小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第八章 帝国との紛争

第七百三十五話 帝国兵が逃げなかった理由

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 数日間は戦闘も行われず、色々な情報収集に専念することになりました。
 治療班も作業を終えて、やる事は日々の訓練で怪我をした人を治療するだけです。
 兵も、再び戦闘があるかもしれないので引き続き厳しい訓練を続けていました。
 慢心がないからこそ、王国兵はとっても強いんだね。
 すると、ビクターさんがある事を教えてくれました。

「レオ君と、後はアイリーンもだな。身体能力強化魔法を使った魔法使いを相手にしているから、以前と比較しても兵が物凄く強くなっている。特に、防御面で著しい向上が見られているぞ」

 うーん、僕としてはいつもの訓練のついでに兵と手合わせを行っていただけなんだよね。
 それに、僕よりもアイリーンさんの方が剣技も強いし。
 でも、みんなの力になれたのならとっても嬉しいです。
 そして、ナンシー侯爵とビクターさんの交代要員も国境の施設に向かっているそうです。
 それまでに、無事に戦闘が終われば良いなって思っていました。
 そんな中、またもや僕とアイリーンさんが司令官室に呼ばれました。

「兵が死に物狂いで戦ってきた件だが、ちょっと酷いことが分かった。どうやら、あの自分勝手な司令官から、このまま敗戦したまま帰ったら家族もろとも死刑にすると言われていたらしい」
「そんな、酷すぎます……」
「もちろん普通はありえないし、司令官を尋問したら狂言だって分かった。だが、それで多くの帝国兵が命を落としたことにもなったし、司令官が保身のために何でもやった事にもなる。もちろん、余すことなく外交ルートで帝国側に伝えたがな」

 ハーデスさんも、もちろん他の人もやりきれない思いでいました。
 結局嘘をついてまでの総攻撃は大失敗に終わり、帝国兵に多くの死傷者が出ている。
 でも、今はまだ戦闘中の状態なので、王国側としては何もできない。
 シロちゃんが治療薬を全く奪っていないのが、せめてもの救いです。

「まあ、何にせよ王国としては粛々と準備を整えるだけだ。幸いなことに物資も全く問題ないし、冬を越せる準備も整えている。兵がいてこそ部隊が動く事ができる、その事を忘れてはならない」

 ハーデスさんを始めとして、王国側の軍の偉い人は兵のことを大切にしている。
 だからこそ、兵もその思いに応えようとしているし士気もとても高い。
 どうして帝国側は兵をないがしろにするのか、全く理解できなかった。

「帝国は、王国以上に特権意識が強い。兵は平民が殆どだから、上位層にとっては死んで当たり前って考えも持っている。兵にとっては、たまったもんじゃない」

 とはいえ、王国にもゴルゴン侯爵のように自分勝手な勢力がいたのは確かです。
 帝国にはゴルゴン侯爵みたいな人がもっと多いって思うと、国の政治はきちんとできているかとっても疑問です。
 でも、他国のことだから僕があーだこーだ言っても仕方ないですね。
 話はこれで終わりみたいなので、僕は防寒用魔導具の魔石に魔力を充填する作業に戻ります。

「なんとも言えないが、こうして最前線なのに冬も快適に過ごせるんだ。美味しい食事に風呂にも入れる、帝国の連中とは兵の待遇が全く違うだろう」
「帝国からの脱走兵に話を聞いたが、帝国側は本当に悲惨らしいな。食事は粗末だし、住環境も最悪、兵の士気が下がるのは当たり前だ」
「どうも、不潔な環境で病気になって死ぬ奴がいるらしい。何だかんだ言っておばちゃんたちはそういうのにとってもうるさいし、そう思うと王国の兵の死亡率がとても低い理由が良く分かる」

 作業を手伝ってくれている兵も口々に意見を言うけど、そう思うと本当に王国で良かったと思うよね。
 脱走兵用の施設も新設しているけど、日々脱走兵も増えているそうです。
 厳しいけど優しいおばちゃんの話を聞いて、思わず号泣する人もいるそうです。
 そして、治療体制が手厚いことにビックリしているという。
 順次脱走兵が集められるところに運ばれるみたいだけど、そこでも扱いは酷くありません。
 見せしめのように殺すこともないし、食事もしっかりとれるもんね。
 そのうち休戦したら捕虜交換を行うらしいけど、とにかく早く戦闘が終わって欲しいですね。
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