RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
199 / 849
第六編第一章 一輪の花を巡って

ポアラの災難

しおりを挟む


森の街フォレストールを後にしたロード達は
シェリーを水の街アリアアクアの港町に居る
革命軍と合流させる為に山道をひたすら進み
先ずは麓の村へと足を向かわせて居た。

ロード達が進むのは水の街アリアアクアと
森の街フォレストールの二つの街の地域に
跨り聳えるパンテ・コネーロという山岳だ。

此の山を越えるだけならば向かう必要性は
無いのだがパンテ・コネーロの山頂には霧
の様な薄雲が掛かっており其の高さを山と
戯れる様な空から溢れる雲が示している。

ロード達は其のパンテ・コネーロの外周と
なるそこそこ補修されている山岳道路を多少
遠回りとは知りつつも歩を進めている。

流石に此の高さを越えようとは誰一人として
思う筈も無く、正直此の山岳の道ですら弱音
を吐きたくなる程の険しい道だと付け加えて
置く事にしておこう。

そして、間も無くパンテ・コネーロ山の麓に
在る長閑な雰囲気を醸し出す村落へとロード
達はやっとの思いで辿り着く事となる。

真っ先に膝に手を当てたのはレザノフ。

流石に五十代にはキツい道程だったろう。

だが、実は此の消耗には訳がある。



「…はぁ…はぁ…やはり。覚醒は身体に堪えますね…此の程度の山道で此の消耗とは…若さを失ったと実感してしまいますな…」



レザノフの一言にロード達は固まる。



「(ん…?いやいや…若くてもキツいだろ。こんなの…)」


「(覚醒とは其処迄、消耗するのだろうか?何にしても…そう言われてしまうと…ロードがまだ弱音を吐いていない間は、私も強がるしか無いという事か…)」



正直、肩で息をしていたロードとシャーレ
だったが目を合わせると何故か平静を保ち
始めるのだが、男のプライドと呼べば此の
感情は伝わるのだろうか?

多少、不安は残してしまう。

だが、問題点は其処では無かった。

ロード達の真後ろでポアラが崩れる様に地面
に両膝を付けると大きく肩を揺らしている。

やはり、女性には特にキツかったろうと心配
そうな目で見つめるロードとシャーレだった
がシェリーが一人、ポアラの異変に気付く。



「ポアラ…様…?汗の量が凄い事になってますよ…?」



シェリーに抱えられたポアラは顔を真っ赤に
して酷く汗を掻き意識が朦朧としている。

話す余裕は無く、ポアラは辛そうに息を吐く
事しか叶わない姿を見てロード達もポアラの
異常な状態に心配そうに駆け寄るとポアラの
左腕が異様に腫れている事に気付く。



「…おいッ…ポアラ、何だよ…この腫れは…」


「正常では無いな…。済みませんッ、何方か此の腫れについて知っている方は居られませんかッ!?」



シャーレは麓の村落の入り口で慌てた様子で
村人達の注目を集めようと珍しく大声を上げ
周りに助けを求め始めた。

シャーレの瞳も痛く疲弊した様な状態へと
変わって行く、其れは目の前で消耗して行く
ポアラを気遣っての物であった。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...