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32話「魔法使い」
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「聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」
エミナの手から、稲妻を纏った光球が放たれた。光球は直線的に前方に飛んでいき、遠くの木の的に当たった。
「うん……この距離でも当てれるようになってきたかな……」
「輝く剣閃を持ちし力を我に……ソードオブシャイン!」
瑞輝がソードオブシャインを唱えると、瑞輝の手の平に眩い光が発生し、一瞬にして広がり、凝縮して剣の形となった。
「ソードオブシャイン……剣の形を作るのは、もう慣れたけど……」
瑞輝は、自分の手に握られたソードオブシャインをまじまじと見つめる。光が眩しくて輪郭が不明瞭に見えるが、刃の部分の完成度も高く見える。この剣で、どれくらい硬いものを切ることができるのだろうか。
「瑞輝ちゃん!」
「おおっ!?」
目の前に、突如として現れた石に驚き、瑞輝はソードオブシャインを、その石に振るった。
――パキッ!
小気味良い音と共に、石が真っ二つに斬り裂かれ、緑の草が茂った地面にボタりと落ちた。
「あっ……」
自分に迫る石に、思わず、たまたま手に持っていたソードオブシャインを振るってしまったが、地面に落ちた石を見ると、中々に断面が綺麗だ。
「あっ! やるじゃん瑞輝ちゃん!」
エミナが歓喜の声を上げながら、地面に転がったソードオブシャインの石を拾い上げた。
「エ、エミナさん……」
いきなり石を投げられたのでびっくりして、今も心臓が、バクバクと高鳴っている。
「急に、何を……」
「切り口も結構鋭いわ。光属性の魔法、上達したね!」
ソードオブシャインによって切断された鋭利な切り口を、エミナはまじまじと見て、歓喜した。
「ええと……うん……ありがとう……」
いきなり驚かされて、喜ばれて褒められて……どうにも忙しいと釈然としない気持ちになりながらも瑞輝はお礼を言った。
「この調子で、どんどん光魔法、得意になるといいね!」
「え……?」
「瑞輝ちゃん、最近、光属性の魔法を重点的に練習してたみたいだから……違うの?」
「いや……そ、そうだけど……」
「でしょ! じゃあ成果、出てるよ!」
「ああ……うん……」
光属性の魔法、確かに上達しないといけない。しかし、相手は、あのティムにまで重傷を負わせた化け物だ。それに対して、精霊力が少なく魔法の威力が抑えられる現代社会において、果たして僕の魔法がどれだけ役に立つというのか。ミズキは、今やっていることは、全て無駄になるのではないかと思わずにはいられない。
「瑞輝ちゃん、いつもソードオブシャイン、作るだけで、なかなか切らないから、どれくらい上達してるのか分からなくて……」
「それは……切れるかどうか、分からなかったし……」
「そっか……ね、瑞輝ちゃんって、凄く慎重だけど……慎重過ぎないかな……?」
エミナが上目遣いで瑞輝に言った。目は泳いでいて、表情もどこか不安そうだと、瑞輝は思った。
「え?」
「ほら、今のソードオブシャインだって、折角成功したんだし、切れても切れなくても、試し切りくらいはしてみてもいいんじゃないかと思うんだ」
「エミナさん……でも、魔法って、何が起こるか分からないし……」
「うーん……そう……だよね、それが瑞輝ちゃんなんだよね……うん、そうかもしれない」
瑞輝には、エミナが少し困ったような顔をして、また、少し納得の出来ない感じの口調になっていると感じられた。そんな時、瑞輝の目に留まったのは、エミナが首にしているネックレスだった。
「……あ、エミナさん、ネックレス、してくれたんだ」
それは、前に瑞輝がプレゼントした、雪ウサギのガラス細工に化学繊維の紐を通して作られた、白うさぎのネックレスだ。安物だということと、プレゼントしてエミナに見てもらうまで、雪ウサギを模しているのを本当のウサギだと思っていたことが、少し不安だったが、エミナがネックレスを身に付けてくれたのを見て、瑞輝は少し、ほっとした。
