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おまけ 124
しおりを挟むけれど、物資も少なく隊が合流したとは言え人数も多くないこの状況で我々ができることは、生きて帰り魔人の情報を事細かに残すことだ。
そしてそれを元に対策を練り、そして改めてこの脅威となる魔人を排除しなくてはならない。
それにここには、保護しなければならない人もいる。
「先代巫女のエステスを確保しろ! 暴れるならば拘束を!」
指示を出しながら時折思い出したように振り下ろされる触手に対して火薬を投げつけ、切りかかる。
大きさのせいもあるのだろうが巨大化していく魔人の皮膚は固く、今までのようには素直に攻撃が通らなくなってきた……と言うのが率直な感想だった。
「ゃっ! 私はッ! 放せ!」
魔人の向こう、触手に守られるようにしていたため、もしや巨大化した魔人に潰されているのではとひやりともしたが、幸いだったようでエステスは隊員に捕まって逃げようと必死に身を捩っている。
「あの短剣、刺さるか?」
「……わかりません、同じ個所を狙って……そこばかりを傷つければあるいは……」
そうでなければ、安易に突き刺すと短剣の方が折れてしまいそうだ。
武器そのものが壊れてしまうと、そこに聖別で付与された力自体も霧散する。そうなってしまったら、ダンクルが言う作戦はどうにもできなくなってしまう。
「俺はこの短剣を刺してから離脱します。ダンクルは先代巫女と共に山を下りてください」
「おい、合図用の笛は私が持っているんだぞ」
「じゃあ寄越してください」
さっと手を差し出すも、ダンクルは話に出た笛を俺の手に乗せようとはしない。
すぐ傍で爆発が起こり、隊の中には遠巻きに見ていた魔物がにじり寄ってきたのに気付くのが遅れて負傷したものも見受けられる。
そんな質の悪い冗談に縋っている場合ではないのだ。
「へ ダンクルっ!」
きつい声を出すと、ルキゲ=ニアを軽々と肩に担いて魔人をしゃくる。
「俺が削ぐ、閣下がタイミングを合わせて火薬をぶち込め」
「なに をっ勝手なことを!」
「謹慎でもなんでも、甘んじて受けてやるよ」
そう言うとダンクルは男らしい、恐ろしいほど整った顔にゆったりとした笑みを見せてからさっと走り出した。
隊は、退路を確保しようと瘴気と魔物に切りかかる者と、魔人を注視する者、それからエステスを取り押さえようとする者とに分かれた。エステスは隊員が手を伸ばすと素早い動きで触手の裏に入り、まるで翻弄するように逃げ続ける。
「かぇ 帰らない! 俺は帰らないんだから!」
その声はまるで遊園地からの帰宅を嫌がる小さな子供のようだった。
「先代巫女様、ご不快は重々承知ではありますが、今このままでは御身の安全を確保しきれません」
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