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ネコ娘、2枚目の腹巻きをもらう

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 砂漠ダンジョンに出現するモンスターは、アンデット系だった。南の暑い砂漠に、お化け屋敷みたいな迷宮ができた。
 ダンジョンはいつも通り5層で、各層のレアドロップに、空間拡張と保冷のついた魔道具が出た。1層だと保冷シート、2層が保冷バッグ(小)、3層が保冷バッグ(大)で、4層がクーラーボックス(小)、5層はクーラーボックス(大)だった。

「4層で戦おう。5層で戦闘に手間取るとドロップチャンスが減る。手数でレアを引くんだ」
「そうだね」

 4層の敵はスケルトンだった。アタイたちはサクサクと大量の骨を砕いていった。

 レアドロップは2日目と5日目に1つずつ手に入った。6日目は5層に移動してより良いアイテムを狙ってみたが、出なかった。


 7日目。ギルドの決めた探索最終日だ。
 A級冒険者がボス討伐に入り、ダンジョンを閉じる。

 多くの冒険者が最後の追い込みにダンジョンに潜る中、アタイたちは地上にいた。

「ルイスのかき氷の食べ納めの方が重要だ」
「もうダンジョンには入らないし、酒多めで作ってもらうっス」
「アンタたち、ほんと、いつまで経っても馬鹿だよね。まあ、いいんだけど」

 アタイたちは地べたに座って、お腹をタプタプにしながらかき氷をむさぼり食った。
 その時、ダンジョンから出てくるパーティーを見つけた。ボス討伐に向かったはずの、A級パーティーだ。

「ボスを倒したにしては、早くないか?」

 不思議に思って様子をうかがっていると、A級冒険者たちはギルド職員に話しかけた。アタイは聞き耳をたてる。
 職員はよその街所属の知らない人だったが、冒険者の方は顔見知りだった。
 西地区を拠点としている熊獣人のベテラン冒険者、ツキノワさんたちだ。

「ボスについて、予想外のことが分かった。リッチのくせに、魔法が効かない」

 死霊系のモンスターは、普通は物理攻撃より魔法の方がダメージを与えやすい。だが、ここのボスは逆で、物理攻撃が通って魔法攻撃を無効化したらしい。

「うちは、盾役、斥候に、魔法使い2人のパーティーだ。斥候の物理ダメージだけじゃ倒しきらなかった。物理ダメージディーラーが必要だ」
「なるほど。ギルド本部に連絡して、A級の物理アタッカーを探しましょうか?」
「いや。敵の攻撃は俺1人で安定して防げていたんだ。攻撃力が高めのB級をパーティーに混ぜればすぐに戦える。今ってA級不足だろ? ついでにB級に経験を積ませてしまえ」

 話しながらツキノワさんは周囲をぐるりと見回した。
 あ、目が合った!

「エルザじゃねぇか! ちょうどいい所にいたな。聞いたぞ、ヒュドラを倒したって」

 ニカッと大きな口でほほ笑んで、ツキノワさんが近づいてくる。
 彼は地元の大大先輩。これは断れないやつだ。

「エルザがいりゃあ攻撃力は足りる。報酬は魔石とアイテムの売り上げをメンバーで均等割りだ。ボス戦、来てくれるだろ?」
「……はい。よろしくおねがいします」
「よっしゃ!」

 ツキノワさんに肩をバンバン叩かれた。
 急だけど、行くしかないな。
 パーティーリーダーのツキノワさんは、凄腕の有名冒険者だ。盾持ちで敵を引き付けるのが上手く、敵の攻撃を漏らさない。参加してもアタイのリスクは低く、報酬で稼げてラッキーなくらいだろう。


「あの、ツキノワさんですよね?」

 不意に、屋台から出てきたルイスが、ツキノワさんに声をかけた。

「あん?」

 ツキノワさんがルイスの頭のてっぺんから足元までをいぶかしげな目で見る。そして、一瞬、目を見開いて「あー!」と彼を指さした。

「ルイスか! 10年ぶりくらいか!? さすがにでっかくなったなぁ」

 ツキノワさんはルイスの頭をわしゃわしゃと撫でた。

「知り合い?」

 仲の良さそうな2人に、ツキノワさんの仲間の冒険者がたずねる。

「ああ。昔、俺の世話になっていた先輩冒険者の息子だ」
「へぇ……」

 ルイスの親、冒険者だったのか。

「これからボス戦なんですよね。これ、持っていってください」

 ルイスはツキノワさんに、何枚か布のような物を渡した。

「これは、腹巻はらまき? いや、南部の暑い砂漠で腹巻はいらんだろ」
「ダンジョンは下層に行くほど気温が下がってました。それに、相手はお化けですから、お腹が冷えていると余計に怖く感じるかもしれませんよ」
「……まぁ、確かにダンジョンの奥はここよりだいぶん寒かったが……」

 冒険者は体力があるので、多少の寒暖の差があっても、こまめに脱ぎ着したりしない。でも、ダンジョン内は地上と違って涼しかったから、一般の人だったら何か羽織るのかもしれない。

「それじゃ、気をつけていってらっしゃい」
「ああ、任せておけ」
「行ってくるね、ルイス」

 アタイはツキノワさんパーティーと一緒にダンジョンに潜っていった。
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