異世界版ヒーロー【魔石で変身 イセカイザー】

鹿

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27 貴族

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「おい!起きろ!」

アスカは顔に水を掛けられ目を覚ました。

「ここは……くっ!頭が!」

後頭部に痛みが走り顔を歪める。

「よく眠れたか?」

視力が戻ると目の前には、教会でりんごを当てて追い返した貴族ダズカスが、気色悪い笑みを浮かべ正面の椅子に座っている。その両サイドには護衛の騎士ゲレイドと、ローブを着た男が立っていた。

「ああ、良く寝たよ。ハァハァ。目覚めは最悪だけどな。そ、その顔のせいで吐き気がするよ。寝起きに見る顔じゃぁないな」

「ワシも今日は、グ~~~ッスリ、眠れそうだ。貴様の泣きわめく声を子守唄にしてなぁ。ヒッヒッヒ」

ホイッスルのように甲高い声が頭に響く。

アスカは痛む後頭部を右手で押さえると、手にはベッタリと血が付着した。しかしこれは、アスカにとって僥倖であった。

(ん?手が動かせる)

自分の現状を確認して安堵した。
腹部を椅子の背もたれに紐で縛られている。しかし拘束する物はそれだけだった。両手両足は自由に動かす事が出来る。人がいなくなれば変身出来る。

(よし!こいつら俺を侮ったな!)

「悪夢を見せてやるよ!ションベンちびるなよ」

「ヒーッヒッヒ。粋がれるのも今のうちだ。ワシに逆らった事を後悔させてやる」

「俺を甘く見ない方が良いぞ」

「ワシはなぁ。貴様のような底辺のゴミでも、全力で殺す主義なんだ。いいか?貴様こそ、ワシの全力を甘く見るなよ」

自由に両手を動かす事を知り、余裕が出てきたアスカは周囲を確認した。

(何だここは。牢屋なのか?)

レンガのような石で四方を囲まれた、10畳程度の薄暗い部屋だった。壁には鎖が二本垂れ下がっており、その先には手錠のような拘束具が付けられている。反対の壁際には鉄製の机があり、様々な工具が乱雑に放置されていた。

(趣味悪りぃ)

アスカの額から一筋の汗が流れ落ちた。

「ミミ聞こえるか?」

アスカは小声で懐に忍ばせたミミに話しかけた。
しかし返事は無かった。慌てて首元の服を伸ばし、中を確認したがミミの姿はなかった。

「ミミ!くそっ!ミミをどうした?」

「ミミ?ああ、レアなモンスターの事か?丁重に保護しているよ。オークションに出して売り飛ばす為にな。ヒッヒッヒ」

「何処にいるんだ!」

「言う必要は無い。ヒヒッ。どうせ貴様は死ぬんだからなぁ」

「この屋敷の中にいるんだろ?探し出す」

「ここから出られる訳がないだろう。頭を強く打ち過ぎたか?ゲレイド!」

「いえ。決してそのような事は。死なないように優しく殴りました」

「底辺だぞ、次からはもっと、も~っと優しく殴るんだ。危うく殺してしまうからな。ヒーッヒッヒ」

三人はアスカを嘲笑い始めた。

(今に見てろよ!その汚い笑い声を止めてやる)

「話は終わりか?だったら一人にしてくれないか?」

「予告をしようか。貴様は必ず命乞いをする。泣きながらなぁ。申し訳ありませんでしたダズカス様。二度と逆らいませんとな。優しいワシはどうすると思う?きっと命だけは助けてやるんだろうな。ヒーッヒッヒ」

アスカは手首に違和感を感じ視線を落とすと、右手首には見慣れない腕輪がはめてあった。

「それは無力の腕輪。一切スキルが使えなくなる。囚人用だ。高額だから、底辺には手に入れる事など出来んだろうなぁ」

貴族たちは笑い続けた。

(マジか!これじゃあ変身出来ない。くそっ!)

