小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
502 / 589
第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百九十七話 涙ながらの再会

しおりを挟む
 いよいよ旅も十二日目です。
 何も問題無ければ、お昼前にセルカーク直轄領に到着します。
 なので、僕も宮廷魔導師の服をキチンと着ます。
 髪の毛もセットしてもらい、準備万端です。
 ユキちゃんたちも、綺麗にしてもらいます。
 兵も目的地に着くのもあってか、いつも以上に身だしなみに気をつけていました。
 でも、セルカーク直轄領に着くまでは街道の両側は森だから、本当に気をつけないといけません。
 シロちゃんたちが頑張ると言っているので、僕たちに危険はなさそうですけどね。
 では、いよいよ出発です。

「あれ? 前から多くの騎馬隊がやってきたよ」

 そして、セルカーク直轄領まであと三十分くらいのところで、何故か町の方からたくさんの騎馬隊がやってきました。
 部隊長さんが相手方と話をしていたけど、馬車の窓から見ると僕も知っている人がいました。
 僕は、思わず馬車から飛び出して駆け寄りました。

「セレンお姉さん! ナナリーお姉さん! カエラお姉さん!」
「「「レオ君!」」」

 大人っぽくなった三人のお姉さんに、僕は勢いよく抱きつきました。
 三人のお姉さんも、僕のことをギュッと抱きしめてくれました。

「うぅ、会いたかったよ……」
「私たちも、レオ君に会いたかったわ」
「あの小さかったレオ君が、こんなにも大きくなるなんて」
「すっかり大きくなったわね」

 僕はセレンお姉さんに抱きついたままずっと泣いちゃったけど、その間三人のお姉さんは僕を抱きしめてくれたり頭を撫でてくれました。
 こうして僕は涙が止まらなかったけど、暫くしてようやく気持ちも落ち着きました。

「ご、ごめんなさい。ずっと抱きついちゃって……」
「いいのよ。ふふ、そういえば前にもこんなことがあったわね」

 そういえば、セルカーク直轄領の守備隊に保護された時も、家族のこととかを話したらセレンお姉さんに抱きついて泣いちゃったよね。
 ちょっと恥ずかしくなって顔が赤くなっちゃったけど、セレンお姉さんは問題ないって言ってくれました。
 すると、守備隊に新しい人が入っているのに気が付きました。

「あっ、マヤさん、セラさんです! 守備隊に入れたんですね」
「レオ君、私たちのことを覚えてくれたのね。とても嬉しいわ」
「二年前に守備隊に入ったのよ。レオ君が頑張っているから、私たちも負けないように頑張ったのよ」

 マヤさんとセラさんも、別れた時から背が伸びていました。
 スラッとしたスタイルの良さが目を引く、とっても美人さんになっていました。
 きっと、二人とも物凄く強くなったんだね。
 他にも、もしゃもしゃの髪の人は相変わらず髪がもしゃもしゃだったし、スキンヘッドの人もスキンヘッドのままだった。

「あれ? 守備隊長さんは?」
「隊長は、セルカークの町でレオ君たちの到着を待っているわ」

 そっか、セラさんが教えてくれたけど守備隊長さんは町を守らないといけないもんね。
 守備隊の全員が、僕の迎えに来たら大変です。
 あっ、そうだ。
 守備隊の人に、ジェシカさんたちを紹介しないと。
 ちょうど、僕の後ろに集まって来ていますね。

「皆さんに紹介します。とってもお世話になっているジェシカさん、スライムのシロちゃん、コボルトのユキちゃん、サンダーホークのピーちゃん、モリヤマネコのムギちゃんです」
「おーおー、こりゃ美人の侍従がいるな。レオはいいご身分になったもんだ」
「なんたって、宮廷魔導師な上に男爵様だもんな。あの小さな魔法使いが、本物の魔導師になったもんな」

 もしゃもしゃの人とスキンヘッドの人がニコニコしながら僕の頭を撫でていたけど、そういえば昔は小さな魔法使いっていう二つ名だったもんね。
 最近だと、ずっと黒髪の天使様って言われていて、黒髪の魔術師とは言われなくなったよね。
 そして、ちょっと気になったことがあります。

「あの、何でオープンタイプの馬車があるんですか?」
「そりゃ、レオが来たと町の人に知らせるために決まっているだろうが」
「もう、たくさん人が集まっているぞ。そら、乗った乗った」

 僕は、スキンヘッドの人に脇を抱えられてオープンタイプの馬車に乗せられちゃいました。
 もう、何が何だか分からないですよ。
 あっ、そうだ。
 ジェシカさんやシロちゃんたちも一緒に……

 バタン。

 馬車の方を振り返った瞬間、ジェシカさんとシロちゃんたちが馬車に乗り込んでドアを閉めていました。
 絶対にオープンタイプの馬車には乗らないという、断固たる決意を感じました。
 いや、僕だってこんな馬車に乗るとは思っていないんですけど。

「それでは、これから宮廷魔導師ポラリス男爵様の護衛を開始する。町をパレードして、代官邸に向かう」
「「「はっ」」」

 えっ、パレード?!
 もしゃもしゃの人がセレンお姉さんたちに指示をしているけど、とんでもないキーワードが聞こえて来たよ。
 あわわ、とんでもないことになってきちゃった。
 わたわたしている間に、馬車が発車しちゃいました。
 取り敢えずセレンお姉さんたちに会えたこととか、オープンタイプの馬車に乗ってパレードすることになったと通信用魔導具で報告したら、お世話になったお姉さんに会えてよかったねとの返信の他に、パレードくらい当然だろうという返信も多数ありました。
 僕はセルカーク直轄領にとって恩人なのだから、パレードしても何も不思議ではないと陛下が返信してきました。
 うん、誰もパレードはおかしいとは言ってくれませんでした。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。