった。本日二度目だ。リリと共に入ったせいで、団員たちが色めきだってしまった。ちらちらとリリを見て、仕事に集中できないでいるみたいだ。やはり、リリを成人式に呼ばなかったリードの判断は正しかったな。先程取り調べたものは牢に戻っていると言うので、そっちに行くと、盗賊たちは拘束された状態で呻いていた。どうやら、団員と一悶着あったようだ。それでも、リリが入ると盗賊たちはリリを舐め回すように見始めた。
「おお。考えを変えてくれたのか? 居間なら教団には悪く言わねぇから。その姉ちゃんは……エルフか!! そいつを献上すれば教祖も喜んでくださるだろうよ。その前に、俺達に貸してくれたら文句はねぇが」
こいつは……本当に最低なやつだな。リリはそんな奴らを見て、ニコニコとしていた。何をする気なんだ?
「ほお。そなたらは、妾を抱きたいのか? 分かるぞ。妾は魅力的だからの。だがの、妾はここにいる我が君のものじゃ。そなたらに抱かれるわけにはいないの。でも、妾の仲間なら抱かせてやっても良いぞ。どうじゃ? 興味はあるかの?」
そういわれた盗賊たちは、リリの後ろに控えていたリードを見て、下卑た笑みを浮かべていた。もう、そわそわしだしていた。僕には分からないが、盗賊たちはリリの秘術にかかっているようだ。様子が徐々に変わっていき、思考力がなくなっていっているのか、目から光がなくなり、獣のようだ。
リードが僕に耳打ちをしてきた。
「リリ様の秘術がかかれば、この者達が元に戻ることはありません。一生、飼い殺されることでしょう。里の者達が喜ぶと思います。本当にロッシュ殿には感謝してもしきれません。ありがとうございます」
エルフの常識が僕とは違うことは承知しているつもりだが、盗賊たちがただの種製造機にしたことを何も思わないことに少し戦慄を思える。それでも、僕も苦笑いを浮かべた。ライルには、ここで起きたことを説明し、エルフの里に送るために荷車の手配をしてもらうことにした。ライルも盗賊たちの変容に、流石に驚いた様子を見せていたが、すこし楽しそうにしていた。盗賊たちに相当怒りを感じていたようだな。
僕達は自警団本部を後にした。リリも喜んでいるようで、屋敷に向かう足取りを心持ち軽い感じがした。リリは僕の腕に絡みついてきて、僕を引っ張るような感じで歩き始めた。リードもちょっと慌てた様子で付いてきている。人気の少ない茂みがみえてくると、リリは力強く僕を茂みの方に引っ張り出してきた。
「おい、リリ。どうしたんだ。茂みなんて向かって。そっちは屋敷の方じゃないぞ」
「我が君。もう我慢できんのじゃ。妾は秘術を使うと、自分を抑えられなくなるのじゃ。良いじゃろ?」
リードも巻き込んで、茂みで僕は野獣になった。リリがいると、いつもこの展開になるな。僕達が、屋敷に戻るとちょうど、エリスがお菓子を持って帰ってきた。手ぶらだったので、不思議がっていると、エリスが僕の手を引っ張り、屋敷を出たところには山のようにお菓子が積まれた荷車があった。リリもすごく喜んで、お菓子をひとつまみして上機嫌になっていた。
リリはそのままエルフの里に帰っていった。盗賊たちの移送は、自警団から魔牛牧場にいるエルフたちに引き継がれて、30人の盗賊たちは魔の森に消えていったらしい。これで、村に平穏が戻ってきたのだ。
その後、エルフの里から盗賊の一人が逃げ出したという報告が来た。それがどういう結末になるのか。
「どうでも良い話だぞ。昔な、錬金術仲間に変な爺さんがいてな。その男が、不老不死の秘術を編み出したと言って当時は話題になったのだ。それから、しばらくして、その男が姿を消し、次に現れた時は教祖様になっておった。姿は若者そのものだったが、間違いなくあの爺さんだったな。錬金術で若返ったんだろうな。錬金術で若返ると独特な雰囲気をまとうのだが、まさにそれだった。確か、そいつの名前がフィルカウスと言ってた気がする。私は人の名前など覚えないが、奴はそこそこ錬金術が出来るんで覚えていたんだが、こんなところで耳にするとはな」
スタシャが認めるとなると油断ならないな。一応は頭の隅においておこう。今すぐにどうにかなるものでもないしな。それよりも、盗賊たちの処分のほうが緊急の課題だ。スタシャとはその場で別れ、僕は屋敷に戻った。屋敷に向かう途中、会う者に婚約を祝う言葉を掛けられ、少し気分が明るくなった。