「ええ? ……ああ、うん。これ、とっても可愛いって、みんな言ってくれるんだ。勿論、私も可愛いと思うよ」
エミナが雪ウサギのネックレスを親指と人差し指でいじりながら、微笑んでいる。
「そうなんだ……ね、エミナさん、今日はもう、練習は終わりにしようか」
「え、もう? ……いいよ、なんか、瑞輝ちゃん顔色悪いみたいだし」
エミナが、少し驚いた様子で数秒考えた後、返答した。
「え……顔色……悪いかな?」
「きっと、向こうで何かあったんだよね。そういう時には、無理にやっても苦しいから……」
「エミナさん……なんか、凄いね、何でもお見通しみたいだ」
瑞輝には、エミナの言ったことに心当たりがあった。ティムが入院したことだ。勿論、瑞輝だけではないが、いよいよ連続殺人事件の脅威が、本格的に学校へと迫っているのではないかと、相当なショックや不安を感じている。そのことは、自分でもよく分かる。
「ふふ……伊達にいつも一緒に練習してないよ! あそこの木の陰、涼しいから」
エミナが、少し離れた所にある大木を指さしたので、瑞輝もエミナの指差した先を見た。
「うん……なんか、良く分からないけど、捗らなくて……」
いつもは、エミナと練習をすると、何故か楽しくて……疲れも忘れて練習に没頭してしまう瑞輝だが、今日はなんだか、凄く疲れるし、練習に集中できない。
「でもまあ……ゆっくりやればいいかな……」
あの化け物をはじめとした超常現象の専門家である梓。その梓ですら、あの化け物と正面から戦ったら勝てるかどうか分からない様子だ。だったら、今から、にわか仕込みの解呪魔法を練習したところで、役には立たないのではないか。解呪魔法を覚えることができて、もし化け物に効果を発揮出来たら、それは儲けもの。くらいに思っておけばいいだろう。瑞輝はそう、思い直した。
「いつもと同じ、あそこの涼しい所で休もう」
魔法を練習している所の近くに、大きな常緑樹がある。瑞輝とエミナはいつも、魔法の練習を終えた後、暫くそこで休みつつ会話をしている。
「うん……そうしよう」
瑞輝とエミナは、大きな常緑樹の下へとゆっくりと歩いていった。常緑樹の下の大きな日陰は、いつものように涼しかった。練習で体を動かした後には丁度良い場所だ。
「このネックレス、みんな可愛いって言うけど、私もお気に入りなんだよ」
「そうなの? もうちょっと大きいのを買えばよかったかな、ちょっと目立ってない気がする」
エミナさんは空色のバトルドレスを着ているが、服の色が薄いと、白いネックレスは、あまり目立たない。緑の耳の部分は目立つので、そこについては雪ウサギで結果オーライだったのかもしれないが……。
「ううん、確かに、このバトルドレスの色だと、色合いがあるから目立たないけど、普段着で出歩く時は、けっこう映えるんだよ」
「そうなんだ……買って良かったよ。ガラス細工には、他にも指輪とかビー玉とか色々あって選ぶのに迷ったんだけど、これが一番かわいいし、エミナさんにも似合うかなって」
「そうなの? 私も本当に気に入ってね、外へ行く時には、いつも付けてるの。ありがとう、瑞輝ちゃん」
二人の時間は、いつもと変わらずに、ゆっくりと過ぎていった。
エミナの手から、稲妻を纏った光球が放たれた。光球は直線的に前方に飛んでいき、遠くの木の的に当たった。
「うん……この距離でも当てれるようになってきたかな……」
「輝く剣閃を持ちし力を我に……ソードオブシャイン!」
瑞輝がソードオブシャインを唱えると、瑞輝の手の平に眩い光が発生し、一瞬にして広がり、凝縮して剣の形となった。
「ソードオブシャイン……剣の形を作るのは、もう慣れたけど……」
瑞輝は、自分の手に握られたソードオブシャインをまじまじと見つめる。光が眩しくて輪郭が不明瞭に見えるが、刃の部分の完成度も高く見える。この剣で、どれくらい硬いものを切ることができるのだろうか。
「瑞輝ちゃん!」
「おおっ!?」
目の前に、突如として現れた石に驚き、瑞輝はソードオブシャインを、その石に振るった。
――パキッ!
