小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
275 / 584
第六章 バーボルド伯爵領

第三百七十話 久々の再会です

しおりを挟む
 バーボルド伯爵領への旅も、早くも三日目に入りました。
 今日も朝早く起きて、軽く訓練をしてから旅の支度をします。

「シロちゃん、今日はどんな街に行くのかな? 何だか楽しみだね」

 早ければ明日にはバーボルド伯爵領に着くけど、やっぱり旅の途中で行く街もどんなところなのかとっても楽しみです。
 僕とシロちゃんは、ちょっとワクワクしながら朝食のパンを食べていました。

 パカパカパカ。

「うーん、今日もお空に雲がいっぱいだね。もしかしたら、雪が降ってきちゃうかもしれない」

 僕達を乗せた馬車は、定刻通りに男爵領の馬車乗り場を出発しました。
 今日も、沢山の人が馬車に乗っているよ。
 僕がお空を見ながらシロちゃんと話をしたけど、シロちゃんは雪と聞いてテンションが上がっていました。
 シロちゃんもサンダーランド辺境伯領で何回か雪を見ていたけど、その度にテンションが上がっていたっけ。
 雪に喜ぶスライムってのも、何だか可愛いよね。
 でも、外は寒いのでシロちゃんは今日も僕の服の中に入ってぬくぬくしています。

 ちらちらちら。

「あっ、ちょっとだけ雪が降ってきたよ」

 僕が空から降ってきた雪を見つけたら、シロちゃんがぴょんと服の中から僕の頭にとびのりました。
 そして、僕の頭の上で雪を見てぷよぷよと嬉しそうに震えていました。

「わあ、スライムが踊っているよ!」
「このスライムはね、雪を見て喜んでいるんだよ」
「そーなんだ!」

 馬車に同乗していた僕よりも小さな女の子が、僕の頭の上でくねくねしているシロちゃんを見て喜んでいました。
 確かに、今のシロちゃんは僕の頭の上で踊っている様に見えるね。
 シロちゃんは、ひとしきり雪を堪能したら再び僕の服の中に入ってきました。
 降っている雪も少しだけだったし、シロちゃんも寒くなっちゃったみたいです。

 パカパカパカ。

 その後も馬車は問題なく街道を進んでいき、無事に目的地の子爵領に到着しました。
 今日は雪も降るくらい寒かったから、動物も魔物もぬくぬくとしていたのかもしれないね。
 僕とシロちゃんは、馬車乗り場から移動して今夜泊まる宿を探しに街を歩きました。

「えーっと、今日はどんな宿に泊まろうかな? シロちゃん、良い宿ってありそう?」

 僕とシロちゃんは、辺りをキョロキョロと見回しながら宿を探していました。
 王都に近くなったからなのか、色々な種類の宿が建っています。
 迷った時はシロちゃんの勘に頼る事にしているので、僕はシロちゃんが選んだ感じの良い宿に入りました。

「すみません、一泊お願いします」
「あら、可愛い坊やね。いま鍵を準備するから、ちょっと待っていて」

 宿に入ると、若いおかみさんが僕とシロちゃんを出迎えてくれました。
 部屋は一階にある一室で、二段ベッドが置いてある簡易的な部屋です。
 部屋の確認を終えたら、おかみさんに夕食の事を聞いてみました。

「うちの宿の隣に、とても良い食堂があるわよ。冒険者も多く利用しているから、レオ君にも合うかもね」

 という事で、さっそくお勧めしてくれた宿のお隣の食堂に向かいました。
 酒場にもなっていて、とっても活気のある食堂です。
 僕とシロちゃんは、カウンター席に座りました。

「いらっしゃい、可愛いお客さんだね」
「えーっと、お肉定食を半分のサイズでできますか? あと、ジュースもお願いします」
「直ぐに準備をするから、ちょっとまってな」

 食堂のおじさんが、僕の注文を聞いたらあっという間に料理を始めました。
 物凄く手際が良くて、如何にも職人さんって感じだよ。

 ドン。

「あいよ、いっぱい食べろよ」

 少しして出てきたお肉定食を、僕はシロちゃんと一緒に頬張ります。
 うーん、お肉の旨みに加えてかかっているタレもとっても美味しいよ。
 シロちゃんと一緒にお肉定食を完食したら、何だかテーブル席の方が何だかざわざわしているよ。
 ジュースを飲みながら何だろうと、騒ぎを起こしているテーブルの方に視線を向けました。

「何だと! 俺があの黒髪の魔術師と依頼を受けたってのは嘘だっていうのかよ!」
「嘘に決まっているだろうが。レオは指名依頼ばっかりだから、他の冒険者と行動する事は殆どないぞ」
「そうだな。下手な嘘をついたら、レオのバックについている大貴族が黙っていないだろうな」

 あれ?
 前にも何回かあった僕と一緒に冒険をしたという嘘を言っている冒険者の件だけど、嘘をついている冒険者に同席している冒険者が的確な指摘をしている。
 そして、僕とシロちゃんはそのテーブルの方に歩いて行きました。

「あっ、おじさん久しぶりです!」
「おお、レオか。大きくなったな」
「ははは、期せずして本物が目の前に現れたな」
「はっ?」

 的確な指摘をしていた冒険者は、アマード子爵領からコバルトブルー直轄領までユリアさんとイリアさんと一緒に旅をした冒険者でした。
 懐かしい人に会えて、僕もシロちゃんもとっても嬉しくなっちゃいました。
 一方で、嘘をついていた冒険者は何が何だか分からない表情をしていました。

「レオの噂は良く聞いていたぞ。俺らは、王都や周辺の領地に拠点を移して活動していたんだ」
「実はな、レオの知り合いって事で俺らにもすり寄ってくる馬鹿な冒険者が増えたんだよ。だから、思い切って拠点を変更したんだ。まあ、馬鹿をした冒険者は別件で捕まっていたけどな」

 何故ここで出会ったのかを教えてくれたけど、コバルトブルーレイク直轄領で馬鹿をした冒険者が他にもいたんだ。
 本当に悪い冒険者っているんだね。
 ここで、嘘をついていた冒険者が僕の正体に気が付いたみたいです。

「えっ、えっ、もしかして本物の黒髪の魔術師?」
「えーっと、周りからそう言われています。これが証拠の冒険者カードです」
「ほ、本物だ……」

 嘘をついていた冒険者は、僕の冒険者カードを見て思わず固まってしまいました。
 そして、それ以降は黙り込んでしまいました。
 逃げようとしても、逃げられない状況になってしまったからです。

「レオ、今まで何があったか教えてくれ。きっとレオの事だから、とんでもない事をしたんだろうな」
「ぼ、僕はそんなに凄い事はしていませんよ」
「ははは、レオの普通は普通じゃないからな」

 僕とシロちゃんもテーブル席に座ると、沢山の冒険者が僕達の周囲に集まってきました。
 そして、僕がどうしていたかを話す事になりました。
 因みに、僕とシロちゃんが食べたお肉定食は他の冒険者が話を聞かせてくれたお礼として払ってくれました。
 そして嘘をついていた冒険者は所持金が殆どなくて、食い逃げ犯として子爵領の守備隊の人に連行されました。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。