屋敷に入ると、なにやらいつもと違う雰囲気が漂っていた。この香りは……まさか。エリスが急いで僕を出迎えてくれて、ハイエルフのリリが来ていることを教えてくれた。エルフもたくさん来ているようで、魔牛牧場の方で待機しているようだ。何しに来たんだ? 来るなら、昨日の成人式に来ればよかったのに。僕は、リリがいる居間に向かった。
リリは居間のソファーに座って寛いでいた。なぜか、リードがリリの前に正座をさせられていた。これは、どんな状況なんだ? 近くにいたエリスを見ると、エリスが僕の耳元で話し始めた。
「それが、リードさんがリリさんに成人式の嘘の日取りを教えていたみたいなんです。リリさん、今日だと思って来たのに、成人式が終わっていることを知って、リードさんを説教していたんです」
なんで、リードは嘘の日取りを教えたんだ?
「なんでも、成人式にリリさんが来ると村が混乱するからだそうなんです。私にはよく分からないですけど、エルフの性質が関係しているみたいなんです」
なんとなく分かる気がする。リリは、いるだけで男を惹きつける魅力がある。こんなのが村人の中に入り込んだら大変な騒ぎになるのは目に見えている。そういう意味ではリードの判断は正しかったのかもしれない。リリに叱られて項垂れているリードがだんだん、かわいそうに見えてきた。
「リリ。今日会えるとは思っていなかったぞ。リードをあまり叱ってやらないでくれ。良かれと思ってやったことなのだ。僕の顔に免じて、頼む」
「我が君に会えて、うれしいぞ。これで会えなかったらリードにはきつい仕置をするつもりであったが、まぁいい。リード立ってもよいぞ。さて、我が君、妾が来た理由は分かっておるだろ?」
僕の成人を祝いに来たというわけでないことはなんとなく分かった。エルフが、こうやって動くのは二つしかない。男とお菓子だ。今回は後者だろう。僕は、エリスにお菓子を用意するように頼み、ラーナさんにも協力してもらうように言った。エリスは、はいと返事をして、ラーナさんの食堂の方に向かった。お菓子が出来るまで、時間がかかりそうだな。リリだけならともかく、かなりの数のエルフを連れてきているみたいだからな。
しかし、リリがこのタイミングで来てくれたことは良かったのかもしれない。盗賊たちの処分について、リリにしか頼めないことがあるからだ。
「リリ。急に変な質問をするが、里で男は必要としているか?」
リリの表情がピクリと動いた。話は聞いてくれるようだ。僕は、盗賊たちのことを説明し、村の外に出すわけにいかないことを素直に話した。リリは、目を閉じ、しばらく考えていた。
「正直言ってな、男は十分間に合っている。前に借りた男たちが頑張っているおかげで、返す頃には身籠るものも多かろう。だが、条件をこちらから付けさせてくれるならば、話は別じゃ。聞くか?」
僕は、頷いてリリの言う条件を聞くことにした。リリの条件とは、未来永劫、盗賊たちをエルフの里に渡すこと。その一点だった。僕としては、その条件は有難かった。村に留める気がなかったので、願ったり叶ったりだ。そうか、リリはその辺りもわかった上で言っているのだな。これで、リリに借りが出来てしまったな。僕は、リリに盗賊に会ってみるかと聞くと、暇だから行くかと軽い感じで答えた。
僕は、リリとリードを連れて自警団本部に向かった。本日二度目だ。リリと共に入ったせいで、団員たちが色めきだってしまった。ちらちらとリリを見て、仕事に集中できないでいるみたいだ。やはり、リリを成人式に呼ばなかったリードの判断は正しかったな。先程取り調べたものは牢に戻っていると言うので、そっちに行くと、盗賊たちは拘束された状態で呻いていた。どうやら、団員と一悶着あったようだ。それでも、リリが入ると盗賊たちはリリを舐め回すように見始めた。
「おお。考えを変えてくれたのか? 居間なら教団には悪く言わねぇから。その姉ちゃんは……エルフか!! そいつを献上すれば教祖も喜んでくださるだろうよ。その前に、俺達に貸してくれたら文句はねぇが」
こいつは……本当に最低なやつだな。リリはそんな奴らを見て、ニコニコとしていた。何をする気なんだ?
