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第二章[グーネウム帝国編]
決断
しおりを挟む「……よし、では行くぞ。」
俺たち全員がちゃんと武器を預けたことを確認した男はそう言うと、城の門をくぐり、中へと入って行った。
元からする気は無かったが、こりゃあまじで変なことは出来ないな。
そこから俺たちは男についていき、城の中を歩いていると、案外男はすぐに止まり、
「……ここだ、入れ。」
冷たい声でそう言った。
「本当にここなのか?」
「私たちまだ階段も登ったりしてないわよね?」
対して俺たちは、ヒソヒソ声でそう会話をする。
だって普通こんな入り口からすぐのところに王は居ねぇだろ、もし本当にここに居るのだとしたら、仲間を過信し過ぎだな。
「……おい、早く入れ。」
しかし、そんななかなか部屋に入ろうとしない俺たちを不審に思ったのか、男は鋭い目で睨みつけながらそう行った。
はぁ、ちょっとくらい会話したっていいじゃねぇかよ。
まぁだが、俺たちはわざわざここまで来さしてもらってるんだ。文句は言えない。
「はいはい。」
俺は男にそう返すと、グレー色のレンガ壁に取り付けられた木の扉を引き、4人で中へと入った。
すると、そこはひとつの小さな部屋で、向かいにも今入って来た扉と同じ様な扉が付いていて、真ん中に机が置いてあり、奥と手前にひとつづつ椅子が置かれていた。
……こんなとこに王が来るのか……?
そこはあまりに殺風景な部屋だった為、俺はこんなところにグーネウム帝国の王が来るとは考えられなかった。
しかし、
「お前らか、話をしたいヤツらは。」
そんな殺風景な部屋に、向かいの扉からひとりの見覚えのある人物が入って来た。
「お前は……!」
俺はその人物を見た途端、口からそう言葉が漏れる。他の3人も、同じ様に衝撃を受けていた。
180センチ以上はありそうな身長、プロレスラーの様に盛り上がった胸板、そして黒いローブ。部屋の中に入って来たその男は、いつかの冒険者ギルドで見た、幻影の騎士団のリーダー、ファビラスだったのだ。
なんでこいつが今ここに居るんだ!?というか王は来ないのか!?
俺はいきなり登場したファビラスに、あまりの衝撃で何も言えなくなっていた。
すると、そんな俺の代わりに、
「グーネウム帝国の王様は?なんで貴方が来るのよ?」
セリヤがそう聞く。するとファビラスは、
「逆に何故お前らは簡単に王と話せると思っていたのだ。」
漆黒龍とまではいかないが、それでも迫力のある低い声で、俺たちを嘲笑うかの様にそう言った。
「……ッ」
どう考えても俺たちのことを下に見てやがるな……
だが、悔しいがファビラスの言っていることは間違っていなかった。普通、俺たちみたいなリッチゾーンに住んでいる訳でも無い人間が、グーネウム帝国の王となんて、話せるなんてありえない話だ。だからここは我慢して、
「ここで俺たちが言った言葉、必ず王に伝えろよ?」
すぐに本題へ入った方が良さそうだ。
すると、俺のセリフを聞いたファビラスは、
「……お前の言葉による。」
そう言った。
やはり、完全に相手にされてない訳では無さそうだ。(これも漆黒龍を討伐したという実力のお陰なのだろうか)
これはもしかしたら本当に血を流さず、この街を変えることが出来るかもしれない……!
「分かった――」
俺はファビラスのセリフにそう承諾すると、
「なぜ、この国は、リッチゾーンやプアゾーンと、エリアを分けるんだ?」
言葉にしながらふつふつと湧き上がってくる怒りを押さえ、そう質問をする。
するとそれを聞いたファビラスは、何を馬鹿なことを言ってるんだと言わんばかりに、
「ゴールドのある者とゴールドのない者。格差や対応の違いがあるのは当然のことだ。」
そう言った。
いや、俺が言いたいのはただゴールドのあるやつとゴールドのないやつが分かれてるって話じゃなくて、なんでゴールドが無いだけでプアゾーンの人たちは奴隷の様な扱いを受けてるんだってことだよ!!
