小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第九章 久々のセルカーク直轄領

第五百七十五話 両親の死

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 カリカリカリ、カリカリカリ。

「ふう、今朝はこのくらいにしておこう。じゃあ、今日は軍の施設で治療だね」
「アオン!」
「ピィ」

 夜会から一ヶ月が経ちました。
 僕は毎朝の訓練後に、冒険者学校の入学テストをしていました。
 三十分くらいだけど、コツコツとやったほうがいいとターニャさんからも言われています。
 こうしてテキストを見ていると、冒険者としての基礎を勉強していなかったなあと改めて実感しました。
 冒険者登録した時の冊子もずっと読み返しているけど、意外と覚えていないことがたくさんあった。
 そう思うと、僕はまだまだ弱々な冒険者なんだね。
 そう思いながら、僕たちは食堂に向かいました。

「レオ君は、今日は一日軍の施設に行く予定よね?」
「はい、一日治療する予定です」
「そう、気をつけてね」

 もぐもぐと朝食をたべながら、モニカさんの質問に答えました。
 治療といっても、軍の施設での治療と新人兵の訓練の治療の二つがあります。
 今日はマイスター師団長さんも訓練を見に来るそうなので、どんなお話ができるかとっても楽しみです。

「レオ君は、もう朝の勉強を終えたのよね。他の人たちも、勉強を頑張りましょう」
「「「えー」」」

 あらら、ターニャさんがウェンディさんたちに声をかけたら、ブーイングみたいな声が上がっちゃったよ。
 僕が勉強を頑張っているので、負けずに頑張りましょうってことになりました。
 がっくりとしているみんなを尻目に、僕たちは馬車に乗って軍の施設に向かいました。

 シュイン、ぴかー。

「ふう、これで大丈夫ですよ。リハビリ頑張って下さいね」
「レオの魔法は相変わらずすげーな。男爵様になっても治療に来てくれるし、すげー助かるぞ」

 大部屋に入院している兵を治療しているけど、どうも僕が法衣男爵になったら治療に来なくなると思っていたみたいです。
 僕はそんなことはないなと思っているし、特別治療班で一緒だった人たちも定期的に治療しているので治療が滞ることはないです。
 こうして午前中治療を進めて、昼食の時間になりました。
 軍の施設で治療する時は食堂で食べることが多く、教会の施設で治療する時はお弁当を作ってもらいます。

「レオ様、飲み物のお代わりは如何ですか?」
「もぐもぐ、ジェシカさんお願いします」
「畏まりました」

 相変わらずジェシカさんがそばにいてくれるので、僕もとても助かります。
 微笑ましい光景だと食堂にいる兵がニヤニヤしているけど、ジェシカさんはとっても腕のいい侍従だからとっても助かります。
 そして、昼食を終えて午後の訓練で怪我をした兵の治療を頑張ろうと立ち上がった時でした。
 僕に訓練担当の兵が話しかけてきました。

「レオ君、訓練場に行く前に会議室に行ってくれ。マイスター師団長様が、レオ君に話があるという」

 うーん、いったい何だろうなと思いながら僕たちは会議室に向かいました。
 すると、マイスター師団長さんの他に、何故かギルバートさんも会議室の中にいました。
 勧められるがままに席に座ると、マイスター師団長さんが開口一番ビックリすることを話しました。

「レオ君、忙しいところ済まないね。レオ君に話さないといけないことがある。昨日、昨年の犯罪を起こして強制労働刑になったものの情報が更新された。そうしたら、レオ君の両親が病気になっていたんだ」
「えっ……」

 突然のことに、僕はビックリしてしまった。
 まさか、あの両親が死ぬなんて。
 僕を商人に売った罪で服役していたのは知っていたけど、まさか死ぬとは思わなかった。
 思わず呆然としちゃったけど、一度目をつぶりながら深呼吸をして気持ちを整えました。
 そんな僕の様子を見てから、マイスター師団長さんが話を続けました。

「どうも、捕縛された時点でお酒の飲み過ぎで相当体調が良くなかったらしい。強制労働刑も体調に合わせたものに変えたらしいが、それでも駄目だったという。ポーションなどを飲ませていたらしいが、昨年ほぼ同タイミングで病死したらしい」
「その、僕が売られる前から一日中お酒を飲んでいたので、今思うといつ体を壊してもおかしくなかったです」
「恐らく、レオ君の治療でも助からなかった可能性が高いだろう。レオ君の魔法はとんでもなく凄いが、決して万能ではないということも知っているはずだ」

 確かに僕とシロちゃんの全力魔法でも治せなかった人がいるので、もしかしたら両親でも治せなかったのかもしれない。
 それでも、ちょっと複雑な気持ちになりながらも話の続きを聞きました。
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