嘘彼

あめ

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青葉香る

入寮の日3

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まず、弟の蘭が受付をした。
胸にある綺麗な刺繍の目立つ制服を来た先輩が次々と書類を処理していく。
人懐っこい蘭はその先輩と何やら楽しそうに話しながら手続きをすると、じゃあお先に!と人混みの中へ消えていった。

僕は弟に面倒臭げに返事をすると一歩前へ進んだ。


「藤縞 紫乃です。」

「…ああ!さっきの子と双子なんですね?一卵双生児?」

「そうですね。よく驚かれます。」


いつも初見で言われてきていることだ。慣れてはいる。


「はい、じゃあこれ資料です。部屋番は552号室。小部屋は二つあるんだけど藤縞くんは向かって左側なので。」


じゃあいってらっしゃい~と送り出され、言い渡された部屋を目指す。
どうやら僕の部屋に行くには5階まで上らないといけないようで、早速エレベーターに乗り込んだ。
ものの数分で5階まで着き、長い廊下をゆっくり観察しながら部屋を探してみる。
壁が白基調な上、廊下にずらっと並ぶ大きい窓のおかげで、日光が存分に入り込んでいて広間より明るかった。

僕の部屋は案外すぐに見つかった。
外にはプレートがかかっていて名前が印刷されている。

『影千加  奈津
   藤縞   紫乃』

かげちか、なつ。
同室の人の名前、珍しい名字だ。初めて聞く。
段々と緊張してきたけど、思い切ってドアを開けた。中は想像以上に広く、蘭の言った通り高校生の寮にしては豪華すぎるほどだった。
もうすでに同室の人はいるようで、玄関には運動靴が置いてある。

おそるおそる部屋の奥へ入っていくと、背の高い男の子がリビングで荷物を解いていた。


「あの、初めまして。同室の藤縞です。」


僕の声に振り向いたその男の子は、何も言わずじっと見つめてきた。
切れ長の目に綺麗な栗色の髪。
どうやらピアスもしているようで、耳元が一瞬キラッと光った。
お互いに軽い観察が終わっても、その男の子は言葉を発さない。
沈黙が続いてそろそろ居たたまれない気持ちになってきたところで、やっと彼が口を開いた。


「へえ、ちんちくりんが同室かぁ。」


…ちんちくりん!?
初対面の人に、いきなりそんな事言う!?

僕の反応を楽しむかのようにニヤリと笑うこの男…第一印象、最悪。
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