小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百九十八話 セルカーク直轄領に到着です

　そうこうしているうちに、僕たちを乗せた馬車はセルカーク直轄領のすぐ近くまでやってきました。
　懐かしい光景が目の前に見えてきて、とっても嬉しくなっちゃいました。
　よく、薬草採取とかで町の防壁の門の近くで活動していたな。
　そして、遂に防壁の門を抜けてセルカーク直轄領の町中に入りました。

「皆のもの、宮廷魔導師ポラリス男爵様のご到着だ！」
「「「うわー！」」」

　もしゃもしゃの人が大きな声で僕の到着を告げると、防壁の門の奥から更に大きな歓声が上がったのだ。
　大歓声を受けて、僕もとってもびっくりです。
　しかも、道に沿ってズラッと何列にもなって集まっています。
　人の数が凄くて、まるで町の人が全員集まったみたいです。
　でも、久々に会えた懐かしい人たちがニコニコしながら僕に手を振ってくれたので、僕もとっても嬉しくなりながら手を振り返していました。
　僕がセルカーク直轄領を旅立ってから随分と時間が経っているのに、町の人たちは僕のことを覚えていたんだね。
　こうして僕を乗せた馬車は、道の両端に詰めかけた人々の声援に応えるようにゆっくりと時間をかけて進みました。
　そして、目的地である代官邸に到着しました。
　馬車が停まると、僕は直ぐに馬車から降りました。
　いつもの何倍もの時間をかけて進んだのもあるけど、たくさんの人に手を振ったらちょっと疲れちゃいました。

「ははは、流石はレオだな。改めて感じたが、すげー人気だな」
「全くだ。長らくここに住んでいるが、こんなに人が集まったのは初めてだ」

　もしゃもしゃの人とスキンヘッドの人が上機嫌に話をしているけど、僕もこんなに人が集まっているなんて完全に予想外です。
　何人かの人は直ぐに誰だか分かったけど、馬車の両側に手を振らないといけないからそこまでゆっくり見る暇がなかったよ。本当に大変だね。
　代官邸に着いたら、僕たちは応接室に案内されました。

「アオン！」
「ピィ！」
「ミー」
「えっ、凄い人気だったって？　一緒に僕の馬車に乗れば良かったのに」

　サッ。

　僕の側にやってきたシロちゃんたちにそう言うと、揃って一斉に顔を背けた。
　よく見ると、ジェシカさんも顔を背けていました。

「侍従は、主人より目立たないものです」

　そして、僕に顔を戻してニコリと言いました。
　うん、鉄壁の意思が感じられます。

「ふふ、レオ君の周りはとっても楽しそうね」
「一人だった頃に比べると、とても明るくなったわ」
「賑やかでいいわね。良いことだと思うわ」

　セレンお姉さんたちは思わずクスクスとしているけど、確かに昔と比べると僕の周りはとても賑やかですね。
　この後は代官が僕の歓迎をする予定だけど、もう少し時間があるそうです。
　なので、他の人とお喋りをして過ごすことになりました。

「レオ君のことは、常々噂を聞いて把握していたわ。だから、情報を集めなくても勝手にレオ君が何をしたか分かったわ」
「うう、何だかちょっと恥ずかしいです……」
「そんな謙虚な性格だから、いい噂しか流れないのよ。つい最近だと、国境から戻ってきたら真っ先に貴族令嬢が泣きながら抱きついたとこね」

　あっ、これは間違いなくクリスちゃんとマヤちゃんのことだ。
　あの時は、王妃様やグレッグちゃんとかも僕に抱きついてきたよね。
　黒髪の天使様の王都凱旋として、かなり有名になっちゃった。
　大教会に行った時も、神様が僕の帰還を祝したという話になったもんね。

「今や、国を代表する宮廷魔導師になったのよね。本当に凄い魔法使いだわ」
「でも、僕に魔法を教えてくれたのはセレンお姉さんです。セレンお姉さんは、間違いなく僕のお師匠様です」
「私が黒髪の天使様のお師匠様っていうのも、中々照れくさいわね」

　セレンお姉さんは、ちょっと恥ずかしそうにほっぺを指でポリポリとしていました。
　でも、僕を助けてくれて魔法を教えてくれたのは、間違いなくセレンお姉さんです。
　セレンお姉さんは、僕にとって命の恩人でもあります。
　あっ、そうだ。
　あのことも言わないと。

「僕は、色々な人から水虫を治す方法を教えて貰いました。時間がある時に治療します！」
「おい、何だよその気合は。というか、そのことを忘れていなかったのかよ！」
「「「ははは！」」」

　スキンヘッドの人が顔を真っ赤にして僕に抗議してきたけど、僕にとって水虫を治すことは一つの大きな目標なんです。
　誰に何と言われようとも、気持ちは変わりありません。
　目指せ、水虫を治せる治療師です！