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幸福*

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「姫様……」

 なんだかすごく恥ずかしい頼み方をしてしまった気がして、リュシエンヌはまた前を向いた。だからランスロットがどういう顔をしたのか目にすることはなかった。

 彼はリュシエンヌの許しを得て、再度秘所に触れてきた。見えない中で形や位置を確かめるようにそっと花びらをなぞり、指の腹で撫でてくる。

「ん……」
「くすぐったいですか?」

 ふるふると小さく首を振ったが、ランスロットは太股の方を撫でた。大丈夫だと安心させるためかもしれないが、リュシエンヌとしてはかえってもどかしさが増し、何度も吐息を零した。

 もっと大胆に触るのかと思ったが、彼は焦らずマッサージでもするかのように花びらや太股を撫で続け、脚の付け根をなぞったりする。次第にリュシエンヌはもどかしいような、まるで彼に焦らされている心地になってきた。

(なにかしら……すごく、変な感じ……)

 別に彼の邪魔をしたいわけではないが、腰や尻を揺らし、脚を閉じそうになる。

 そうしたリュシエンヌの動きを何かの合図だと思ったのか、それまで撫でるような触り方をしていたランスロットの指が、花びらの奥へつぷりと入ってきた。

「っ……」
「よかった。濡れてますね……。痛いですか?」
「痛くはない、けど……んっ」

 くちゅ、という水音が恥ずかしかった。

 ランスロットの口ぶりから濡れていることが正しいようだが、それでも自分が鳴らしていると思えば平静でいるのは難しい。できればあまり音は立てないでほしい、と思うリュシエンヌの願いに反して、ランスロットはくちゅくちゅと、まるで聞かせるように淫音を鳴り響かせていく。

「ん、んっ……」

 耳から入る刺激に羞恥心が掻き立てられる。でもそれと同時にお腹の奥が切なくなり、蜜壁を愛液と共に擦るランスロットの指先を強く意識する。

 違和感もあるが、別の感情も呼び起こされていく気がした。

「ランスロット、わたし……」
「姫様、気持ちいいですか……」
「わから、ない……でも、嫌じゃない……お腹の奥がむずむずして、ぁっん……」

 彼の指がずぶりと奥へ入ってきた。痛みはないが、違和感はある。

「いきなり、深く入れないで……」
「すみません。一度、抜きますね」
「んっ……」

 ランスロットの指が蜜壺から引き抜かれる。彼の指はリュシエンヌより太く、長かった。これまでの日常生活で見た彼の指先が思い浮かび、たった今自分の中に入っていたかと思うと、罪悪感と背徳感に襲われる。

(こんなこと、本当に彼にさせていいのかしら……)

 リュシエンヌがそんなことを考えていると、ランスロットの指はたっぷりと纏った蜜を花びらに丹念に塗り込めていく。今度は引っ掛けるように指を曲げて、浅い蜜口から愛液を溢れさせ、トントンと小刻みな振動を与えてくる。

「ふ……、ん……んっ」

 ちゅぷっ、くちゅっ、という淫らな音がどんどん大きくなる。

「姫様、この音、まるで姫様が俺の指を美味しそうにしゃぶっているように聞えませんか」
「そんなこと、ぁ、んっ……」

 ぐぷっと、不意打ちで奥へ入れられ、大きな刺激に襲われる。お腹の奥が熱く、何かに追い詰められていくような感じが迫ってくる。

「まって、ランスロット、指、抜いて……っ、わたし、変になりそうっ」
「変になっていいですよ」
「だめっ、んっ……、お願いっ」
「……わかりました」

 これで変な姿を見せずに済むと安堵したリュシエンヌだったが、その認識が甘かったことをすぐに思い知らされる。

 ランスロットは中への振動をやめ、花びらの方をまた撫でてきたのだ。――いや、花びらではなく、小さな粒のような、リュシエンヌ自身も知らなかった場所を見つけ出し、指で押しつぶしてくる。

「や……なに? んっ……ぁ、あっ」

 彼が触ってきたのは陰核で、女性が快感を得られる部位だ。処女であるリュシエンヌにはこちらの方がより強い快感をもたらすことを、彼女はまだ知らなかった。

「これ、だめ……っ、はぁ……、さっきより、変になっちゃ……、やぁ、んっ」
「姫様がこちらがいいとおっしゃったのですよ……。それとも、こちらがいいですか」

 ランスロットはどこか笑いを含んでそう囁くと、抜いていた指をまたぐぷりと蜜壺へ差し込んでくる。

「っ、だめっ」
「姫様は、だめばっかりですね」
「だって、あっ、ランスロット……っ、もう、だめ、なにか、きちゃうっ……」
「大丈夫、そのまま、身を委ねて」
「ふ、ぅ……んっ、んんっ――」

