上 下
492 / 515
第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百八十七話 ヨーク伯爵領に到着

しおりを挟む
 旅も四日目に入ります。
 今日は天気もとても良くて、雨も夜のうちに上がったみたいです。
 いよいよ、中継地点でもあるヨーク伯爵領に到着します。
 ブラウニー伯爵から当主の治療の依頼を受けているけど、いったいどんなところなのかな?
 そんなことを思っていたら、定時連絡で色々な人から教えて貰いました。

「えーっと、二人の子どもは僕と同じくらいで、とても性格が良く仲が良い。仲が悪いのは、正妻と側室の方だという」

 チャーリーさんから連絡をもらったけど、子どもは仲いいのに親が仲悪いのは駄目だよね。
 それに、ヨーク伯爵は軍人みたいに体を鍛えているので、そう簡単に意識不明にはならないはずだそうです。
 部隊長さんもヨーク伯爵のことを知っているけど、スキンヘッドだけど背が高くて筋肉ムキムキの凄い人だそうです。
 うーん、何があったんだろうか?
 そのヨーク伯爵領は補給をする中継地点でもあるので、お昼前には到着するそうです。
 勉強をしながら考えていたけど、貴族服を着て対応しないといけないので馬車の中で着替えました。

「おおー、ここがヨーク伯爵領なんだ。人がいっぱいで栄えているね!」
「アオン!」

 順調に馬車は進んでいき、ヨーク伯爵領に到着しました。
 街道沿いの主要領地なので人も荷馬車もとても多く、町は活気に溢れていました。
 そんな町の中をゆっくりと進んでいき、僕たちが泊まる宿に到着しました。
 思ったよりも大きい宿ですね。
 とりあえず、無事にヨーク伯爵領に到着しましたと定時連絡を入れます。
 すると、陛下から返信がありました。

「なになに? 『ブラウニー伯爵がレオに依頼した件を格上げする。余の名で、ヨーク伯爵の治療と原因追求を命ずる』って、とんでもないことになっちゃったよ……」

 部隊長さんにも見せたけど、命令だから仕方ないねと言っていました。
 その代わり、シロちゃんたちがやる気満々にアップを始めています。
 あの、やりすぎないようにね。
 ジェシカさんも、当然だと言わんばかりについてくるそうです。
 さささっと昼食を食べて、護衛の兵というか宿に残る兵を除いて全員でヨーク伯爵家に向かいました。
 みんな、とってもやる気満々なのが怖いですね……

「皆さま、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 屋敷の玄関に入ると、執事が恭しく出迎えてくれました。
 僕たちも、執事の後をついていきながら屋敷の中に入ります。

 もわーん。

「キュー、キュー……」

 その瞬間、とんでもない香水の臭いが漂ってきました。
 思わず腕で鼻を覆ってしまうレベルで、鼻がいいユキちゃんは既に涙目モードです。
 そして、僕たちの前に横にとても大きい女性が二人立っていました。
 髪の毛に何だか良く分からない飾りがたくさんついてあって、ドレスも金ピカな刺繍がしてあります。
 更に、全身これでもかという程のアクセサリーを身に着けています。

「ようこそヨーク伯爵家へ。正妻の私が、黒髪の天使様のご来賓を歓迎しますわ」
「ふふ、側室の私こそが黒髪の天使様を案内するに相応しいですわ」
「出しゃばらないで下さるかしら?」
「そちらこそ、引っ込んでくれないかしら?」

 あの、何で歓迎しながら喧嘩を始めるんですか?
 僕たちも、思わずぽかーんとしちゃいました。
 すると、部隊長さんが一歩前に出ました。

「歓迎されるのはとてもありがたいが、我々は畏れ多くも陛下より調査の命を預かっている」
「「げっ!」」

 僕が通信用魔導具に書かれている陛下からの命令を見せると、目の前の女性二人が驚愕の表情に変わりました。
 それとともに、女性二人を兵が取り囲みました。

「陛下からの命である。応接室にて待機して貰います」
「従わなければ、陛下の命令違反とみなします」
「「ぐっ……」」

 二人は、かなり悔しそうな表情をしていました。
 うん、この時点で何か事情を知っているみたいですね。
 その間に、僕は執事さんの先導で動き始めました。
 すると、ヨーク伯爵の寝室の前で二人の男の子が僕たちを待っていました。
 緑髪の坊ちゃん刈りで、双子にも見えるほどそっくりですね。

「黒髪の天使様、お父様を助けて!」
「お父様、お母様に毒を飲まされたの!」

 涙目で僕に助けを求めてきたけど、まさかの展開に僕もびっくりです。
 でも、部隊長さんはこの事態を予測していたのか、とても冷静ですね。
 とにかく治療をしないといけないので、ヨーク伯爵の寝室に入りました。
 すると、そこには如何にも体調が悪そうな大きな男性がベッドで寝ていました。
 部屋の中には兵がいて、ヨーク伯爵を守っていました。
 先に、ヨーク伯爵を鑑定します。
 すると、驚愕の結果が分かりました。

「やっぱり毒に侵されています。しかも、二種類の毒です」
「そ、そんな……」
「お父様、しっかりして!」

 もう二人の子どもは、ヨーク伯爵にすがるようにしていて涙が止まりません。
 早く治療しないとと思い、僕たちは魔力を溜め始めました。

「ユキちゃんも、解毒魔法を使ってね。僕とシロちゃんで、全力の回復魔法を放つよ」
「アオン!」

 ユキちゃんも、任せろと張り切っています。
 では、さっそく回復魔法を放ちましょう。

 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!

「わあ、凄い光だよ!」
「これが、黒髪の天使様の魔法……」

 今日はユキちゃんも魔法を放っているので、いつもよりもたくさんの魔法陣が出現しています。
 手応えバッチリだったけど、果たしてどうでしょうか?

「うっ、うう……」
「「お父様!」」

 ヨーク伯爵は、無事に意識を取り戻しました。
 直ぐに目覚めるなんて、流石体を鍛えているだけありますね。
 二人の子どもも、ヨーク伯爵に抱きついて嗚咽を漏らしていました。
しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。