小気味良い音と共に、石が真っ二つに斬り裂かれ、緑の草が茂った地面にボタりと落ちた。
「あっ……」
自分に迫る石に、思わず、たまたま手に持っていたソードオブシャインを振るってしまったが、地面に落ちた石を見ると、中々に断面が綺麗だ。
「あっ! やるじゃん瑞輝ちゃん!」
エミナが歓喜の声を上げながら、地面に転がったソードオブシャインの石を拾い上げた。
「エ、エミナさん……」
いきなり石を投げられたのでびっくりして、今も心臓が、バクバクと高鳴っている。
「急に、何を……」
「切り口も結構鋭いわ。光属性の魔法、上達したね!」
ソードオブシャインによって切断された鋭利な切り口を、エミナはまじまじと見て、歓喜した。
「ええと……うん……ありがとう……」
いきなり驚かされて、喜ばれて褒められて……どうにも忙しいと釈然としない気持ちになりながらも瑞輝はお礼を言った。
「この調子で、どんどん光魔法、得意になるといいね!」
「え……?」
「瑞輝ちゃん、最近、光属性の魔法を重点的に練習してたみたいだから……違うの?」
「いや……そ、そうだけど……」
「でしょ! じゃあ成果、出てるよ!」
「ああ……うん……」
光属性の魔法、確かに上達しないといけない。しかし、相手は、あのティムにまで重傷を負わせた化け物だ。それに対して、精霊力が少なく魔法の威力が抑えられる現代社会において、果たして僕の魔法がどれだけ役に立つというのか。ミズキは、今やっていることは、全て無駄になるのではないかと思わずにはいられない。
「瑞輝ちゃん、いつもソードオブシャイン、作るだけで、なかなか切らないから、どれくらい上達してるのか分からなくて……」
「それは……切れるかどうか、分からなかったし……」
「そっか……ね、瑞輝ちゃんって、凄く慎重だけど……慎重過ぎないかな……?」
エミナが上目遣いで瑞輝に言った。目は泳いでいて、表情もどこか不安そうだと、瑞輝は思った。
「え?」
「ほら、今のソードオブシャインだって、折角成功したんだし、切れても切れなくても、試し切りくらいはしてみてもいいんじゃないかと思うんだ」
「エミナさん……でも、魔法って、何が起こるか分からないし……」
「うーん……そう……だよね、それが瑞輝ちゃんなんだよね……うん、そうかもしれない」
瑞輝には、エミナが少し困ったような顔をして、また、少し納得の出来ない感じの口調になっていると感じられた。そんな時、瑞輝の目に留まったのは、エミナが首にしているネックレスだった。
「……あ、エミナさん、ネックレス、してくれたんだ」
それは、前に瑞輝がプレゼントした、雪ウサギのガラス細工に化学繊維の紐を通して作られた、白うさぎのネックレスだ。安物だということと、プレゼントしてエミナに見てもらうまで、雪ウサギを模しているのを本当のウサギだと思っていたことが、少し不安だったが、エミナがネックレスを身に付けてくれたのを見て、瑞輝は少し、ほっとした。
「ええ? ……ああ、うん。これ、とっても可愛いって、みんな言ってくれるんだ。勿論、私も可愛いと思うよ」
エミナが雪ウサギのネックレスを親指と人差し指でいじりながら、微笑んでいる。
「そうなんだ……ね、エミナさん、今日はもう、練習は終わりにしようか」
「え、もう? ……いいよ、なんか、瑞輝ちゃん顔色悪いみたいだし」
エミナが、少し驚いた様子で数秒考えた後、返答した。
「え……顔色……悪いかな?」
「きっと、向こうで何かあったんだよね。そういう時には、無理にやっても苦しいから……」
「エミナさん……なんか、凄いね、何でもお見通しみたいだ」
瑞輝には、エミナの言ったことに心当たりがあった。ティムが入院したことだ。勿論、瑞輝だけではないが、いよいよ連続殺人事件の脅威が、本格的に学校へと迫っているのではないかと、相当なショックや不安を感じている。そのことは、自分でもよく分かる。
「ふふ……伊達にいつも一緒に練習してないよ! あそこの木の陰、涼しいから」
エミナが、少し離れた所にある大木を指さしたので、瑞輝もエミナの指差した先を見た。
「うん……なんか、良く分からないけど、捗らなくて……」
いつもは、エミナと練習をすると、何故か楽しくて……疲れも忘れて練習に没頭してしまう瑞輝だが、今日はなんだか、凄く疲れるし、練習に集中できない。
「でもまあ……ゆっくりやればいいかな……」
あの化け物をはじめとした超常現象の専門家である梓。その梓ですら、あの化け物と正面から戦ったら勝てるかどうか分からない様子だ。だったら、今から、にわか仕込みの解呪魔法を練習したところで、役には立たないのではないか。解呪魔法を覚えることができて、もし化け物に効果を発揮出来たら、それは儲けもの。くらいに思っておけばいいだろう。瑞輝はそう、思い直した。
「いつもと同じ、あそこの涼しい所で休もう」
魔法を練習している所の近くに、大きな常緑樹がある。瑞輝とエミナはいつも、魔法の練習を終えた後、暫くそこで休みつつ会話をしている。
「うん……そうしよう」
瑞輝とエミナは、大きな常緑樹の下へとゆっくりと歩いていった。常緑樹の下の大きな日陰は、いつものように涼しかった。練習で体を動かした後には丁度良い場所だ。
「このネックレス、みんな可愛いって言うけど、私もお気に入りなんだよ」
「そうなの? もうちょっと大きいのを買えばよかったかな、ちょっと目立ってない気がする」
エミナさんは空色のバトルドレスを着ているが、服の色が薄いと、白いネックレスは、あまり目立たない。緑の耳の部分は目立つので、そこについては雪ウサギで結果オーライだったのかもしれないが……。
「ううん、確かに、このバトルドレスの色だと、色合いがあるから目立たないけど、普段着で出歩く時は、けっこう映えるんだよ」
「そうなんだ……買って良かったよ。ガラス細工には、他にも指輪とかビー玉とか色々あって選ぶのに迷ったんだけど、これが一番かわいいし、エミナさんにも似合うかなって」
「そうなの? 私も本当に気に入ってね、外へ行く時には、いつも付けてるの。ありがとう、瑞輝ちゃん」
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