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第六章 バーボルド伯爵領

第三百九十二話 ユキちゃんの初めての治療

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 色々あったけど、ここからは気を取り直して治療を行います。
 集まった人も、それぞれのところに戻ります。
 昼食時に、再度大食堂に集まる事になりました。
 僕には、治療担当の兵がついてくれる事になりました。
 大部屋での治療なので、ユキちゃんも一緒に治療します。

「おはようございます。じゃあ、治療をしますね。ユキちゃん、治療のやり方を教えてあげるね」
「アオン」
「ははは、元気なコボルトだな」

 ユキちゃんもやる気満々で、僕の側で治療の様子を見ています。
 左腕を骨折した軍人さんも、笑いながらユキちゃんの頭をなでなでしていました。
 僕の治療速度が遅くなっちゃうけど、その分はシロちゃんが張り切って治療していくそうです。
 では、さっそく治療を始めます。

「最初に、治療する人に軽く魔力を流します。すると、体の悪いところが返ってきます」
「オンオン」

 シュイン。

「えっと、左腕だけじゃなくて腰も悪いですね」
「おお、流石は黒髪の魔術師だ。良く分かったな」
「じゃあ、ユキちゃんもやってみようね」
「アオン!」

 シュイン。

 ユキちゃんも、僕が怪我を確認した軍人さんに魔法をかけてうんうんと頷いていました。
 それでは、実際に治療を行います。

「悪いところが確認できたら、悪いところを治すイメージで回復魔法をかけます」
「アウアウ」

 ユキちゃんも頷いたところで、軍人さんに回復魔法をかけます。
 僕も久々に説明しながら魔法を使うから、結構緊張しています。

 シュイーン、ぴかー。

「おお、すげーな。痛いのが一気に楽になったぞ!」
「元気になって良かったです。これで治療が終わりです」
「アオン!」

 無事に説明できたので、今度はユキちゃんが治療を行います。
 右手の指を複数骨折している人ですね。

「じゃあ、最初に軽く魔法をかけます」
「オン」

 ユキちゃんは、怪我をしている軍人さんに軽く魔法を流しました。
 うん、どこが悪いか分かったみたいですね。

「アンアン」
「えっ、指だけじゃなくて膝も悪いの?」
「アン!」
「ほほー、中々やるな。訓練で膝を痛めちまったんだよ」

 おお、ユキちゃんはいきなり見た目だけじゃない怪我も見つけたよ。
 では、ユキちゃんの初めての回復魔法です。

 シュイン、ぴかー。

「おっ、折れた指も膝も痛くないぞ。お前スゲーな」
「アン!」

 怪我も無事に治って、軍人さんが満面の笑みでユキちゃんの頭を撫でていました。
 念の為に僕が確認しても、バッチリ怪我が治っています。
 うん、やっぱりユキちゃんは魔法使いのセンスがありますね。
 では、どんどんと治療していきましょう。
 時々、僕だけじゃなくてシロちゃんもユキちゃんに魔法の使い方を教えていました。
 こうしてみんなで分担した結果、前回よりも多い九部屋の大部屋の治療を終えました。

「話は聞いたけど、小さいのにとっても頑張ったんだね」
「アオン!」

 昼食時に再びマイスター師団長さんと一緒になったけど、ユキちゃんはマイスター師団長さんだけでなく色々な人に褒められてとっても上機嫌です。
 ご褒美のお肉定食を、手を器用に使ってフォークを持って食べていました。

「しかし、今日で大部屋の殆どを治療してしまったとは。一か月を予定していた治療スケジュールが十日間で済んでしまったぞ」
「沢山の人が元気になってくれれば、僕としてはとっても嬉しいです。それに、無理して急いでいる訳でもないですし、魔力もまだまだいっぱいありますよ」
「いやあ、それがレオ君の恐ろしいところだ。毎日訓練を怠らないでいるから、既に王国でも有数の魔法使いになっている」

 マイスター師団長さんの言葉に、周りの人もうんうんと頷いていました。
 うーん、僕はそこまで凄い魔法使いじゃないと思うけどね。
 こうして、昼食を食べてバッツさんとの訓練をして修理部へ向かいました。
 しかし、ユキちゃんはちょっと疲れちゃったみたいです。

「フシュー、フシュー」

 最初は頑張って魔石への魔力充填をしていたけど、眠くなったので椅子の上で丸まってお昼寝をしていました。
 ユキちゃんは、まだ小さな子どもだから仕方ないよね。

「それを言うなら、レオもまだ小さい子どもだぞ。昼寝したくなったら遠慮なくしていいぞ」
「僕はもう直ぐ七歳になりますよ。だから、もうお昼寝はしません!」
「ははは、そりゃ悪かったな。でも、レオの見た目は五歳だぞ」

 微妙にバッツさんが失礼な事を言っていたけど、僕はもうお昼寝を卒業しました。
 たまに寝ちゃう事はあるけど、お仕事中はお昼寝はしませんよ。
 因みにユキちゃんは二時間ほどお昼寝をして、その後はまた魔石に魔力を注入する作業を再開しました。
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