小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
274 / 589
第六章 バーボルド伯爵領

第三百六十九話 男爵領に到着します

しおりを挟む
 翌朝、僕は宿の一室で目が覚めるとシロちゃんと一緒に朝食のパンを食べて簡単な訓練をしてから宿を出ました。
 そして、朝早いのに馬車に乗る人でいっぱいの馬車乗り場に向かいます。
 すると、守備隊の人達も待っていてくれました。

「レオ君、道中気をつけてね。本当に色々と助かったよ」
「元気で、また会いましょうね」

 僕はマックスさんと娘さんと握手して、他の隊員さんとも握手をします。
 そして、馬車に乗り込みました。
 すると、マックスさんが僕にとある事を話しました。

「この先の男爵領に入ると、街道が森に入るので魔物が出やすい。十分に気をつける事だ」

 冬でも何か出てくるかもしれないし、直ぐに討伐できるように準備しないと。
 そんな事を思っていたら、馬車の出発準備完了です。

「いってきまーす」
「「「いってらっしゃい」」」

 僕は、見送ってくれている守備隊の人達に手を振りました。
 さてさて、いよいよシークレア子爵領から別の領地に入っていきます。
 今日もちょっと寒いので、僕は上着を着込んでいてシロちゃんも服の中に入ってぬくぬくとしています。
 空も曇っていて、どんよりとしています。

「まさか黒髪の天使様と同乗できるとは」
「私達は、この上なく幸せですわ」

 お隣の男爵領に向かうシスターさんが同乗していて、僕に色々と話しかけてきました。
 元々シークレア子爵領の教会にいる人達ではないそうで、僕に初めて会ったそうです。

「黒髪の天使様の逸話を数多く聞いておりましたが、実際にはこんなにも可愛らしい男の子なのですね」
「それでいて、心優しくて魔法の名手だとか。とても素晴らしいですわ」

 な、何だか凄く褒められちゃって、僕もシロちゃんも思わず苦笑しちゃいました。
 ここで、僕の探索魔法に何かが引っかかりました。
 僕とシロちゃんは、前方の森に視線を集中しました。

「前の森から何か現れます。えーっと、数は六です」
「ちっ、現れやがったか」

 僕は御者の人に何かの存在を伝えると、御者の人も少し険しい表情になりました。
 でも、この感じは動物じゃないよ。
 僕は、直ぐに魔力を溜め始めました。

 ガサガサ、ガサガサ。

「おっ、良い獲物が現れたな」
「有り金を全部貰うぞ。ついでに、命まで貰うかな」

 前方から現れたのは、身なりの悪い六人組の男でした。
 最初から僕達からお金を奪うって話をしているし、間違いなく盗賊だ。
 僕は、溜めていた魔力を一気に開放しました。

 シュイーン、バリバリバリ!

「「「「「「ぎゃー!」」」」」」

 広範囲のエリアスタンを放つと、盗賊は叫び声をあげながら倒れました。
 上手い具合に、体を痺れさせられました。
 僕と御者さんが、馬車から降りて盗賊の方に向かいました。

「六人の大人が一撃か。こりゃすげー魔法だな」
「流石に悪い人なので、一発で動けなくしました」
「「「「「「あばばば……」」」」」」

 体が痺れて動かない盗賊を、御者の人があっという間に縛り上げていきます。
 その間に、僕は護送用の馬車を土魔法で作ります。

 シュイーン、ズゴゴゴ。

「この馬車に盗賊を乗せて、馬車で引っ張っていきましょう」
「そうだな。賞金首なのは間違いないだろう」

 前にも悪い人を土魔法で作った馬車に乗せて行ったし、もう慣れちゃったね。
 馬車に護送用の馬車を紐で繋いで、準備完了です。
 僕と御者さんは、再び馬車に乗り込みました。
 この間、シロちゃんは僕の服に入りっぱなしでぬくぬくとしていました。

 パカパカパカ。

「実際に黒髪の天使様の魔法を見ると、噂は本当だったと確信しましたわ」
「ええ、そうですわね。盗賊を一瞬にして倒して、更に土の馬車まで作るとは。しかも、あっという間でしたわ」

 馬車が出発すると、さっき僕に話しかけていたシスターさんが感動した表情で再び僕に話しかけてきました。
 な、何だかシスターさんからの圧力が凄いよ。
 途中オオカミとかを倒したりもしたけど、夕方前には無事に男爵領の領都に到着しました。
 すると、防壁の門を警備していた守備隊の人達が馬車に繋がれた護送用の馬車を見てビックリしちゃいました。

「おお、お疲れ様……って、これは何だ!」
「おお、道中盗賊が現れたけど、黒髪の天使様が一瞬にして倒したぞ」
「わ、分かりました。おい、応援を呼んでこい」

 時々盗賊がギャーギャー騒いでいたので、僕は軽く雷魔法を放っていました。
 なので、今はすっかり大人しくなっています。
 盗賊は、応援で防壁の門に来た守備隊の人達によって運ばれていきました。

「あの、何か手続きは必要ですか?」
「いや、問題ないだろう。懸賞金とかは、後で冒険者ギルド経由で支払われる」

 面倒くさい手続きとかがあったら大変かと思ったけど、そういう事もなくて助かりました。
 こうして、無事に男爵領の馬車乗り場に到着して、僕は宿を探し始めました。

「えーっと、今日はここにしようっと。食堂兼宿だって」

 ちょうど手頃な価格の宿を見つけたので、今日はここに宿泊します。
 明日の朝も早いから、夕食を食べたら早く寝ないとね。
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。