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第七篇第三章 狂宴の雪山
ガスタの決断
しおりを挟む「お、オイッ…!何する気だよッ!」
足は止めずに首だけ後ろへ向けて言葉を放つ
ロードと共にシグマとシェリーもガスタへと
目を向けていると改めてガスタが優しく笑み
を浮かべて彼等に背を向ける。
すると、何故かアノンに向かって逆走を始め
一気に駆けて戻って行く姿を目にする。
「血迷ったかよォ…いや、諦めたって事だよなァァ!!」
「……いえ、違いますよ。先ずは確実に生かすべきを見定めただけの事です」
「何言って……あァ!?オイ、テメェ…まさかッーーーー!?」
アノンへと辿り着いたガスタは相手の肩を手
で掴むと其の儘、右へと体重を掛けた。
「アカンやろッ!?そんなんッ!?」
「ガスタ様っ、無茶ですッ!!」
「ガスタァァ!!!!」
三人の静止は届かずガスタはアノンの肩を
グッと掴んだま儘で深い雪山の崖下へと共に
落ちて行くという判断を下した。
そして、ダメ押しの様に声を飛ばす。
「私なら大丈夫ですッ…さあ、前へッ!!」
穏やかな口調のガスタから放たれた檄の様な
雄叫びにロード達は歯を食いしばり前を見て
走り続けるしか無くなった。
シェリーはまたも誰かに生かされた。
ロードとシグマも拳を強く握り悔しさを噛み
締めながら前へと、只前へと走る。
其れは、シェリーという隣国バルモアの王家
の血を継ぎ未来を託された人間を始めとした
無限大の可能性を秘める若者を生かすガスタ
なりの決死の策であった。
だが、ギフトもある。
だから落下で死ぬ事は無いと解りつつも其れ
はガスタではなくアノンにも言える事だ。
無事に降り立ったとしてもどんな結果であれ
革命軍シルヴァを打ち破り後を追い掛けて
来た裏帝軍の猛者アノンとの一騎打ち。
見えぬ決着に頭を悩ませる若者達は其の背中
から祈りにも似たエールを送りながら走る。
そして、崖下へと落下していった二人は空気
抵抗により両者の身体は離れ離れになった。
そして、崖下への落下道中に二人はお互いに
体内の波動を練り上げて行く。
そして、ギフトと共に其の波動を解き放つと
両者が揃って身体を変貌させて行く。
「…ぐっ…ああアああァあ…やってくれやがったな…ガスタよォ…」
「……何を…此の程度で死ぬ様には鍛えられて居ないでしょう?裏帝軍の幹部は…」
「今更知った口を聞くんじゃねェェェ!!後悔なら今の内にしとくんだなァ…!!」
「ありませんよ…後悔なんて」
そして両者は崖下へと辿り着く。
アノンは変貌しきった身体で両足からドシン
と硬い何かが衝突した様な重たい音を奏でて
深く降り積もった雪の大地の真下の岩の地面
に地割れを起こしながら降り立った。
其れとは真逆にひらりと翼を翻しガスタは雪
の大地の手前で其の身体を宙に浮かべる。
雪山エルブルーム山の崖下エリアでガスタと
政府直下裏帝軍幹部アノンの激突が始まる。
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