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ネコ娘、花火を見る
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お祭りの日、セールの張り紙をした商店に入った。
「見て。これ、70%オフだって」
「値引きされる前の値段、この前見た定価の1.5倍っス」
カオスな値付けのされた店内で商品を手に取る。
「でも、これはカワイイよ」
「気に入ったのがあるなら、買えばいいじゃん」
「うん」
アタイは軽い素材のサンダルを買って、ゴツイ格闘家用のブーツから履き替えた。
「祭りはこれでいこう」
新しい靴でめずらしくお洒落して、アタイは祭りに繰り出した。
夕暮れの中、屋台の並ぶ通りを歩く。
焼きそば、たこ焼き、かき氷……。
「なんか、ルイスに作ってもらったものが多いなぁ」
「そこ比べちゃダメ。平凡な屋台の味が食えなくなるっス」
「それもそうだ」
ササミの指摘に、アタイは頭をポリポリかきながら同意した。
「ま、ビールがあればいいよ」
メリーはさっそくビールと焼き鳥を買って飲み食いしだしていた。
「ウチもそれでいいっス」
3人で焼き鳥を食べていると、見知った子どもたちの集団と出会った。
「大姐さん、こんばんは」
引率しているアザレア大姐さんにあいさつする。それから、
「ルイス、大姐さんと一緒だったんだね」
「子どもたちがはぐれないように、手伝っていました」
祭りは楽しいけど、人が多いので、子どもにはちょっと危ない。
見守る大人の目は多い方がいい。アタイはメリーとササミと別れて、子どもたちに付き添うことにした。
子どもに綿あめを買っていると、ドンッと音がして、大きな花火が空に広がった。
「花火の時間になったね。約束通り、家に帰るよ」
大姐さんの言葉に、子どもたちは嫌そうな顔をする。
「花火は、照明のうるさいこの辺よりも、明るくない家の方がきれいに見える」
ブーブー言う子を大姐さんが説得し、みんなで家に帰る。
すきあらば逃げ出して遊びにいきたそうなやんちゃ坊主を見張って、アタイとルイスも大姐さんの家までついていった。
「じゃあね。アンタたちはこれから酒でも飲むんだろ? 楽しんでおいで」
「うん」
「それから、遅くなったけど、A級昇格おめでとう、エルザ」
「へへ……」
アタイは照れて鼻をごしごしこすって、大姐さんの家を出た。
ルイスと2人で、来た道を戻る。
「そういや、けっきょくタコを買って帰れなかったな」
ダンジョンブレイク騒動で旅行先から夜にとんぼ返りをしたせいで、目的の買い物をしそこなった。
「また仕入れに行きましょう」
「そうだね」
祭りの喧騒をはなれた住宅街は静かだ。虫の声の中で、花火があがるドンドンという音がよく響いていた。
「いろんなところを旅して、美味しいものを仕入れて、美味しいものを作って食べましょう」
「うん! でもなんかアタイ、食い意地ばっかり張ってるみたいだ」
「それじゃあ、ついでにいろんな景色も見に行きましょう」
「そうだね」
ルイスと、これからの約束。
そのとき、ドンッと、ひときわ大きな花火が打ちあがった。
続けて、トトトト……と、小さな花火が連続で上がる。
次第に打ち上げの音の間隔がせばまり、夜空一面が花火で埋め尽くされた。
慣れないサンダルで、アタイは上ばかり見て歩いた。
「転びますよ」
ルイスがアタイの手をとった。
アタイは、「子どもじゃないんだし」という言葉をのみこんで、彼と手をつないで歩いた。
お わ り
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
「見て。これ、70%オフだって」
「値引きされる前の値段、この前見た定価の1.5倍っス」
カオスな値付けのされた店内で商品を手に取る。
「でも、これはカワイイよ」
「気に入ったのがあるなら、買えばいいじゃん」
「うん」
アタイは軽い素材のサンダルを買って、ゴツイ格闘家用のブーツから履き替えた。
「祭りはこれでいこう」
新しい靴でめずらしくお洒落して、アタイは祭りに繰り出した。
夕暮れの中、屋台の並ぶ通りを歩く。
焼きそば、たこ焼き、かき氷……。
「なんか、ルイスに作ってもらったものが多いなぁ」
「そこ比べちゃダメ。平凡な屋台の味が食えなくなるっス」
「それもそうだ」
ササミの指摘に、アタイは頭をポリポリかきながら同意した。
