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第二章[グーネウム帝国編]
リッチゾーン
しおりを挟む「その漆黒龍、消えたのでは無く、俺たちが倒したんだ。」
ラークのそのセリフを聞いた瞬間、今まで全く表情を変えなかった男の眉毛が微かに動いた。
「……ではなぜ、漆黒龍の死体が無いのだ?」
しかし、やはりすぐには許可は出されない。
男はすぐに表情を戻すと、鋭い目付きでラークを睨みながらそう言う。恐らくここでのラークの回答によって嘘か誠かを定めようとしているのだろう。
正直そんなのそいつの価値観で決まる様なもんじゃねぇか。
俺はそんな光景を見ながらそう思ったが、ここで口を挟んでも変なことになりそうだからな。だから俺は、黙ってラークの回答に任せる事にした。
すると、男のセリフを聞いたラークは、
「俺にもよく分からないが、倒したら身体が闇に溶ける様に消えていったんだよ、全く、よく分かんねぇぜ。」
まるで仲間に愚痴を吐くような、そんな口調でそう言った。
「……ッ」
こ、こんなんでいけるのか……?
俺はラークの思ったよりも軽かったセリフに対して冷や汗を流していると、逆にその軽さが項を奏したのか、
「……仕方ない、代表者数人だけ、リッチゾーンに入る事を許可する。」
男は「はぁ」とため息を吐くと、俺たちの目を見てそう言った。
よし!どうなることかと心配していたが、何とか上手くいったな!
その後、話し合いの結果、リッチゾーンに入る代表者は、俺とセリヤ、そしてラークとガタイのいい冒険者の4人という事に決まった。
「……じゃあ、俺の後ろを着いてこい。良いか?変なマネはするなよ?」
男はノーマルゾーンとリッチゾーンを分ける壁に付いている扉を開けると、俺たちの方を振り返り、強く念を押して来た。
分かってるっての。てかそもそも変なマネをする気があるとしたら、わざわざ丁寧に扉を開けてもらう様な事はしねぇし。
「分かってるって。」
俺は他の代表者三人の代わりにそう返すと、
「……」
男はろくに返事も返さず、すぐに歩き始めた。
……感情の分からねぇ男だなコイツは。
俺はあまりに冷たい男の態度に多少イラつきながらも、言われた通りに後ろを着いていく。
そして、扉をくぐり、リッチゾーンに入った瞬間――
「う、嘘だろ……?」
先程までの男に対する怒りなんて、一瞬にして消えた。
「ど、どうなってんのよ……」
「こんなに……」
俺のセリフに続いて、セリヤとラークもそう驚きの声を上げる。ガタイのいい冒険者に関しては、驚きで声すら出ないという感じだった。
そうだな――今もったいぶったって仕方ないからお前らにも言ってやろうじゃないか……なんとそこは、俺たちがさっきまでいたノーマルゾーンとはまるで違う、整備されきった完璧な城下町だった。
「……おい、早く着いてこい。」
そんな俺たちに、男は冷たい声で指示を飛ばしてくる。
いや、そうは言ってもなぁ……
あまりにも違い過ぎる街並みに、俺たちは圧倒されるのだった。
それから、やはりノーマルゾーンとは全く違うリッチゾーンの街並みを見ながらしばらく歩くと、
「……着いたぞ。」
俺たちを先導していた男がそう言い、歩く足を止めた。
「着いたのか――って!?」
歩きながらずっと横にある家や店ばかりを見ていた俺は、だんだんと近づいて来ていたそれに気づいておらず、久しぶりに正面を向いた俺は、現れた建物に対してそう驚きの声をあげた。
そこには、巨大な白い城(ダジャレみたいだな)があったのだ。
「……入るぞ」
男はそう言うと、城の中に居た幻影の騎士団達に指示を飛ばし、巨大な門を開けさせる。
するとその瞬間、
「な、なんだ!?」「ちょっと!?なんなの!?」
中から大量の幻影の騎士団が出てきて、一瞬にして俺たち4人を囲んだ。
「……何を焦っているんだ、お前らは今からこの街の城に入るんだぞ?武器を預けないと入れる訳ないじゃないか。」
そんな俺たちに、男はそう相変わらずの冷たい声でそう言う。まぁ、確かに考えれば当然だった。
だって俺たちは今からグーネウム帝国の王に直接会いに行くんだ。武器なんて取られるに決まってる。
……だとしても、今みたいにいきなり囲まれたら怖いからやめて欲しいが。
「分かってるよ。」
俺は男にそう返事を返すと、正直に持っていた杖を幻影の騎士団に渡す。それを見た俺以外の3人も、俺と同じ様に武器を預けた。
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