アスカは頭が痛むフリをしてイヤーカフを触った。

「本当にスキルは使えないのか?」

「ワシが何のために嘘をつく必要があるんだ?」

ナレーションは返事をしなかった。

(おい!返事をしてくれ!ヤバイ!変身出来ない)

超亜空間から魔石を取り出そうと手を叩いた。

「虫でもいたか?それとも今のがスキルの確認か?ヒーッヒッヒ。顔色が悪くなってきたぞ」

(嘘だろ……)

「ヒーッヒッヒ。可哀想に、顔面蒼白だな。さっきまでの勢いはどうした?」

「……くそっ」

「理解したか?諦めたか?つまらんなぁ。ゲレイド!やれ!」

「はっ」

「待て!そうだ。ワシの顔にりんごを当ておったな。あれは痛かった。貴様にも同じ苦痛を与えよう。ゲレイド。左の頬だ」

「承知しました」

ゲレイドはアスカの前まで歩くと、右の拳でアスカの左頬を殴った。

「ぐはっ」

その衝撃でアスカは椅子ごと倒れ込んだ。

(痛ぇ!マズいぞ。どうする)

「おいおいゲレイド。優しくしないと、死んでしまうではないか」

「そうでした。申し訳ありません。うっかりしてました。おい!起きろ!」

ゲレイドはアスカの首元を掴み、椅子ごと持ち上げその場に再び座らせた。

「左頬だぞ」

再びアスカは、左の頬を殴られ椅子ごと倒れた。
ゲレイドはアスカを座らせると、左の頬を殴った。

それは、何度も何度も続けられた。

「ヒーッヒッヒ」

痛みで気を失うが、水を掛けられ強制的に起こされる。
そしてまた左の頬を殴られる。

「や、やめてくれ……」

アスカの左頬は、腫れ上がり、ざくろのようになっていた。左目は潰れ、殴られる度に血肉を撒き散らした。左耳は既に聞こえていない。

「も、もうやめてくれ……」

「は?その言葉はワシの予告と違うな?しかし予告通りに事が進めば、ミハエルに回復させてやろう。どうだ?」

「ふざ、けるな……」

「続けろ」

ゲレイドは容赦なく腫れ上がった頬を殴り続けた。

「あがっ……」

口からは血を吹き出し、口内も歯が折れグチャグチャになっていた。

「まだ聞こえているか?その口ではもう喋る事もできんな。ワシはまだ全力を出してないぞ。しかしワシは優しいからなぁ。予告は覚えているか?予告通りにすれば許してやろう。だが痛いだろう。苦しいだろう。優しいワシは、これ以上苦しまないように、ちゃんと殺してやろう」

(お、おれは、死ぬ、のか……シスター・フラン、すまない)

片目になり、霞む目を凝らしてダズカスを見ると、驚きの表情をしている。

「なにもの……きさまら……のか」

何かを話しているが耳鳴りがして聞こえない。
ゲレイドも驚いて何かを話しているが聞こえない。

「どこから……」

「ダズ……さがって……」

三人はアスカの後ろに向かって叫んでいる。

(なんだ?おれの、う、うしろに、だれか、いるのか?)

振り向く力さえ残っていないアスカの右側を、誰かが通り前に出てきた。

刹那、ゲレイドは吹き飛びミハエルに当たると、二人は奥の壁に叩きつけられた。

(なにが、起きた……)

アスカの残った右目に映し出されたのは、緑の肌をしたあの人だった。

「シスター……フラン?ど、どうして……ここへ」


『ダズカスの指示で、拷問を受けるアスカ。
それは、左頬のみを執拗に殴られるという、陰湿な仕返しだった。
しかし、死を感じたその時、フランらしき人影が救助に現れた。
耐えろアスカ!忍べイセカイザー!
次回予告
救助』

「耐え忍んだよ!ハッキリ見えないが、シスターフランが助けに来てくれた!」
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