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ネコ娘、おそろいのバッジをもらう
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翌日、ボス討伐のメンバーが集まった。
A級冒険者が19人。
同時にこれだけのA級を見ることは滅多にない。みんなちょっと興奮していた。周囲の冒険者たちから、A級の有名人の名前をささやく声が、ちらほら聞こえる。
戦力強化は人だけではない。
ギルドが所有する貴重な防具が、エネルギー充填済みで貸し出された。
「ギルド秘蔵の盾の魔道具だ。これで、要となる俺がボスをおさえる」
ツキノワさんがキメ顔で言って、巨大な魔石の埋め込まれた盾を撫でた。それを、レトリー姉ちゃんが尻尾をぶんぶん振りながら、尊敬の目で見ている。
アタッカーを入れ替える今回の作戦では、ボスをおさえておく盾役の能力が勝敗を分ける。盾使いの第一人者、ツキノワさんありきの作戦なのだ。
「もし、俺の師匠がいれば、もっと楽に倒せたんだろうけどな。いない人の話をしても仕方ない。これは俺にとって一世一代の勝負だ。絶対に全員無事で勝ってやるからな」
そう言ったツキノワさんは、ルイスの方を見ていた。
「大丈夫。必ずうまくいきますよ」
ルイスはツキノワさんに近づいて、手製の御守りを渡した。彼はこんなときでも、落ち着いてニコニコしていた。
「うん。何とかなる気がしてきた」
アタイも全力を出すよ!
ダンジョンの奥地で、ボスと戦闘を開始する。
盾使いの冒険者が協力して敵をおさえているところに、攻撃役が1人ずつ全力技を叩き込んでいった。
アタイも全てのマナを拳と脚にのせて、ボスに連続コンボを決めた。
自分の番が終わると、後ろで休んで、次の出番までに体力を回復させる。目の前では、A級冒険者の多種多様な必殺技を見ることができた。
途中で一度、ツキノワさんに渡されたルイスの御守りが、すごい光を放つことがあった。ルイスも一緒に戦っていたんだと思う。
そうして、攻撃を半日ほど続けていると、無事にボスが魔石に変わった。
「裏技みたいな理不尽な倒し方だったね」
「いいんだよ。これで危険なダンジョンを封じられるんだ」
ドロップはオリハルコンのインゴットだった。それと、普通のボスの倍くらいある巨大魔石を回収し、アタイたちはダンジョンを出た。
地上に持ち出したオリハルコンを見て、ここまで乗り込んでいた商人たちのテンションがおかしなことになった。
これでアタイたちの戦いが終わって、商人たちの戦いが始まったのかもしれない。
「問題は解決しました。ジャジャメリカに戻りましょう」
魔導トラックいっぱいに戦利品を詰め込んで、アタイたちはジスゴロスの街に帰った。
* * *
ジスゴロスに戻って1週間、緊張から解放された冒険者の散財で、街が景気づいていた。難度の高いダンジョンだったけど、その分稼ぎも大きく、終わってみれば街全体がうるおっていた。
アタイたちは冒険者ギルドに呼ばれて、ルイスからA級に更新されたギルドカードを受け取った。
「おめでとうございます。これでエルザさん、メリーさん、ササミさんの3人は正式にA級冒険者になりました」
「ありがとう」
A級のカードは金色で、今までのよりだいぶん派手だった。カードを出すとき目立ちそうだな。
「それと、今回討伐したダンジョンがドラゴンダンジョンでしたので、ギルドからドラゴンスレイヤーの記念バッジが贈られます」
アタイの手のひらに、ドラゴンをかたどった金属のバッジがコロンと置かれた。
「バッジは今回の討伐関係者全員に配られました。僕も着けてます」
ルイスの上着の襟元にも同じバッジがあった。
「おそろい……」
アタイの頬がニマーっとくずれる。
「この街のほとんどの冒険者とおそろいじゃないか」
「A級昇格よりバッジに感動しているエルザ姐さん可愛いっス」
メリーとササミも嬉しそうだ。
「もう1つ。商業ギルドが今回のドラゴンダンジョン討伐を記念して、お祭りを計画しています」
ルイスから可愛いイラストの描かれたチラシを受け取る。
「街の商店全体で、バーゲンセールをするそうです。それに、屋台や大道芸、花火もあるとか」
「へえ~。面白そうだね」
商業ギルドの奴ら、財布のうるおった冒険者から搾り取る気だ。