 びくんと、リュシエンヌは横になっていた身体を丸くさせ、激しく震わせた。

 頭の中が真っ白になり、また中に入っているランスロットの指を強く咥えこむのがわかった。はぁはぁと乱れた呼吸を繰り返し、自分の身に起こったことに混乱しつつも、心地よい疲労感に身体を支配されてぼんやりとする。このまま眠ってしまいたい気分だ。

 しかし背中からぎゅっと抱き着かれる温もりに、リュシエンヌは現実へと引き戻される。

「姫様、大丈夫ですか?」
「ええ……。でも、もう、疲れたわ……」
「それは困りましたね」

 自分よりも大きな身体にすっぽりと包まれ、ゆらゆらと揺り籠のように揺らされると、リュシエンヌはますます微睡みに誘われる。

「姫様。まだ、寝ないでください……」
「ん……ぁ……」

 ランスロットにやわやわと胸を揉まれ、先ほど快感へと導いた花芽をくにくにと弄られ、リュシエンヌはまた少しずつ息を弾ませていく。

 逃げるように身体を捩じっても、ランスロットの腕にがっしりと捕まえられ、離さないと言うように密着される。

(何か、当たっている……?)

「姫様、これで終わりではありません」

 いつの間にか脚衣を寛げたランスロットが、リュシエンヌの片脚を上げ、硬いものを当ててきた。

(もしかして、これ……)

 恐る恐る下を見れば、開かれた股の間に赤黒い肉棒が見えた。

「これを貴女の中に挿入いれます」
「っ……」

 初めて目にする男性器のグロテスクさに、リュシエンヌは息を呑む。それはまるで生き物のようにぴくぴくと動いている。大きくて、とても硬そうで……。

「む、無理……。こんな大きいの、絶対に挿入はいらないわ」
「挿入ります。赤子だって、ここから生まれてくるんですよ?」
「そんなの、んっ」

 まだ抗議している最中なのに、ランスロットは陰茎を蜜口に押しつけてきた。てっきりそのまま挿入してくるかと怯えたが、彼はずりずりと擦りつけてくるだけで、無理矢理捩じ込んではこない。

 安堵するものの、リュシエンヌの陰唇は愛液でべっとりと濡れており、異物が触れ合う度にいやらしい水音を立てて、ランスロットの雄芯に絡みつこうとする。

「ふ、ぅ……、んっ……ぁ、ぁんっ……」

 花びらの奥へ進まず、通り過ぎた肉杭はさらに赤く尖った淫芽をつつき、リュシエンヌを悶えさせた。

「はぁ、ランスロット、意地悪、しないでっ」
「だって、挿入れちゃだめ、なんでしょう?」

 リュシエンヌの言う通りにしているだけだと、彼は硬い肉棒でねっとりと蜜口を愛撫してくる。緩慢な動きに物足りなくなって彼女が尻を揺らせば、勢いをつけて擦りつけてきたので、彼女はもう声を抑えきれなかった。

「あっ、ランスロット、わたし、また、いっちゃ……、ぁ、んっ――」

 二度目の兆しを、リュシエンヌは目を閉じて受け入れた。もう今度こそ無理だ。

 しかしランスロットは手加減せず、また同じ熱を彼女に味わわせようと熱杭を動かす。

「やっ、もう、だめっ……熱いの……」
「熱いなら、脱ぎましょうか」

 ランスロットは乱れた夜着のリボンを解き、寝そべった状態で器用に脱がしていく。

「ほら、両手を上げてください」

 まるで子どもを着替えさせるような口調だが、彼はしっかりとリュシエンヌを裸にさせ、その裸体をよく見ようと起き上がった。

「やだ、見ないで」
「こんな素晴らしい姿を見ない男がどこにいるんですか」

 ほらどけて、とランスロットは胸を隠すリュシエンヌの手首を掴み、しっとりと汗ばんだ胸元を露わにさせた。硬く尖った蕾まで目に焼きつけるように凝視され、彼女は涙目になる。

「脱がさないって言ったくせに」
「最初は、って言いましたよ」

 行為の最初は、という意味で彼は言ったのだ。

(やっぱり意地悪だわ)

