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ネコ娘、カチンとくる

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 街の南にある魔導列車の駅前広場で、アタイたちはルイスを連れ去った集団に追いついた。
 やたらと派手なドレスを着た女の一団は、目立っていてすぐに分かった。

「ルイスっ!!」

 腕を縛られたルイスを見て、アタイは叫んだ。
 周囲は夜だからか人通りが少ない。
 姉ちゃんとシセンが、敵の退路をつぶすように駅と大通りへの道をふさいだ。

「どう見ても誘拐の現場だね。犯罪だって分かってるよな?」

 メリーがドレスの女に向けて言うが、

「汚らわしい獣人が、私に話しかけないで頂戴」

 女は全く話が通じなかった。

「コイツはもともと俺たちの仲間だったんだ。訳あって離れていたが、連れ戻しにきただけだ」

 女の代わりに、チャラそうな赤髪のイケメンが答えた。なんかコイツも威張りん坊っぽくて感じ悪いな。

「ルイスがいなくなって、王女のダンジョン攻略がとどこおりました。彼の強さは王国に必要なのです。お引取りください」

 ミルクティー色の髪の男は、赤髪とは対照的に気が弱そうに見えた。でも、コイツもおかしなことを言っている。

 赤髪男も気弱男も、どちらも外見はすごく整っていた。けど、ルイスと違って、全く魅力を感じられない。
 アタイ、無条件に貴族っぽいイケメンが好きなわけではなかったらしい。

「王女? もしかして、ヒュムニナ王族のA級パーティー?」

 姉ちゃんがたずねると、

「あら。獣にまで名が知れ渡っているのね」

 ふんぞり返ったドレス女が答えた。
 たしか、以前ヒュドラのダンジョンに行ったときに、ヒュムニナ王族のボス攻略パーティーが不調でA級不足だって聞いてたな。それがコイツらか。

「A級冒険者がルイスを戦力と見てるのか? A級パーティーの頼みの戦力がルイス??」

 メリーが首をひねった。

「ルイス青年からは、よくてC級程度のマナしか感じないぞ?」

 シセンも怪しんでいる。
 ルイスはものすごくイケメンで、器用で、料理上手で、すごい人だけど、戦闘力はそれほどでもないはずだ。

 冒険者は自分のマナを使って戦うものだ。武器を持っていても、身体強化に多くのマナを消費している。
 魔石の魔力と魔道具で強化することはできるけど、冒険者の収入源が魔石なのだ。魔石を使って魔石をとっていたら、赤字になる。

 ……ん?
 よく見ると、王女のマナも、アタイたちより少ないようだ。
 もしかして、王族パーティーって、高価な魔道具の力でゴリ押ししてボスと戦っていたのか?
 ……口にするのはやめておこう。刺激したら、ルイスを奪い返すのに不利にはたらくかもしれない。

「あなたたち、見る目がないのね。ルイスは一見弱く見えるけど、本当は強いのよ」

 アタイたちを小馬鹿にして王女は断言するが、

「王女、それは誤解です。僕の強さは、以前にあなたが僕をパーティーから追放したときの評価で合っています。『ボス戦に連れていくには弱すぎる』、その通りなんです」

 ルイス自身が自分の強さを否定した。

「あら、しばらく放り出したから、拗ねているの? わざわざ私自身が迎えにきてやったのよ。もういいじゃない」
「いえ。そもそも、僕が期待通りの強さなら、こんなあっさり腕を縛られて無抵抗になってないでしょう」
「それは……、あなたも本音では、私のところに帰りたいからでしょ」
「…………」

 あー、カチンときたー。
 何あの女、ボコボコにしたい!

「いい加減にしろっ! ルイスを返せ!!!」

 アタイは思い切り怒鳴った。

「チッ……。うるさい獣ね。黙らせてやるわ」

 王女がポーチから、やたらと飾り立てられた杖をとりだす。
 ここで戦う気か!?

「!? ちょっと待って! 王女、その杖をよく見せてください!」

 その時、ルイスが驚いたように王女の手元の杖をのぞきこんだ。

「何? 獣を庇おうとしても無駄よ?」
「……いえ……、これは……。王女の不調の原因が分かりました」
「なんですって!?」
「このステッキは、ヒュムニナ王国の国宝で、最高級のボスの魔石でエネルギーを充填して使うものです。それに、雑魚モンスターの安い魔石のエネルギーが、無理やり注入されています」
「……え!?」
「王女が不調になったのって、僕が去ったあとじゃなくて、この杖をメンテナンスに出してからじゃないですか?」
「そういえば……、そうかもしれないわ」

 王女は仲間のイケメン2人と顔を見合わせた。

「それじゃあ、ルイスは……」
「僕には、何度も言う通り、追放されたときの評価通りの実力しかありません」

 高飛車王女とイケメン2人が気まずそうな顔になった。

「不調の原因は分かったんだろ? そろそろルイスを解放したらどうだ?」

 アタイが迫ると、ヒュムニナの一団がたじろいだ。
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