「ほお。そなたらは、妾を抱きたいのか? 分かるぞ。妾は魅力的だからの。だがの、妾はここにいる我が君のものじゃ。そなたらに抱かれるわけにはいないの。でも、妾の仲間なら抱かせてやっても良いぞ。どうじゃ? 興味はあるかの?」
そういわれた盗賊たちは、リリの後ろに控えていたリードを見て、下卑た笑みを浮かべていた。もう、そわそわしだしていた。僕には分からないが、盗賊たちはリリの秘術にかかっているようだ。様子が徐々に変わっていき、思考力がなくなっていっているのか、目から光がなくなり、獣のようだ。
リードが僕に耳打ちをしてきた。
「リリ様の秘術がかかれば、この者達が元に戻ることはありません。一生、飼い殺されることでしょう。里の者達が喜ぶと思います。本当にロッシュ殿には感謝してもしきれません。ありがとうございます」
エルフの常識が僕とは違うことは承知しているつもりだが、盗賊たちがただの種製造機にしたことを何も思わないことに少し戦慄を思える。それでも、僕も苦笑いを浮かべた。ライルには、ここで起きたことを説明し、エルフの里に送るために荷車の手配をしてもらうことにした。ライルも盗賊たちの変容に、流石に驚いた様子を見せていたが、すこし楽しそうにしていた。盗賊たちに相当怒りを感じていたようだな。
僕達は自警団本部を後にした。リリも喜んでいるようで、屋敷に向かう足取りを心持ち軽い感じがした。リリは僕の腕に絡みついてきて、僕を引っ張るような感じで歩き始めた。リードもちょっと慌てた様子で付いてきている。人気の少ない茂みがみえてくると、リリは力強く僕を茂みの方に引っ張り出してきた。
「おい、リリ。どうしたんだ。茂みなんて向かって。そっちは屋敷の方じゃないぞ」
「我が君。もう我慢できんのじゃ。妾は秘術を使うと、自分を抑えられなくなるのじゃ。良いじゃろ?」
リードも巻き込んで、茂みで僕は野獣になった。リリがいると、いつもこの展開になるな。僕達が、屋敷に戻るとちょうど、エリスがお菓子を持って帰ってきた。手ぶらだったので、不思議がっていると、エリスが僕の手を引っ張り、屋敷を出たところには山のようにお菓子が積まれた荷車があった。リリもすごく喜んで、お菓子をひとつまみして上機嫌になっていた。
リリはそのままエルフの里に帰っていった。盗賊たちの移送は、自警団から魔牛牧場にいるエルフたちに引き継がれて、30人の盗賊たちは魔の森に消えていったらしい。これで、村に平穏が戻ってきたのだ。
その後、エルフの里から盗賊の一人が逃げ出したという報告が来た。それがどういう結末になるのか。
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