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第二章[グーネウム帝国編]

正面突破

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 リッチゾーンに初めて入り、そしてゾーン問題は武力を用いないと解決出来ないと知った次の日。
 俺たちはリッチゾーンの奥にある城を襲撃する作戦を考える為、冒険者ギルドに集まっていた。(リッチゾーンに住んでる人たちは傷つけないぞ?)

「あいつは居ないのか?」
 俺はある程度冒険者たちがギルド内に集まって来たところでそう声を上げる。あいつというのはがたいのいい冒険者のことだ。
 昨日は、「兵力は俺が集める」的な感じで勢いづいてたのにな。

 すると俺のセリフを聞いたラークは、
「あいつは多分今日は来ないぞ?」
 そう言った。
「なんでだよ?」
「いや、俺もよく分からないが、今朝、グーネウム帝国の入り口からどこかへ行く姿が見えたんだよ。」

 ん?どこかへ行った?それって逃げたってことか?
「それって逃げたってことかしら?」
 俺が疑問に思っていたことを、横に居たセリヤが代わりに言った。
 しかし、それに対してラークは、「いやいや」絶対にありえないと言う様な口調でそう言い、

「とにかく、あいつが来ないからって作戦会議をしないってのは時間の無駄だ、もうほとんど冒険者は集まったしな。だからとりあえず俺たちだけで作戦会議しようぜ?」
 話題を今日の本題に切り替えた。

「まぁ、そうだな。」
 漆黒龍ブラックドラゴン討伐の時、あんなにミリゴをバカにしてたのにミリゴから来た俺たちに頭を下げてまで協力してくれる様なやつだ。今回もなにか理由があってそうしたのだろう。
 それに――
「今は仲間のことより、作戦を考えないといけないものね」
 セリヤがそう言う。
「そういうことだ。」
 こうして俺たちは、がたいのいい冒険者を抜いたメンバーで、作戦会議を始めた。


「よし、じゃあ進行は漆黒龍ブラックドラゴンと同じ時みたいにラーク。頼めるか?」
 がたいのいい冒険者の話題が終わると、俺は「ごほん」と咳をしてからラークの方を向いてそう言う。昨日の話でも、「俺が作戦を決める」って言ってたしな。
 
 すると、ラークは、
「あぁ、俺もある程度考えてきたからな。」
 任せておけと言わんばかりに拳で自分の胸を叩きながらそう言う。
 お、期待出来そうだな。
 俺がそう、完全にリーダーの素質を持っているラークに感心していると、
「凄いわね。私なんて正面突破ッ!!としか考えてなかったわ……」
 セリヤが驚いた様にそう言った。

 その瞬間、周りの冒険者たちが必死に笑いを堪えだした。
 いや、その気持ち分かるぜ。だってしょ、正面突破って……
 こいつ小学生じゃないんだからもっとまともな考えしてくれよ。
「お前な、正面突破って――」
 俺がみんなを代表してそうセリヤにツッコミを入れようとすると、それよりも先に、

「お!セリヤ、俺も今そう言おうと思ってたんだよ!凄いな!」
 ラークが、初めて同じ趣味の人間を見つけた時の様に頬を赤くしてそう言うと、勢い良くセリヤの両手を掴んだ。――って、えぇ?
「そ、そうかしら?」

 セリヤもこのラークの反応には困惑している。まさか褒められるなんて思っていなかっただろうからな。むしろボケに行ったと言っても過言ではないだろう。
 すると、ラークの反応を見た周りの冒険者たちは、
「た、確かに良いかもな!正面突破!」「あ、あぁ!だよな!」
 さっきまではセリヤの作戦に対して笑いを堪えてた癖に、ラークもそう考えてたと言った瞬間、肯定し始めやがった。

 こ、こいつらなぁ……
 俺はそんなセリヤに対して失礼過ぎる冒険者たちに――
「いや!そうだよな!俺も良いと思ってたんだよ!」
 混ざって正面突破を肯定した。

「ちょっと!?私が正面突破って言った時はツッコもうとしてたわよね!?」
 俺のセリフにセリヤがそう言ってくる。
 い、いや!だってよ!
 アホなやつが「正面突破!」って言えばバカみたいに聞こえるが、良い作戦を思いつくようなやつが言う「正面突破!」ってなんかこう、ちゃんとした理由がありそうって思うじゃん?
 お前らも何となく分かるはずだ。

 まぁだが、セリヤと同じ様に、良い作戦が思いつかなくて適当にそう言っている可能性もゼロではない。だから俺は、
「でもよ?一番危なそうな正面突破って作戦を思いついたんだ?」
 ある程度ガヤガヤが収まった辺りで、ラークにそう質問した。

 するとラークは、
「いや、俺だって最初は正面突破なんて全く考えて無かったよ。」
 先にそう正面突破を否定してから、
「でもよ?昨日通った所以外地形や造りの情報が分からないリッチゾーンで、わざと裏道的なルートを通るのは危険だと思ったんだよ。」
 正面突破以外の危険性を上げた。
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