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おまけ 123
しおりを挟む「同じ巫女の力は引き合うらしい。それを目印として魔人に刺し、合図を麓に送ればミロクがそこに神の力を落とすことになっている」
「な 」
「ミロクの力は雷のように顕される。その副次的効果は轟音と 」
「炎、ですね」
そう言うとダンクルは大仰に頷き、「あと衝撃もだ」と付け加えた。
魔人の大きさに隊の者は怯むことはせず、火薬を使い、削り取り、そしてまた焼くを繰り返す。
けれど……────
それは幾度目かの魔人の上げた声だった。
「 ────っ! 何かおかしいです!」
そう上がった声の語尾が悲鳴に掻き消える。
何事かと辺りの気配を慎重に窺うと……ざわりと森が動いた。
もう冬の訪れを感じさせて、鮮やかな衣を脱ぎ捨ててうら寂しくなっていたはずの山の木々が……
黒い。
「ぅ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛────っ!!!」
何度目かの……身を削られることに対する悲鳴が響く、そうすると黒い森がざわりと揺らめいて……
「これは……」
悲鳴ではない。
これは……仲間を呼ぶための雄叫びだ。
そう思った瞬間、思考に覆いかぶさるように悲鳴が聞こえた。
それは隊の一人の足に触手が絡みついていて……
傍にいたスリーマンセルの仲間が触手を切り落として事なきを得たようだったが、それでもそのことは俺達の闘志にわずかに傷をつける。
さっと辺りを見回して……
すべてが黒に埋まって行く。
「閣下!」
叫ばれてそちらを見ると、ラムスが指をさしている方を見上げて青い顔をしている。
ラムスは前回のゴトゥスの戦闘の際にも怯えずに勇敢に切り込んでいったほどの胆力のあるものだ、それが顔色をなくして……
「どこまで大きくなると思う?」
ダンクルに問われて、こうも異常事態でなければ首を傾げながら肩の一つでもすくめてみせたかもしれなかった。
風船が膨らむかのように膨れ上がるように巨大化していく魔人に、さすがに隊にざわりとした異常な緊張が走る。それはともすればほんのわずかなことで均衡を崩してしまう、そんな雰囲気だ。
鈍色の肌が膨らみによって透け、中の血管や血管以外のうごめく何かを薄く透けさせる。
まるでその様子は寄生虫が体の中に詰まりきったがために腫れあがっているのではと思わせた。
「 閣下……ど、されますか……?」
問われて答えが欲しいのは自分だと言いそうになったのを、魔人を睨みつけることで飲み込む。
幸い体が大きくなるに比例して動きは愚鈍化していってはいたため、俺は躊躇なく「退避だ!」と腹から声を出す。
ここでしっぽを巻いて逃げかえることをよしとしない者も出てくるだろう。
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