俺は頭の中で言いたいことを整理していると、
「まさかお前、プアゾーンのやつらのことを言ってるのか?」
ファビラスは俺の心の中を見透かした様にそう言った。
「そうだ!」
そのセリフに俺はそう強く反応する。
するとファビラスは、「フッ」と馬鹿にする様に笑うと、
「あいつらはゴールドを全く持っていない、要するに自由に生きる権利も持っていないと言う事だ。お前らの知り合いにプアゾーンの人間がいるのかもしれないが、アイツらは奴隷の様に扱われて当然なんだよ。」
馬鹿にするようにそう言った。――って……
こいつ……!プアゾーンの人達は元々全くゴールドが無かった訳じゃない……お前らが奴隷を作る為に、無理やりゴールドを奪い取っただけじゃないか……!
そこで俺は、メアリーの優しい笑顔が脳裏に浮かんだ。
クッ……ダメだ、堪えようとは思ってたが――我慢出来ねぇ……!
そこで俺は勢い良く椅子から立ち上がると、正面に座っているファビラスに殴りかかった。
すると次の瞬間、
「……ッ!?」
目の前に居たファビラスは、一瞬で消えた。
そして、
「グフッ!?」
気付けば俺は、ファビラスにみぞおちを殴られていた。
痛え!?
俺はたまらず、殴られたみぞおちを両手で押さえて地面に倒れ込む。しかし、痛みは全く引かず、俺は口から大量の血を吐いた。
「テツヤ!?」「おい!?」「大丈夫か!?」
3人の声が聞こえる。しかし、痛みと今、目の前で起きた衝撃で返事をする事は出来なかった。
「……だから言われていたんだよ、変なマネはしない方が良いと……」
ファビラスは、低い声でそう言う。
そこで俺の意識は闇の中へと落ちて行った。
それからどのくらい眠っていたのだろう、気が付けば、冒険者ギルド内にあるベンチに寝かされていた。
「うぅ……」
まだ腹がズキズキと痛む。俺はみぞおちに手を添えながらゆっくりと身体を起こすと、
「テツヤ!大丈夫?みんな!テツヤが目を覚ましたわ!」
横に座っていたセリヤがそう声を上げた。
そっか……俺、あそこで気を失ったのか。
くそ……みんなに迷惑をかけちまった。
「大丈夫か?」
ラークがそう言い、ガタイのいい冒険者もそれ一緒に来た。
「あぁ、大丈夫だ。」
俺がそう返すと、周りに集まって来ていた冒険者たち全員が安心の声を上げた。
「……みんな、本当にすまなかった。」
俺は冒険者たちの顔を見ながらそう言う。
あの時、俺はグーネウム帝国の冒険者たちを代表して話していたんだ。なのに、俺の身勝手な行動でそれを台無しにしてしまった。
しかし、冒険者たちは全く怒っておらず、その中のラークは、
「いや、あれはしょうがない事だ。それに――今日のあのファビラスや、周りのヤツらを見て、ひとつ分かった事もあるしな。」
そう言った。
ん?分かったこと?まさか俺が気を失った後、更に話し合いは続いたのだろうか。
「分かった事ってのはなんなんだ?」
俺はラークにそう聞くと、「それはな――」先にそう言ってから、
「この問題は武力を使わないと解決出来ないってことだ。」
そう言った。
「……ッ」
やっぱりそうだよな……
正直、武力を使って国を変えようとはしたくなかった。
だが、ラークも今言っていた様に話し合いで解決する問題では無いのだ。
「やっぱり……しょうがないか。」
俺のセリフに、ラークや、他の冒険者たちが無言で頷く。
だが、だとしたら流石に兵力が足りないな……
俺たちが敵に回そうとしているのはあの幻影の騎士団なんだ。ゴブリン軍団とは訳が違う。
「だとしたら、兵力が足りないよな……」
俺がそう言うと、それに対してガタイのいい冒険者が、
「それなら、俺に任してくれ。」
思い当たる人物がいるのだろうか、腕を組んでそう言った。
更に、
「じゃあ、漆黒龍の時の様にもう一度俺が作戦を考えてやる。」
ラークも、ガタイのいい冒険者に乗るようにそう言う。
そして、ラークがそう名乗りを上げた事によって、冒険者ギルド内が一気に「打倒、幻影の騎士団」の空気になった。
「これなら行けるかもしれないわ……!」
「あぁ……!」
これが団結力というやつなのか、俺はそう感嘆の声を上げる。
こうして俺たちは、武力を使い、グーネウム帝国を変えることを決めたのだった。
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