でも、分かっていても懐の温まった冒険者たちは、調子に乗って散財するんだろうな。
A級冒険者が19人。
同時にこれだけのA級を見ることは滅多にない。みんなちょっと興奮していた。周囲の冒険者たちから、A級の有名人の名前をささやく声が、ちらほら聞こえる。
戦力強化は人だけではない。
ギルドが所有する貴重な防具が、エネルギー充填済みで貸し出された。
「ギルド秘蔵の盾の魔道具だ。これで、要となる俺がボスをおさえる」
ツキノワさんがキメ顔で言って、巨大な魔石の埋め込まれた盾を撫でた。それを、レトリー姉ちゃんが尻尾をぶんぶん振りながら、尊敬の目で見ている。
アタッカーを入れ替える今回の作戦では、ボスをおさえておく盾役の能力が勝敗を分ける。盾使いの第一人者、ツキノワさんありきの作戦なのだ。
「もし、俺の師匠がいれば、もっと楽に倒せたんだろうけどな。いない人の話をしても仕方ない。これは俺にとって一世一代の勝負だ。絶対に全員無事で勝ってやるからな」
そう言ったツキノワさんは、ルイスの方を見ていた。
「大丈夫。必ずうまくいきますよ」
ルイスはツキノワさんに近づいて、手製の御守りを渡した。彼はこんなときでも、落ち着いてニコニコしていた。
「うん。何とかなる気がしてきた」
アタイも全力を出すよ!
ダンジョンの奥地で、ボスと戦闘を開始する。
盾使いの冒険者が協力して敵をおさえているところに、攻撃役が1人ずつ全力技を叩き込んでいった。
アタイも全てのマナを拳と脚にのせて、ボスに連続コンボを決めた。
自分の番が終わると、後ろで休んで、次の出番までに体力を回復させる。目の前では、A級冒険者の多種多様な必殺技を見ることができた。
途中で一度、ツキノワさんに渡されたルイスの御守りが、すごい光を放つことがあった。ルイスも一緒に戦っていたんだと思う。
そうして、攻撃を半日ほど続けていると、無事にボスが魔石に変わった。
「裏技みたいな理不尽な倒し方だったね」
「いいんだよ。これで危険なダンジョンを封じられるんだ」
ドロップはオリハルコンのインゴットだった。それと、普通のボスの倍くらいある巨大魔石を回収し、アタイたちはダンジョンを出た。
地上に持ち出したオリハルコンを見て、ここまで乗り込んでいた商人たちのテンションがおかしなことになった。
これでアタイたちの戦いが終わって、商人たちの戦いが始まったのかもしれない。
「問題は解決しました。ジャジャメリカに戻りましょう」
魔導トラックいっぱいに戦利品を詰め込んで、アタイたちはジスゴロスの街に帰った。
* * *
ジスゴロスに戻って1週間、緊張から解放された冒険者の散財で、街が景気づいていた。難度の高いダンジョンだったけど、その分稼ぎも大きく、終わってみれば街全体がうるおっていた。
アタイたちは冒険者ギルドに呼ばれて、ルイスからA級に更新されたギルドカードを受け取った。
「おめでとうございます。これでエルザさん、メリーさん、ササミさんの3人は正式にA級冒険者になりました」
「ありがとう」
A級のカードは金色で、今までのよりだいぶん派手だった。カードを出すとき目立ちそうだな。
「それと、今回討伐したダンジョンがドラゴンダンジョンでしたので、ギルドからドラゴンスレイヤーの記念バッジが贈られます」
アタイの手のひらに、ドラゴンをかたどった金属のバッジがコロンと置かれた。
「バッジは今回の討伐関係者全員に配られました。僕も着けてます」
ルイスの上着の襟元にも同じバッジがあった。
「おそろい……」
アタイの頬がニマーっとくずれる。
「この街のほとんどの冒険者とおそろいじゃないか」
「A級昇格よりバッジに感動しているエルザ姐さん可愛いっス」
メリーとササミも嬉しそうだ。
「もう1つ。商業ギルドが今回のドラゴンダンジョン討伐を記念して、お祭りを計画しています」
ルイスから可愛いイラストの描かれたチラシを受け取る。
「街の商店全体で、バーゲンセールをするそうです。それに、屋台や大道芸、花火もあるとか」
「へえ~。面白そうだね」
商業ギルドの奴ら、財布のうるおった冒険者から搾り取る気だ。
でも、分かっていても懐の温まった冒険者たちは、調子に乗って散財するんだろうな。
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