小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

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第六章 バーボルド伯爵領

第三百七十話 久々の再会です

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 バーボルド伯爵領への旅も、早くも三日目に入りました。
 今日も朝早く起きて、軽く訓練をしてから旅の支度をします。

「シロちゃん、今日はどんな街に行くのかな? 何だか楽しみだね」

 早ければ明日にはバーボルド伯爵領に着くけど、やっぱり旅の途中で行く街もどんなところなのかとっても楽しみです。
 僕とシロちゃんは、ちょっとワクワクしながら朝食のパンを食べていました。

 パカパカパカ。

「うーん、今日もお空に雲がいっぱいだね。もしかしたら、雪が降ってきちゃうかもしれない」

 僕達を乗せた馬車は、定刻通りに男爵領の馬車乗り場を出発しました。
 今日も、沢山の人が馬車に乗っているよ。
 僕がお空を見ながらシロちゃんと話をしたけど、シロちゃんは雪と聞いてテンションが上がっていました。
 シロちゃんもサンダーランド辺境伯領で何回か雪を見ていたけど、その度にテンションが上がっていたっけ。
 雪に喜ぶスライムってのも、何だか可愛いよね。
 でも、外は寒いのでシロちゃんは今日も僕の服の中に入ってぬくぬくしています。

 ちらちらちら。

「あっ、ちょっとだけ雪が降ってきたよ」

 僕が空から降ってきた雪を見つけたら、シロちゃんがぴょんと服の中から僕の頭にとびのりました。
 そして、僕の頭の上で雪を見てぷよぷよと嬉しそうに震えていました。

「わあ、スライムが踊っているよ!」
「このスライムはね、雪を見て喜んでいるんだよ」
「そーなんだ!」

 馬車に同乗していた僕よりも小さな女の子が、僕の頭の上でくねくねしているシロちゃんを見て喜んでいました。
 確かに、今のシロちゃんは僕の頭の上で踊っている様に見えるね。
 シロちゃんは、ひとしきり雪を堪能したら再び僕の服の中に入ってきました。
 降っている雪も少しだけだったし、シロちゃんも寒くなっちゃったみたいです。

 パカパカパカ。

 その後も馬車は問題なく街道を進んでいき、無事に目的地の子爵領に到着しました。
 今日は雪も降るくらい寒かったから、動物も魔物もぬくぬくとしていたのかもしれないね。
 僕とシロちゃんは、馬車乗り場から移動して今夜泊まる宿を探しに街を歩きました。

「えーっと、今日はどんな宿に泊まろうかな? シロちゃん、良い宿ってありそう?」

 僕とシロちゃんは、辺りをキョロキョロと見回しながら宿を探していました。
 王都に近くなったからなのか、色々な種類の宿が建っています。
 迷った時はシロちゃんの勘に頼る事にしているので、僕はシロちゃんが選んだ感じの良い宿に入りました。

「すみません、一泊お願いします」
「あら、可愛い坊やね。いま鍵を準備するから、ちょっと待っていて」

 宿に入ると、若いおかみさんが僕とシロちゃんを出迎えてくれました。
 部屋は一階にある一室で、二段ベッドが置いてある簡易的な部屋です。
 部屋の確認を終えたら、おかみさんに夕食の事を聞いてみました。

「うちの宿の隣に、とても良い食堂があるわよ。冒険者も多く利用しているから、レオ君にも合うかもね」

 という事で、さっそくお勧めしてくれた宿のお隣の食堂に向かいました。
 酒場にもなっていて、とっても活気のある食堂です。
 僕とシロちゃんは、カウンター席に座りました。

「いらっしゃい、可愛いお客さんだね」
「えーっと、お肉定食を半分のサイズでできますか? あと、ジュースもお願いします」
「直ぐに準備をするから、ちょっとまってな」

 食堂のおじさんが、僕の注文を聞いたらあっという間に料理を始めました。
 物凄く手際が良くて、如何にも職人さんって感じだよ。

 ドン。

「あいよ、いっぱい食べろよ」

 少しして出てきたお肉定食を、僕はシロちゃんと一緒に頬張ります。
 うーん、お肉の旨みに加えてかかっているタレもとっても美味しいよ。
 シロちゃんと一緒にお肉定食を完食したら、何だかテーブル席の方が何だかざわざわしているよ。
 ジュースを飲みながら何だろうと、騒ぎを起こしているテーブルの方に視線を向けました。

「何だと! 俺があの黒髪の魔術師と依頼を受けたってのは嘘だっていうのかよ!」
「嘘に決まっているだろうが。レオは指名依頼ばっかりだから、他の冒険者と行動する事は殆どないぞ」
「そうだな。下手な嘘をついたら、レオのバックについている大貴族が黙っていないだろうな」

 あれ?
 前にも何回かあった僕と一緒に冒険をしたという嘘を言っている冒険者の件だけど、嘘をついている冒険者に同席している冒険者が的確な指摘をしている。
 そして、僕とシロちゃんはそのテーブルの方に歩いて行きました。

「あっ、おじさん久しぶりです!」
「おお、レオか。大きくなったな」
「ははは、期せずして本物が目の前に現れたな」
「はっ?」

 的確な指摘をしていた冒険者は、アマード子爵領からコバルトブルー直轄領までユリアさんとイリアさんと一緒に旅をした冒険者でした。
 懐かしい人に会えて、僕もシロちゃんもとっても嬉しくなっちゃいました。
 一方で、嘘をついていた冒険者は何が何だか分からない表情をしていました。

「レオの噂は良く聞いていたぞ。俺らは、王都や周辺の領地に拠点を移して活動していたんだ」
「実はな、レオの知り合いって事で俺らにもすり寄ってくる馬鹿な冒険者が増えたんだよ。だから、思い切って拠点を変更したんだ。まあ、馬鹿をした冒険者は別件で捕まっていたけどな」

 何故ここで出会ったのかを教えてくれたけど、コバルトブルーレイク直轄領で馬鹿をした冒険者が他にもいたんだ。
 本当に悪い冒険者っているんだね。
 ここで、嘘をついていた冒険者が僕の正体に気が付いたみたいです。

「えっ、えっ、もしかして本物の黒髪の魔術師?」
「えーっと、周りからそう言われています。これが証拠の冒険者カードです」
「ほ、本物だ……」

 嘘をついていた冒険者は、僕の冒険者カードを見て思わず固まってしまいました。
 そして、それ以降は黙り込んでしまいました。
 逃げようとしても、逃げられない状況になってしまったからです。

「レオ、今まで何があったか教えてくれ。きっとレオの事だから、とんでもない事をしたんだろうな」
「ぼ、僕はそんなに凄い事はしていませんよ」
「ははは、レオの普通は普通じゃないからな」

 僕とシロちゃんもテーブル席に座ると、沢山の冒険者が僕達の周囲に集まってきました。
 そして、僕がどうしていたかを話す事になりました。
 因みに、僕とシロちゃんが食べたお肉定食は他の冒険者が話を聞かせてくれたお礼として払ってくれました。
 そして嘘をついていた冒険者は所持金が殆どなくて、食い逃げ犯として子爵領の守備隊の人に連行されました。
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