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ネコ娘、バーベキューを楽しむ

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 肉の入った大袋と野菜を持って、アザレア大姐さんの家に到着した。
 大姐さんは、もとはA級までいった冒険者だ。ずっと前に怪我で引退したが、町のはずれにでかい家を持っていて、託児所を営んでいる。多くの冒険者が、大姐さんに子どもを預けて仕事に出ていた。

 子どもを育てるのは、引退した冒険者の仕事だ。現役バリバリなら、高額払って子どもを預けても、ダンジョンに潜る方が実入りが良いのだ。
 大姐さんの大きな家では、怪我で活動できなくなった冒険者が何人か働いていて、たくさんの子どもを預かっていた。

 ただし、冒険者は危険な仕事だ。
 アタイの両親は早くに死んで、アタイは親の顔をぼんやりとしか覚えていない。大姐さんが世話してくれなきゃ、幼いアタイは路頭に迷っていただろう。
 そういう子どもは多く、大姐さんの家は、託児所であり孤児院でもあった。

「エルザにメリーと、そのツレか。2週間ぶりくらいかね」
「「大姐さん、お久しぶりです」」

 家の広い庭で、子どもたちと遊んでいた大姐さんに挨拶した。大姐さんはワニ獣人で、細長いひし形の瞳や口元の牙が恐ろしい大柄の女性だ。しかし、子どもたちは恐れることなく大姐さんに群がっている。中身はみんなの母ちゃんなのだ。

「大姐さん、ダンジョンの肉を持ってきたんだ。バーベキューしようぜ」

 メリーが大姐さんに、得意げに肉の袋を見せた。

「あん? 今日の昼かい? ……まあ、いいだろう。昼飯の下ごしらえは、晩にまわせる。モナ、ちょっと来てくれ」

 アタイたちは厨房から出てきたモグラ獣人のモナさんに野菜と肉を渡した。

「材料をてきとうに切っておいてくれ」
「あいよ」

 モナさんは食材を持って家の中に消えていった。

「アンタたちはバーベキューの準備だ。鉄板や網の場所は変わっていない。手順は分かるだろ?」
「ああ。昔もよくやったからな」

 アタイが子どもの頃にも、気の良い冒険者がときどき肉を持ってきてくれていた。

「大姐さん、ついでに、コイツ!」

 メリーがルイスの背中を押して大姐さんの前につきだした。

「えらくキレイなヒュームだね。誰だい?」

 ルイスの姿に、大姐さんがちょっと驚いて見えた。珍しい。

「冒険者ギルドに新しく入った受付のルイスだ。引っ越してきたばかりだから、知り合いを増やしてやろうと思って連れてきた」

 メリーはしれっとルイスの肩に腕を置きながら説明する。アタイと同じ環境で育ったはずなのに、なんでメリーはあんな簡単にルイスと距離を縮められるんだろう。

「ふうん。うちには他に何人か大人がいるし、子どもたちもけっこうな情報通だ。話し相手が欲しいならいつでも来な。手土産持参なら歓迎してやるよ」
「ありがとうございます」

 ルイスも無事、大姐さんに受け入れられた。
 さあ、バーベキューの準備だ。
 そう思ったのだが、話を聞いていた子どもたちが、すでに物置からテーブルやら炭やらを運んできていた。みんな、食い物が関わると働き者の良い子になる。

 庭に煉瓦レンガで備え付けられたコンロに、メリーが魔法で火をつける。炭火が良い感じになる頃、モナさんが切った肉を持ってきてくれた。

「さあ、じゃんじゃん焼くよ~」

 子どもたちは大はしゃぎ、アタイの尻尾はゆらりゆらりと揺れていた。


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