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数ヶ月後、私は純白のウェディングドレスを身に纏ってブライズルームで待機していた。
航は何やら仕事の電話が入ったらしく、部屋を出ていた。
控え室に一人きり。
落ち着かない気持ちでそわそわとしていると、扉の開く音がした。
航が戻ってきたのかと、振り返るとそこには二度と会いたくない人物が立っていた。
「湊……」
一ノ瀬湊。私と最悪の別れ方をした元彼だった。
相変わらず、ゆるふわの茶髪が彼の愛らしい姿をより際立たせている。
年下の彼の世話をする事が楽しくて、可愛くて、なのに最後は裏切られて。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てている。
あの時の記憶がフラッシュバックしそうになるのを何とか堪えている状態だった。
「ど、うして、ここにいるの」
喉がかさかさで思うように声が出ない。
湊が笑う。
その瞳にはかつての優しさも甘さも、情の一つすらなかった。
彼は私を恨んでいた。
怒っていいのは私のはずなのに。
「いいのかよ、俺と別れてすぐに結婚するなんて」
「な、んの話?」
「そんなことしていいのかって聞いてんだよ!」
湊の怒号にびくっと身体が恐怖する。
「俺に何も言わずにそんなことしていいのか? え? お前は俺のもんだろうが」
湊が私にふらふらと近寄ってくる。
ウェディングドレスの姿では満足に動けないし、何より私は恐怖で椅子に磔にされたみたいだった。
……怖い。
湊の身体が私に覆い被さろうとしたとき、アルコールの香りが鼻をついた。
湊は酔っていた。
だから記憶が混在しているのかもしれない。
私は未だに彼を信じたかった。
恋人には戻れなくても、仲の良かった先輩後輩の関係になら戻れるんじゃないかって、愚かにも期待した。
「湊が私を置いてどっかに行っちゃったんじゃない。それなのに、どうして今更……」
「今更? 今更だって?! 俺はこんなにも伊織を愛しているのに、そんな酷いことを言うのか? 俺じゃあ駄目なのか? お前の隣に立つのは俺じゃあ駄目なのか?」
湊がさめざめと泣いていた。
そして、私のウェディングドレスを思いっきり引き裂いた。
航は何やら仕事の電話が入ったらしく、部屋を出ていた。
控え室に一人きり。
落ち着かない気持ちでそわそわとしていると、扉の開く音がした。
航が戻ってきたのかと、振り返るとそこには二度と会いたくない人物が立っていた。
「湊……」
一ノ瀬湊。私と最悪の別れ方をした元彼だった。
相変わらず、ゆるふわの茶髪が彼の愛らしい姿をより際立たせている。
年下の彼の世話をする事が楽しくて、可愛くて、なのに最後は裏切られて。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てている。
あの時の記憶がフラッシュバックしそうになるのを何とか堪えている状態だった。
「ど、うして、ここにいるの」
喉がかさかさで思うように声が出ない。
湊が笑う。
その瞳にはかつての優しさも甘さも、情の一つすらなかった。
彼は私を恨んでいた。
怒っていいのは私のはずなのに。
「いいのかよ、俺と別れてすぐに結婚するなんて」
「な、んの話?」
「そんなことしていいのかって聞いてんだよ!」
湊の怒号にびくっと身体が恐怖する。
「俺に何も言わずにそんなことしていいのか? え? お前は俺のもんだろうが」
湊が私にふらふらと近寄ってくる。
ウェディングドレスの姿では満足に動けないし、何より私は恐怖で椅子に磔にされたみたいだった。
……怖い。
湊の身体が私に覆い被さろうとしたとき、アルコールの香りが鼻をついた。
湊は酔っていた。
だから記憶が混在しているのかもしれない。
私は未だに彼を信じたかった。
恋人には戻れなくても、仲の良かった先輩後輩の関係になら戻れるんじゃないかって、愚かにも期待した。
「湊が私を置いてどっかに行っちゃったんじゃない。それなのに、どうして今更……」
「今更? 今更だって?! 俺はこんなにも伊織を愛しているのに、そんな酷いことを言うのか? 俺じゃあ駄目なのか? お前の隣に立つのは俺じゃあ駄目なのか?」
湊がさめざめと泣いていた。
そして、私のウェディングドレスを思いっきり引き裂いた。
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