小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
295 / 589
第六章 バーボルド伯爵領

第三百九十話 新しいお友達

しおりを挟む
 お昼前になると、今度は冒険者風の人が多く並んできた。
 冒険者は朝早く依頼を受けにいっていたから、午前中は数が少なかったんですね。
 そして、僕の二つ名を知っている冒険者もいました。

「おっ、その姿は黒髪の魔術師か。無料治療を行うって聞いたけど、とんでもない治癒師が無料治療を行っているな」
「僕の事を知っているんですね」
「冒険者の中じゃ、黒髪の子どもはとても有名だからな」

 中年男性の冒険者が膝の治療を受けながら話してきたけど、やっぱり黒い髪の子どもって非常に珍しいんだって。
 僕も今まで他の髪が黒い人には会った事はないし、確かに珍しいんだね。
 他の人も僕の存在にビックリした人がいたけど、概ね治療は順調に進んでいきます。
 すると、僕もビックリする事が。

「あの、この子を治療できますか?」
「クゥーン……」

 女性の冒険者が連れてきたのは、中々の大きさの首にバンダナを巻いたオオカミでした。
 オオカミは前足を怪我していて、ひょこひょこと辛そうに歩いていました。
 僕は、直ぐにオオカミに魔法を流しました。

 シュン。

「あっ、骨にヒビが入っています。これは痛いですよね。直ぐに治療しますね」
「黒髪の魔術師様、お願いします」

 怪我をしていれば、人も動物も関係なく痛いよね。
 僕は、オオカミが元気になるように回復魔法をかけます。

 シュイーン、ぴかー!

「これで骨も大丈夫です。細かい傷もあったので、全部治しましたよ」
「ウォン、ウォン!」
「わあ、こんなに元気になって。本当にありがとうございます!」

 オオカミもとても元気になって、尻尾をブンブンと勢いよく振っています。
 お姉さん曰く、このオオカミは赤ちゃんの頃から育てていたパートナーらしく、もう家族同然らしいです。
 そのオオカミが怪我をしたら、お姉さんも心配するよね。
 お姉さんは、僕に何回も頭を下げていました。
 僕も、無事に回復してくれてとても嬉しいです。
 その後も、何人か従魔を連れてきた冒険者に出会いました。
 馬を連れてきた人にはビックリしたけど、僕とシロちゃんは治療ができればどんな人でも動物でも治療します。
 こうして、僕たちもお昼休憩の時間になりました。

「レオ君は、従魔にも親身になって治療していて、本当に優しいわね」
「本当にそうね。傷ついたものなら、関係なく治療しているわ」
「とても素晴らしい精神です。別け隔てなく隣人を愛せよという、まさに神の教えを体現しておりますな」

 イストワールさんとシャンティさん、それに司祭様から従魔や馬を治療したのをかなり褒められちゃった。
 僕としては、いつも通りに治療したと思っていたけどね。
 シロちゃんも僕の意見に同意したみたいで、うんうんと頷いていました。
 すると、ここでトラブル発生です。
 何かを抱えた守備隊員が僕達のところにやってきました。
 抱えているのは、ちょっと汚れているけど真っ白なコボルトでした。

「普段ならコボルトは討伐対象なのですが、敵意もなく門の所でふらふらと倒れたのでこちらに連れてきました」
「まあ、まだ子どものコボルトなのね。それにしても、珍しい毛色だわ」

 守備隊員に連れてこられたコボルトはとても小さくて、イストワールさんもビックリしていました。
 急いで治療をしないと。
 僕は小さなコボルトに魔法をかけました。

「わあ、痩せている上に全身に打撲の跡がありますよ」
「きっとお腹も空いているのね。炊き出しのを分けて貰ったわ」

 背中に特に打撲の跡があったので、直ぐに治療して生活魔法で毛並みも綺麗にします。
 そして、美味しそうな匂いでコボルトが目を覚ましました。

「クンクンクン。パクパクパク」
「わあ、一心不乱に食べているね。よっぽどお腹が空いていたんだ」
「何かしらの原因で、群れを追い出されたのね」

 うつわに盛られた野菜たっぷりの炊き出しのスープを、コボルトは一心不乱に食べていました。
 そんなコボルトの頭を、シャンティさんがやさしく撫でていました。
 コボルトが落ち着くまで、僕たちは様子を見守っていました。

「ふむふむ、毛色が違うからおかしいって言われてイジメられて群れを追い出されたんだね」
「アオン……」
「それで、お腹が空いて気絶しちゃったんだ」
「オン……」

 シロちゃん通訳を入れてもらいながら、コボルトから事情を聞きます。
 たまたま毛色が違うだけで、大変な目に合っちゃったんだ。
 だから、まだ小さいのに一人きりなんだね。

「もっと強くなりたいんだね。じゃあ、僕とシロちゃんと一緒にいる?」
「アン!」

 このコボルトは、イジメられていたから強くなりたいんだね。
 だったら、僕もシロちゃんも応援してあげるよ。
 じゃあ、名前をつけてあげないと。
 うーん、何が良いかな?

「とっても綺麗な白い毛並みだから、ユキちゃんって名前はどうかな?」
「アオン!」

 女の子だし名前も気に入ってくれたので、今日から僕たちの新しい友達です。
 えーっと、さっきオオカミを連れていた人のように、赤いバンダナを巻いてあげます。
 これでよしっと。
 更に、シロちゃんが凄いことを教えてくれました。

「あのね、シロちゃんがユキちゃんには水魔法と回復魔法の力があるんだって。だから、一緒に魔法の勉強をしようね」
「オン!」

 生まれつき魔力が強いから、もしかしたらユキちゃんの毛並みが他のコボルトと違うのかも。
 頑張れば、ユキちゃんはスーパーコボルトになれるかもね。

「レオ君は、やっぱり優しいね。一人ぼっちになったコボルトを助けてあげるなんて」
「僕も親に見捨てられたので、この子の気持ちが分かるんです。だから、今度は僕が助けて揚げなくちゃって思ったんです」
「辛い事があったのに、レオ君は真っ直ぐに育ったのね。だからこそ、ユキちゃんはレオ君に懐いたのかもね」

 シャンティさんが僕とユキちゃんの頭を撫でていたけど、誰だって一人ぼっちは淋しいよね。
 こうして、新たな友達と共に僕とシロちゃんは治療を再開しました。
 時折、シロちゃんがユキちゃんに魔法の使い方を教えてあげました。
 そして、僕が動物にも分け隔てなく治療するという新たな教会の逸話が誕生していました。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。