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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]
Log.66 アヤシイガール
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「推理問答部への入部を希望したいんだけれど……」
放課後のコンピューター室。そう言ってノックとともに入ってきたのは、身長の低い小学生。かと思いきや、胸の大きさからして小学生ではなかった。吉田希猪乃の時とは違って、彼女が高校生であることは制服を見るまでもなかった。そのツインテールは真っ白なリボンで丁寧に結われていた。
「来週から試験だから今週が部活動体験の締切日だけど……大丈夫?体験もせずに決めちゃって」
千夜が入り口で話している。こうして見ると、あいつは割とコミュ力が高い。それに比べて美頼は……。教室の隅で何やら麻尋と駄弁っている。おそらく入口側のこちらの状況は見えていないのだろう。
「ええ、とても面白そうじゃない?ちょうど自分好みの部活がなくて困っていたものだから……」
「なるほど……ならこっちもちょうどいいや!部員が減って困ってたんだよね……」
身長にそぐわずなかなかに丁寧な話し方だ。
──たった今世界中の低身長を敵に回したかもしれない。
俺がその女に目をやると、偶然なのか必然なのか、彼女もこちら側を見ていた。よくよく考えたら、俺のことを見ていた気がする。目が合ってなぜか、悪寒がした。一瞬睨まれたような……。
なんだあの冷たい目つきは。そんなことを考えていると、どこからともなく中性的な声が聞こえてきた。
「ごめんくださいモモちゃん!!遅くなってしまいまして!」
『モモちゃん』……?
少し不自然な日本語を話す声の持ち主はすぐに現れた。廊下から顔を出して新入希望の女子生徒の後ろからこちらを覗いている。ふんわりとしたショートカットは、クリーム色に近い金髪だ。背は高めで、瞳は真っ青に透き通っているのが見える。外人だろうか?
「何度言えばわかるのよ。こういう時は『ごめんなさい』。『ごめんください』だとエクスキューズミーに……あら?これって英語だと正しいのかしら」
「ハハ、また間違えてしまいました……ごめんください!……あ!」
ツインテールがため息をついた。話によると、彼女もツインテール女と共に入部希望のようだ。その金髪はそこでキョロキョロしていると、誰かと目を合わせる。
「何あの子ちょー可愛くない?!」
その『誰か』だと思われる面倒くさそうな奴が後ろで叫ぶ。もちろん麻尋の声だ。ツカツカと金髪碧眼に歩み寄る麻尋に、後を追う美頼。彼女たちはそこで初めて、ツインテール女の存在に気づいたようだ。パソコンの陰に隠れて、彼女の方は見えなかったのだろう。
「どーゆうことなのトッキー」
「新入部員だよ。この部活に入りたいんだってさ」
「なんだ、千夜がイマジナリーフレンドと話してるのかと思ったら。お相手いたの」
美頼が珍しく他人の前で口を出す。
「僕ってそんなおかしなイメージなの!?!?」
「うん」
「即答!!!」
そんなやり取りをする彼らの横を通り過ぎて、冷淡な目つきの少女が歩いてきた。パソコンでURAY研究所について調べている俺の傍まで。一応画面を切って向かい合う。
「あなたが部長の仲山君で合ってる?」
「あぁ、そうだけど」
「私は辻堂桃羽。一年三組よ。よろしくね」
そう言いながらも無表情な彼女、辻堂は俺の事をじっと見つめる。まるでこちらの様子を伺っているかのように。
「辻堂……?」
つい小声で呟いてしまう。今朝のメールが脳裏をよぎった。
──『辻堂桃羽には気をつけろ。お前の過去を握っている』
そんな俺の声が聞こえたのか、彼女がその瞬間少しだけ、目を細めた気がした。
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