OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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狼の枷

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親ですら「その他」のように興味なく接していた自身を見てくれる存在に、あかの胸がちりちりと灼けるように痛む。

「こ  ち、見て」
「なんだ」

 問い掛ければ、全ての意識をこちらに向けて尋ね返してくれる。

 初めての発情でぐずぐずになった思考でも、欲しがるままに大神が快楽を与えてくれた事は覚えていた。甘えるままに、欲しい物を貰えた快感は脳を痺れさせて、もう思考は溶けて消えかけていた。

 この人は、自分の欲しい物を与えてくれる人だと、本能が囁きかける。

「 ゎ かってる、くせに  」

 甘やかしてもらえる相手に、思考を手放したあかはだだっ子のようにぐずり始めた。

「たす  たすけ、 てっ」

 叫んだ拍子に涙が頬を伝った。

「くるし の、 助けてぇ   !」

 大神に連れてこられた時ですら、毅然と言い返していた姿はそこには欠片もなく……

「   こんなことしたくない  」

 けれど、力の入らない手は伸びて大神のベルトを外そうと躍起だった。

「 なのに、  あんたが   嫌なのにあんたがっ!きもち ぃいの、っおしえ  ふ、ぅ    オメガなんかになりたくない!ヒートにも!  知りたく、なかった  気持ちぃの    っ」

 けれどスーツを乱して、擦り寄る。

「あんたが  教える からっ!」

 その叫びが、今あかが出せる一番大きな声だったんだろう、叫び終えてからは喉がひゅーひゅーと鳴って話の形をとる事が出来なかった。

 あかの頼りない手がぽす と小さく大神を叩いた。力の籠らないそれに絶望しか生まれず、その逞しい胸板に縋りついて嗚咽を上げる。

「  そうだな。お前がオメガなのも、ヒートなのも、気持ちがいい事を知っているのも全て俺が悪い」

 あやすように言い、大神はあかを抱え上げる。

「俺が悪い」

 太い皮の厚い指が目尻の雫を拭って頬を撫でた。

「だから泣くな」
「 この お腹の奥がきゅうってなるの、ら なん とかしてっ  」
「ああ、助けてやる」

 しゃくり上げてしがみつくあかに見えないように、大神は深く眉間に皺を寄せた。その小さな苦悩の瞬間を見ずに、あかは大神にキスを強請って舌先で硬そうな唇を舐める。

「待て、火が危ないだろう」
「ぅ、やら 」

 唇を舐め、とろりとした表情で自分から離れようとする腕に縋り付く。

「火傷するぞ」
「あっつい の?  熱いの、はコッチ ぃ」

 こちらを見る目はすでに平常心の欠片もなく、大神は手早く煙草を消して灰皿へと投げ入れた。
 その間にもあかの手が服を乱して中へ潜り込もうとしてくる。
 
 消えていく煙草の煙の代わりに、あかから垂れ流される濃い匂いに大神は眉間に皺を寄せた。

「濃い な」
「ぅん? な に   」
「匂いが……」

 ちゅうっと音を立ててあかが首筋に吸い付いて来る。



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