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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]
Log.67 カラクリドール
しおりを挟む「俺は古戸霧レイです!日本語は上手くないです。よろしくおねげーしやす!」
辻堂と俺が謎に対立を深める中、ハキハキとした明るい自己紹介が聞こえてくる。その目の前で千夜が苦笑いした。
「おねげーしやすって……」
「この言葉は男らしいとアニメに見たので…」
「一体何のアニメに影響を受けてるんだろうね……って、ええ?!もしかして男なの!?」
千夜が驚きの声をあげた。俺もその言葉が気になり、向き合っていた辻堂の背後に目をやる。
古戸霧レイという金髪美少女が履いているのは、どこからどう見てもズボンだった。
「俺は男ですよ。よく間違えられるですけどね」
「そ、そんなまさか……レイちゃんダメよそんな嘘ついちゃ。ほらスカートあるから……」
「なんで薪原さんは予備のスカートまで持ってるのさ!!てか初対面でよくそんな馴れ馴れしくできるね!」
「可愛いは正義」
「だとしたらあんたは悪だ!」
またまたコントが始まった。美頼はやはり声をかけられないらしく、縮こまって少し離れたところで様子を伺っている。古戸霧はというと、展開が早すぎて日本語が聞き取れていないようだ。受け取ってしまったスカートを二度見くらいした後に、疑いもせずにたずねてくる。
「これ着ると入部できますか?」
「なわけあるか」
俺はついつっこんでしまった。
──いつも通り、やはり俺らはまた椅子を円に並べて歓迎会的な何かを開くことにした。
辻堂の視線を痛いほど感じる。千夜がパック入りのオレンジジュースを片手に立ち上がった。
「では!辻堂さんと古戸霧さんの入部を祝して!乾杯!!」
「ここって飲食禁止じゃなかったかしら」
「ウチらは特別なのよ。あ、じゃがりこいる?」
辻堂の疑問には、麻尋がスナックを頬張りながら答えた。本当にこいつの普段の様子は大富豪のお嬢様のものとは思えない。
「じゃあ改めて自己紹介するわ。私は一年三組の辻堂桃羽。これでも一応警察官の一人娘よ」
「な!?すごくないそれ!!えーと、モモちー!」
今回も麻尋即席のあだ名が決まったようだ。
「じゃあ推理問答部の活動も色々専門的な面からできるかもしれないってこと?……イタッ」
そう尋ねたのは千夜だ。見てみれば、麻尋のじゃがりこに伸ばした手をつねられていた。
「ひと通りの知識ならあるから手伝えると思うわ」
ますます意味がわからなくなってきた。メールの意味もそうだし、辻堂の態度も理解できない。
俺の過去を握っていると言われても、そもそも過去を思い出せない俺には、辻堂に睨まれる理由など想像できるわけがない。ましてや警察の娘。まさか俺が犯罪を犯していたわけでもあるまいし……父親の愁が関係してるのか?
「そして俺は古戸霧レイです。モモちゃんと同じクラスです!中学生の時にアメリカからお父さんと引っ越しました。お父さんはデザイナーをやっています!」
「なんか親の職業紹介みたいになってるね」
美頼がつぶやく。相変わらず発言は少ない。美頼を見ると目があったが、すぐに目をそらされた。古戸霧の方に目線を戻すと、今度は彼の白い足が目に入る。
「履いたんだなスカート……」
「はい!!入部したいんです!!」
「誤解なんだよなあ……おい薪原責任とれ」
目を輝かせる麻尋。
「え?いいの!?よしレイちゃん結婚しよ」
「お前に頼んだ俺がバカだった」
麻尋のセリフに、古戸霧のよくわかってない笑顔。アメリカ人だからなのか、愛想が良すぎる気もする。だが男だ。
そうやってしばらく駄弁った後、タイミングを見計らって辻堂が話を切り出してきた。
「早速なんだけれど……いいかしら?実は私がこの部活に来た目的は入部だけじゃないの」
「どういうこと?」
そう口を開いたのは美頼だった。辻堂は続けた。
「私の祖父が遺したからくり人形の謎を解いて欲しいのよ。随分と優秀な探偵さんもいるみたいだから」
そう言いながらこちらを見てくる。今更ながら、彼女達のいる一年三組がキイノのクラスだったことを思い出した。
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