愛鳩屋烏

林 業

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中学

12

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カラスはお茶を啜る。
「いい加減、あの従兄弟君と話をしとかないとなぁ」
「何を!」
「そろそろお話をしないと面倒なこと仕出かしそうだったからさ」
「いや。だからなんの話!」
首を捻りながらその笑顔を眺める。
いや。もろ好みの顔立ち。
その唇にキスしたいと見つめる。
「とはいえ、ああいうタイプと俺は相性悪いからなぁ」
「相性」
そんなことを言われると、体の関係についての相性かといらぬ想像をしてしまう。
いや。従兄弟との相性が悪いのはいい事である。
自分とはーーー。
「体関係じゃないよ。話し合いの席に使えるまでは簡単。でも、話をしても右から左に抜けて、自分の都合のいいことだけ頭に残るタイプとの相性は殊更悪いんだよね。極力会話はしないようしているんだけど、話しかけてくるんだよねぇ。しかも向こうは覚えない」
タナカは想像していたことを見透かされて顔を背ける。
そんなに顔に出やすいのかと思わず押さえる。
「愛想よくして接してもそのへんの雑草ぐらいの認識だろうね。都合の良いように利用されてポイかな。」

「雑草っていう植物はないって知ってた?」
「知ってるけど自分に興味のない植物は雑草でしょう?知らずのうちに利であっても損であっても。植物の種類を全種類覚えれる人間やそれを知る学者であれば話は別だけど。オオカミさんはそのへんの雑草を一々あれはフグリと、タンポポがある。オナモミもあった。って示すの?」
「ごめん。知識披露したかった」
「あ、いや。こっちこそごめん。つまるところアゲハ君、彼にとって自分は利のない存在ってことだから、雑草の言葉に耳を傾ける人はいないよね」
「むしろ喋んないもんだし」
「でしょぉ」
「カラスに手を出されてるのか?」
「いや。アゲハ君は、オオカミさんを馬鹿にしてるからちょっと許せない」
「あ、ありがとう」
してたか?と思いつつも怒ってくれたことにお礼を告げる。
「大体窮屈だからなぁ」
「窮屈?」
「話を聞いてくれない人、話がすれ違う。理解されないから黙る。っていうのはどうも性格的に合わないのか体壊しかけてさ」
「大丈夫なのか?」
「今は鬱憤晴らす方法もあるよ」
笑顔に、そっかと頷く。
「ともかく従兄弟君捕まえるか」
座りっぱなしだった体を伸ばしてカラスは笑う。


「そういえばカラスってどこのクラスなんだ?」
「あぁ。俺保健室通学しているからね。って、どこのクラスだっけ」
思い出そうとして、思い出せないことに気づく。
「今度先生に聞いとく」
「お、おう」
「おい。カラス」
「はいはーい」
犬飼が顔を出し、カラスは返答する。
(二人は付き合っているんだろうか)
思わずそんなことを考える。
「あははは。オオカミさん。気持ち悪いこと考えるのやめてよ。何が楽しくてこんなウドの大木と付き合わなきゃなんないのさ」
カラスが心を読んだように笑っている。
「気持ち悪いのは俺も同意だが笑顔で言うんじゃねぇよ」
犬飼はそんなカラスに同意しながらも羽交い締めを始める。
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