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第9話

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「直、サラダの準備できてるか?」

兄ちゃんの声に、俺は軽く手を上げた。

「完璧!飯も炊いたし油も変えて温度も確認済み。あとは悠太たちが来るのを待つだけだよ」

テーブルの上も拭いたし、床にモップもかけた。

我ながら上出来だ。

今日は悠太が会社の人たちを連れてくる。

高校時代の同級生、イチの歓迎会なんだとか。

2人が同じ会社で働くことになったっていうのも驚きだし、2人の上司がイチの従兄弟だというのも初耳だ。

世間は狭いなあ。

何はともあれ。

今回は悠太の紹介らしいから、悠太に恥をかかせないようにしないとね!

幼馴染の悠太は今でこそ背も俺と同じくらいまで伸びたし顔もきりっとしててすげえイケメンになったけど。

小さいころの悠太は体も細くて小っちゃくて、顔も女の子みたいですっごくかわいかった。

そのせいか、女の子にももちろんもててたけど男にも人気あった。

子供の頃の男って好きな子に対する態度がひねくれてるから、わざといじめたりして気を引こうとする。

悠太は素直だから本気でいじめられてると思ってすごく傷ついてた。

学年が1個下だったからずっと見ていることはできなかったけど、俺はできるだけ悠太を守ろうと思って休み時間ごとに悠太のクラスまで行って睨みをきかせてた。

その甲斐あって、だんだんと悠太がいじめられることはなくなった。

逆に友達が増えて、俺と遊ぶ時間が減ったのは良かったのか悪かったのか・・・・。




「直くん、今日はありがと」

悠太とイチが会社の人たちを引き連れてやってきて、ドリンクや前菜を一通り出し終わると悠太がカウンターへやってきた。

「いやいやこっちこそ!団体さんのご利用は大歓迎だよ!ね、兄ちゃん」

「ああ、ありがとな、悠太。直、これ持ってって」

「あ、あっちの席に先持ってくからちょっと待って―――」

「あー、俺が持ってくよ。俺たちのだよね?」

兄ちゃんがカウンターに置いた唐揚げの皿を悠太が手に取る。

「いや、お前は今日は客なんだから―――」

兄ちゃんが慌てて止めようとすると、悠太は楽しそうに笑った。

「気にしないでよ。こんな日にも2人きりで回してるんだから、少しは手伝わせて。今度またご飯食べさせてね」

「おー、お安い御用」

相手に気を使わせないような気遣い。

悠太は自然にそれができるんだ。

もちろん同僚たちにも気遣いを忘れない。

飲み物が無くなれば注ぎ、その人の手が届かないところに食べ物があれば小皿に取り分けて目の前に置く。

誰も見てなくても、さりげなくそれをやってるんだ。

ほんと、嫁さんにしたら最高―――

「直!早く持ってけって!」

「はい!!」

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