きらめきの星の奇跡

Emi 松原

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戦闘試験

1-2

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 短剣から、炎の玉がいくつもキラさんに向けて放たれる。
「お、やっとやる気になったみたいだね」
 軽々と、その玉を避けながら、キラさんが言った。
 この短剣には、いくつもの高度な魔法が組み込んである。勿論、短剣として、距離を詰めて戦うのが一番だけれど、長距離での攻撃だってできる。
「でも、まだ迷いがあるね」
 キラさんは、そう言って笑うと、軽く地面を蹴った。
 その瞬間、キラさんの姿が見えなくなる。
「ルト、後ろよ!!」
 リルの声が響いた。
 その声で、俺は反射的に、後ろから攻撃してきたキラさんの矢を、短剣で切った。
「二人とも、反射神経は良いみたいだね」
 キラさんが、別の矢を持ち直し、俺に迫った。
 俺は、短剣でそれを受け止める。連続で叩き込まれる攻撃を防ぐのに、精一杯だ。
「防いでるだけじゃ、何もできないよ?」
 キラさんが、挑発的に笑った。
 キラさんの攻撃には隙がなくて、攻撃に転ずることができない……!!
「召喚!!」
 リルの声が響くと同時に、俺とキラさんの間に、大量の薄紫色の蝶々が舞った。
 俺たちは、反射的に距離を取った。
 大量の蝶々は、キラさんを取り囲む。
「爆破せよ!!」
 リルの声と同時に、蝶々たちが爆発した。
 リル……?リルに、こんな力があったのか……?
 それより、キラさんは……。

「うん、まずは、リルちゃんからだね」

 キラさんは、一瞬でリルの背後に回っていた。
「きゃっ!」
 攻撃を避けようとしたリルの足がもつれて、その場に倒れた。
「リル!!」
 リルに向けられた矢を見た瞬間、俺の体は勝手に動いていた。
「うぁぁ!!」
 俺は、キラさんに思いっきり斬りかかると同時に、氷の刃を吹き出した。
 さらりと避けたキラさんは、笑っていた。
「そっか、君が一番怖いのは、リルちゃんを失うことなんだね」
 そう言うと、素早くリルに向けて、何本もの矢を放つ。
 俺は、リルの前に立つと、その矢を全て短剣で切っていく。
 リルだけは……!!リルがいなくなった世界で生きている自分を、俺は想像できない。

 なんだか、段々と、短剣が手になじんできた気がする。
 この短剣が、どうすれば一番力を発揮するか。それは、創った俺が一番知っている!!
 俺は、覚悟を決めて、キラさんに向けて飛んで、距離を詰めた。
「霧よ!!」
 短剣を振ると、俺とキラさんの間に霧がたちこめた。
 視界を遮った隙に、キラさんの後ろに回り込む。いける!!

「うん、やっと、少し覚悟ができたようだね」

 キラさんは、笑顔でそう言うと、振り向くと同時に、足を軽く振った。
 俺の攻撃は、さらりとかわされて、足が蹴られて、俺はその場に倒れた。
「じゃあ、ルトくん、君はここで見ていてね」
 キラさんは、俺にとどめを刺さず、リルを見た。
 立ち上がって、杖を構えているリル。
 キラさんはまた、軽く地面を蹴ると、一気にリルと距離を詰めた。
「リル!」
 俺は立ち上がろうとしたけれど、キラさんに蹴られた片足が、ベリルの石で固まって、動けなくなっていた。羽で飛ぼうとしたけれど、ベリルの石は、地面にも固まってついていて、飛べない状況になっている。
 あの一瞬で……!?
 リルは、素早い動きで、キラさんの攻撃を杖で防いでいる。
 短剣を振って攻撃しようとしても、あの速さだと、リルを巻き込んでしまう可能性が……!
 だけれど、リルも、すぐにキラさんに転ばされた。リルの足にも、ベリルの石が……。
 キラさんが、笑って、矢を振り上げた。
「リル!!」
 俺が短剣を振ろうとしたその時、リルが俺に向けて杖を向けた。
「状態回復!魔力供給せよ!!」
 リルの声と共に、俺の足のベリルが消えた。それと同時に、俺の少なくなっていた魔力が満たされていく。
 驚く間もなく、キラさんは、何本もの矢で、リルの周りをおおい、爆発させた。
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