 一杯食わされた気分でいるリュシエンヌに、ランスロットが身を屈めてちゅっとキスをする。

「そんな拗ねないでください。そろそろ俺も、限界なんです」

 蜜口に当たる熱の塊が奥へ入りたいというように甘く吸いついてくる。

「姫様……」

 リュシエンヌもランスロットがここまでくるのに丁寧に準備をしてくれたのはわかっていた。

「わかった。……ゆっくり、来て」
「姫様の仰せのままに」

 ぐぷりとランスロットの雄茎が捩じ込まれてきた。

「っ――」

 丁寧な愛撫で蜜を溢れさせていたとはいえ、リュシエンヌの中へ入ってくる彼の存在は大きかった。隘路をこじ開け、無理矢理中へ収まろうとする感じを痛みと圧迫感で否応にも伝えてくる。

(痛い……苦しい……)

 リュシエンヌは悲鳴さえ上げられず、息を止めていた。

「姫様、呼吸してください……。吸うんじゃなくて、吐いて」

 自身も苦しそうにしながら主を気遣うランスロットに、リュシエンヌは必死で言われた通りにする。

「そう、上手ですよ……。あと、できれば身体の力も抜いてください」
「それは、難しいわ……。だってあなたの、すごく……大きくて、苦しいもの……」
「そんなこと言われると、また大きくなってしまうので、やめていただけますか」
「っ、なんで、また大きくなる、の……」
「姫様が可愛いから、です」
「意味がわからない……」

 しかしそんなくだらないやり取りで幾分力が抜けたのか、ランスロットはどうにか自身の分身をリュシエンヌの中に収めることができたみたいだ。

「はぁ……姫様、すべて、入りましたよ」
「ほんとう? なら、もう抜いて……」
「いえ、それはあと少し待っていただけると……」
「そんな……、じゃあ、もっと小さくして……」
「それも、難しいです」

 先ほどからちっとも自分の言うことを聞いてくれない彼に、苦しさも相まってリュシエンヌは「ひどいわ」と弱々しい声で怒りをぶつける。

「じゃあ……手、握って」

 リュシエンヌの命令にランスロットは声なく笑い、指を絡ませてきた。

「笑わないで……」
「すみません、姫様……。でも、こうして一つに繋がれて、俺、とても幸せです」

 ランスロットはリュシエンヌに覆い被さってくると、彼女をぎゅっと抱きしめてくる。

 今リュシエンヌは股を開いて、とても恥ずかしい格好でランスロットと繋がっている。

 だからこんな状況で幸せだと述べる彼の言葉がどこか滑稽にも聞こえるのだが、彼の声や自分を見つめる表情があまりにも幸せそうで、リュシエンヌも何やら熱い思いが込み上げてきた。

「はぁ……また、締めつけて……。姫様、そろそろ動いても?」
「動くの?」

 感動に酔いしれていたが、動いてもいいか聞かれ、リュシエンヌはできればやらないでほしいなと思ってしまった。だって今だってとても苦しいのに、行ったり来たりしたらもっと苦しくなるはずだ。

「すみません。すぐに、終わらせますので」
「……わかった」

 リュシエンヌの了承を得ると、ランスロットは腰をゆっくりと動かし始める。中にあった肉棒が出て行きかけると、またぐぷっと淫猥な音を立てて中へ入って来て、蜜壁を擦って愛液を外へ溢れさせていく。抽挿は次第に速くなり、リュシエンヌはランスロットに揺さぶられる。

「はぁ、はぁ……、ランス、ロット、はげし、もっと、んっ、んぅっ」

 ランスロットは犬のような荒い息を吐きながら、リュシエンヌの口を塞ぎ、夢中で舌を搦めてくる。彼女はくぐもった声を上げ、酸素すら彼に差し出す気がして、もう何も考えられなかった。

「はぁ、はぁ、ぁっ、姫様っ――」

 口が離れ、容赦なく中を突かれ、切羽詰まった声で自分を呼ぶランスロットの声が耳元で聞こえたかと思うと、どくんっと熱い飛沫が弾けた。

(ん……あつい……)

 熱に浮かされたような心地で、リュシエンヌはぼんやりとランスロットの子種を受け止める。自分ではどうしようもできない力に支配されて、リュシエンヌはランスロットと繋がった。夫婦になった。

「姫様……愛しています。一生、貴女を大切にします」
「ランスロット……」

 汗だくの身体を抱きしめられて、リュシエンヌは掠れた声で何度も愛しい人に愛の言葉を囁かれたのだった。

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