「ま、ビールがあればいいよ」
メリーはさっそくビールと焼き鳥を買って飲み食いしだしていた。
「ウチもそれでいいっス」
3人で焼き鳥を食べていると、見知った子どもたちの集団と出会った。
「大姐さん、こんばんは」
引率しているアザレア大姐さんにあいさつする。それから、
「ルイス、大姐さんと一緒だったんだね」
「子どもたちがはぐれないように、手伝っていました」
祭りは楽しいけど、人が多いので、子どもにはちょっと危ない。
見守る大人の目は多い方がいい。アタイはメリーとササミと別れて、子どもたちに付き添うことにした。
子どもに綿あめを買っていると、ドンッと音がして、大きな花火が空に広がった。
「花火の時間になったね。約束通り、家に帰るよ」
大姐さんの言葉に、子どもたちは嫌そうな顔をする。
「花火は、照明のうるさいこの辺よりも、明るくない家の方がきれいに見える」
ブーブー言う子を大姐さんが説得し、みんなで家に帰る。
すきあらば逃げ出して遊びにいきたそうなやんちゃ坊主を見張って、アタイとルイスも大姐さんの家までついていった。
「じゃあね。アンタたちはこれから酒でも飲むんだろ? 楽しんでおいで」
「うん」
「それから、遅くなったけど、A級昇格おめでとう、エルザ」
「へへ……」
アタイは照れて鼻をごしごしこすって、大姐さんの家を出た。
ルイスと2人で、来た道を戻る。
「そういや、けっきょくタコを買って帰れなかったな」
ダンジョンブレイク騒動で旅行先から夜にとんぼ返りをしたせいで、目的の買い物をしそこなった。
「また仕入れに行きましょう」
「そうだね」
祭りの喧騒をはなれた住宅街は静かだ。虫の声の中で、花火があがるドンドンという音がよく響いていた。
「いろんなところを旅して、美味しいものを仕入れて、美味しいものを作って食べましょう」
「うん! でもなんかアタイ、食い意地ばっかり張ってるみたいだ」
「それじゃあ、ついでにいろんな景色も見に行きましょう」
「そうだね」
ルイスと、これからの約束。
そのとき、ドンッと、ひときわ大きな花火が打ちあがった。
続けて、トトトト……と、小さな花火が連続で上がる。
次第に打ち上げの音の間隔がせばまり、夜空一面が花火で埋め尽くされた。
慣れないサンダルで、アタイは上ばかり見て歩いた。
「転びますよ」
ルイスがアタイの手をとった。
アタイは、「子どもじゃないんだし」という言葉をのみこんで、彼と手をつないで歩いた。
お わ り
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
応援ありがとうございます!
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完結おつかれさまでした
実はパーティーの中で一番有能なのに無能と追放された天然系主人公と知り合うことになる第三者の方が主役という話は斬新でよかったです
ただルイスが完璧すぎてエルザが引き立たなかった感じがちょっと残念
ルイスのどこかにメンタル的に弱いとこがあってエルザが必死に頑張って励ます場面があったら盛り上りそうだなあと思ってしまった
感想ありがとうございます。
ルイス側に課題を作る展開……、なるほど~。
とても参考になりました。
王女パーティーのその後の顛末とか番外編でお願いします。でも、彼女らもそんな悪い人でもなさそうなのであまり酷い目にはあわせないでください。
感想ありがとうございます。
番外編まで見たいと言っていただけてとても嬉しいです。
また何か書いていましたら、よろしくおねがいします。
違和感?わかった!タイトルのギルド受付の癒し枠〜ネコ娘は追放系主人公が気になるようです
から主人公がルイス?ネコ娘がエルザ?っとなるのですが?
作品内は、サブタイトルがネコ娘○○〜とあるからエルザが主人公?と思いガチに・・・?
内容でも、この世界の冒険者の4割は女性である、その為男性の癒し系の受付も存在している。ってあれば違和感が取れるのでわ?
あと、ルイスの隠された?能力(有能さ)を出して欲しい!王女の自滅型か間接型のザマァを検討をお願いします。作者さんの他の作品の中で今作品が良いと思いますので
感想ありがとうございます。
なるほど~。
話の構成上、テンプレの本来の主人公とこの話の主人公が別なので、視点をどこに置いて読むかが見えにくくなってそうですね。
ありがとうございます~。