小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百九十五話 新しいお友達

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 旅も十日目になります。
 今日は、最後の主要中継地の子爵領に向かいます。
 いつも通り、朝から準備を進めます。

「今日到着する子爵領と、帰りに寄るアマード子爵を繋ぐ街道がある。なので、帰りはその道を通って行くことになる」

 朝の点呼の際に部隊長さんが色々と教えてくれたけど、いよいよあの盆地にあるアマード子爵の名前も出てきた。
 段々とセルカーク直轄領に近づいてきたんだなと、改めて実感してきました。
 そして、気をつけなければいけないことがあります。

「ここからセルカーク直轄領まで森林地帯に入る。道中何があるか分からないから、常に周囲に気を配るように」
「「「はっ」」」

 セルカーク直轄領も、周囲は森ばっかりだったよね。
 今日から、シロちゃんとピーちゃんが周囲の警戒にあたるそうです。
 ということは、またまた僕のやることがなさそうです。
 なので、いつも通り馬車内で勉強することになりました。

「うー、まさかユキちゃんまで御者席に行っちゃうとは……」
「レオ様、口ではなく手を動かして下さい」

 今日もジェシカさんの監視の下で、難しい本を読んでいきます。
 いつも馬車に乗っているユキちゃんも、勇んで御者席に移動していました。
 チラッと馬車の窓から御者席を見たけど、ユキちゃんは御者を務める兵に抱っこしてもらってご機嫌ですね。
 僕も、たまには御者席に乗ってみたいなあ。
 そんなことを思いながら、本を読んでいきます。
 時々馬車が停まるけど、兵が難なく動物を倒しているので、やっぱり僕のやることがありません。
 兵にとっても、倒した獲物をシロちゃんがささっと血抜きしてアイテムボックスにしまってくれるので、臨時収入間違いなしって嬉しそうな表情です。
 ピーちゃんも周囲をしっかりと警戒していて、ユキちゃんも鼻を使って周囲の臭いを嗅ぎ分けています。
 そんな中、昼食の時にちょっとしたトラブルが発生しました。
 なんと、ピーちゃんが村の近くの茂みの中からとっても小さくてボロボロの猫を掴んでやってきました。
 一瞬ピーちゃんの餌かなと思ったけど、なんとこれが大発見でした。

「こ、これはモリヤマネコじゃ。遠くの山の麓にしか住んでいないはずじゃ」

 たまたま相席だった村のおじいさんが教えてくれたけど、数はそれなりにいるけど普段はこんな町の直ぐ側には来ないそうです。
 しかも、成長してもとても小さいけどとてもすばしっこくて狩りの名手だそうです。
 何でこの子猫が村の近くにいるのかを確認しないといけないけど、怪我をしてお腹も空いているのでユキちゃんが治療して、シロちゃんがアイテムボックスからヤギの乳を取り出してお皿に入れて飲ませていました。
 ユキちゃん用に取っておいたものだそうです。
 子猫はよほどお腹が空いていたのか、勢いよくヤギの乳を飲んでいました。
 そして、お腹がいっぱいになったところで、シロちゃんたちがなんでここにいたのかを聞きました。

「親といたところを、他の動物に襲われたんだって。それで、全速力で逃げてきたみたいです」
「おお、大型のオオカミなどに狙われることもあるぞ。それに、これだけ山から離れると、どこに親がいるか分からないぞ」

 おじいさんも、もう親元に戻るのは難しいのではと言っていました。
 すると、ユキちゃんとピーちゃんが子猫の側に寄り添いました。

「アオン!」
「ピィ!」

 自分たちも助けられたから、この子猫のことを助けたいんだよね。
 それに、シロちゃんも子猫のことを気にかけていました。
 えっ、なになに?

「あの、シロちゃんがムギちゃんって名前をつけちゃいました。収穫前の麦の色に毛並みが似ているからだそうです……」

 こうなると、もう見捨てる訳には行かないですね。
 ムギちゃんはだいぶ疲れているので、魔法袋からバスケットを取り出してタオルを敷いて寝かせることにしました。
 というか、もうムギちゃんはすやすやと寝ていますね。
 ということで、僕たちに新しい仲間ができました。
 その後は無事に子爵領まで着いたけど、その間何故かムギちゃんはバスケットから抜け出してジェシカさんの膝の上でゴロゴロとしていました。
 うん、僕がずっと勉強していたからだと思いたいです。
 にこりとしながらムギちゃんを撫でるジェシカさんが、ちょっと羨ましいです。
 そして、定時報告で新しい仲間ができたと伝えたら、ギルバートさん経由で家族が早く見てみたいと返信がありました。
 ムギちゃんなら、きっとみんなメロメロになるはずです。
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