イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~

美和優希

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2.副社長と暮らす生活

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 副社長とショッピングモール内にある店を複数まわって、ある程度一段落ついたときには夕方になっていた。

 その間、副社長は私の新しいスーツを四着と、さらには私の私服まで数着買ってくれたのだ。

 さすがに私服まで買ってもらうなんてとんでもないと思ったけれど、今後どこかに出掛けるのに必要だろうと、またあの有無を言わせないような言い方をされてしまって断りきれなかった。


「すみません。こんなにたくさん……」

「気にするな。俺が言い出したことなんだから。それにこういうときは謝るんじゃなくて?」


 そう聞き返してきた副社長に、思わず脳内に“はてな”が浮かぶ。

 だけど少し考えたあとに何となく副社長の言わんとしたことがわかって、口を開く。


「……ありがとうございます」

「そうだ。きみは何も悪いことをしてないんだから謝る必要はない。俺としても謝られると悪いことをさせた気になってしまう」


 副社長の言葉に思わず納得した。

 確かに厚意でいろいろしたときに“ごめんなさい”より“ありがとう”と言われた方が気持ちがいい。

 そんなことすっかり頭から抜けていたけれど、そういえば昔、副社長と同じようなことを言われたことがあるような気がする。

 いつ、誰に言われたのかまでは、さっぱり思い出せないけれど……。


 副社長も私も両手に荷物を持ってエレベーターの方へ向かって歩いていると、不意にマネキンの着ているワンピースが目に留まる。


 わぁ、可愛い……!

 白色の生地には花柄の透かし模様が入っていて、控え目だけどオシャレな感じに見える。

 裾もふわりとしていて、だからといって広がり過ぎてるわけではない。

 全体的に大人っぽいデザインではあるけれどシルエットは可愛らしい、そんな大人可愛い秋冬物のワンピースだ。


 先程来たときはここのお店のマネキンは違う服を着ていた気がするから、ついさっきこのマネキンは着せ替えられたのだろう。

 値札は見えないけどきっと高いんだろうな。

 手持ちが少ない今は、そう思うことでそのマネキンの横を通り過ぎようとした。


 だけど、副社長は不意にそのマネキンの隣で足を止めた。


「この服、木下さんの好みなんじゃないか?」

「……え?」


 一瞬、ここまでの私の心の中の興奮が声に出ていたのかと思ってしまったくらいだ。


 今日買ってもらったスーツや私服も副社長が選ぶのを手伝ってくれたものの、最終的には私が選んだ。それを見て、副社長はこのワンピースが私好みだと思ったのかもしれない。

 こんな風にピンポイントで私の好みを言い当てられるくらいに私の好みはわかりやすかったのだろうか?


 ここまでの副社長のことだ。

 ここで“はい”なんてこたえてしまっては、じゃあこれも買おうと言いかねない。


「可愛いとは思いますけど、今日はたくさん服を買っていただいたので……」


 だからといって否定してしまうのも違うと思って、私としてはやんわりと断ったつもりだった。

 副社長は少し眉を下げて私を見たあと、すぐそばで商品の衣類を整理していた店員さんに声をかけた。


「すみません。このマネキンの着ている服なんですけど、試着できますか?」

「はい、少々お待ちください……」


 あの副社長、私の話、聞いてました……?

 さすがに副社長に声をかけられて、顔を赤く染めながらマネキンのワンピースを脱がせ始めた店員さんを見て、今更どうすることもできない。


 今の店員さんもそうだったけど、ここに限らずどのお店の女性店員さんも、副社長に声をかけられると顔を赤くしたり、副社長に見入ってたりしている。

 それだけ誰の目から見ても、副社長はかっこよく映っているということなのだろう。

 かっこいい上に、仕事も出来るし、料理も出来る。完璧な副社長に、私なんかがこんなに良くしてもらっていいのかって感じだ。

 世の中の女性を敵に回しそうだ。



「はい、お待たせしました」


 その声に顔を上げれば、先程の店員さんが目的のワンピースを手に持ってこちらを向いている。そして私を試着室に案内してくれた。

 試着だけして断るという方法もあるし、と思いながら試着室へ向かった。

 しかし、私は思わず試着室内で目的のワンピースを着た自分を見て、目を輝かせていた。


 自分の好みど真ん中の大人可愛いワンピース。

 着てみると、自分がお姫様にでもなった気分になって、よりその魅力に惹かれてしまったのだ。
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