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第六編第一章 一輪の花を巡って
薬師の老婆
しおりを挟む村落の入り口で叫び声を上げて助けを求める
シャーレの姿に注目が集まると村人達が謎の
大きな腫れに因って倒れたポアラ達を囲む様
に輪を作り始めると何かを知っているかの様
に村人達は慌ててざわつき始める。
するとシャーレは其の村人達の反応に手応え
を感じた様に改めて声を荒げる。
「私達は旅の者…。お騒がせしてしまい申し訳ありませぬ…ですが、仲間が知らぬ何かに犯され苦しんでおります…何方か知恵をお貸し頂けませんかッ!?何方か御力をお貸し頂けませんかッ!?」
シャーレの言葉が止むと同時に人混みの輪の
外側から一人の着物を着た老婆が村人達を
掻き分けて輪の中心へと顔を出す。
白髪を束ねて裾の長い着物を引き摺りながら
現れた其の老婆はポアラの腫れた腕を見ると
声を上げて更に近くへと歩み寄る。
「…パンテ・コネーロ山に生息する毒虫にやられたんじゃな…。早う処置せんと死ぬぞ…此のお嬢ちゃんは…」
死というワードを訊いて改めて平静を保てず
慌てふためくロード達の中でシャーレは老婆
へと詰め寄ると表情を崩して訴え掛ける。
「何かッ…何かッ…助ける方法は無いんですかッ!?」
「……あるよ。先ずはこっちに連れてきな。だが…アンタ達にもやってもらう事がある…」
「…ッ…!!何でも致しますッ!!」
老婆から救えると言われて希望を手に入れた
ロード達は老婆が暮らす小屋へとポアラを
連れて行くと畳みの上の布団に寝かせる。
「あの毒虫が持つ毒の応急処置は簡単なのじゃ…しかし此れでは長引かせて居るだけに過ぎぬ…此の毒を完全に中和するには…パンテ・コネーロ山の山頂付近の崖にしか咲かぬ“アユターレ”という全てが純白の花の成分が必要なのじゃよ…」
老婆が言うには其の全てが純白なアユターレ
という花はとても希少性が高くキツ過ぎる為
に迂回をして来たパンテ・コネーロ山の山頂
付近にしか咲かないらしい。
更に、アユターレの花から作る薬は調合して
置く事は其の成分の特徴から出来ず毒虫の毒
に犯された者が出た場合、其処から花を手に
入れる為に動く事が多いらしい。
上手く行けば行商人から手に入る様なのだが
単価は高く備蓄している家もほぼ無い様だ。
だからこそ、村の者達は肌を露出して山中に
入る事は有り得ない事で無知な旅の者達しか
此の毒虫の被害には合わないらしい。
だが、ロード達はそんな事を知る由も無く
ポアラが運悪く其の毒に犯されてしまった。
「其の花を採って来れれば…薬は作れるのでしょうか…?」
「アタシは薬師だよ。薬師此の道五十年のメディチさね。腕は確かだ…花さえ在ればアンタらの仲間のお嬢ちゃん…助けられるさね」
「メディチさん…恩に切ります…!」
「そんな事は良いから。早う花を探しておいで…そんなに直ぐポックリ行く事は無いにせよ…症状は酷く苦しいモンだよ…急いでやりな…!」
薬師メディチの言葉にシャーレとロードは
目を合わせると頷いて示し合わせた。
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