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しおりを挟む「・・・美鈴ちゃん。ちょっと顔が硬いよ!もっと笑顔!笑顔!」
そう、カメラマンさんに言われて、私はハッとなって笑顔を作る。
「うん!いいね!そんな感じだよ!」と言ってカメラマンさんは満足そうに笑った。
・・・旅行から戻った翌日。
私は雑誌の撮影の為に、出張で都内のスタジオに来ていた。
女性向けファッション誌の表紙用の撮影らしい。私の他に何人かのモデルさんやスタイリストさんがいた。
今日から2日はモデルの撮影が丸一日入っているため、学校も休む予定である。
「・・・はい、OKです」とスタッフさんから声がかかる。
「ふぅ・・・」と私は思わず息を吐いてしまう。
そんな私に声を掛けてくる人物がいた。
「美鈴ちゃんお疲れ様」とマネージャーさんが声を掛けてきた。
「お疲れー」と私も返す。
彼はスポーツドリンクのペットボトルを私に渡してくると首を傾げてきた。
「今日はちょっと顔が硬いねー?もしかして緊張している?」と彼は聞いてきた。
「うん。まあ、ちょっとね・・・」と言いながら私は受け取ったペットボトルを開けて口を付ける。
冷たい液体が喉を通る感覚が心地よかった。
「そっか・・・まぁ、気楽に行こうよ。先は長いんだからね」と言って彼は私の頭をポンポンと軽く叩いてきたのだった。
「・・・そうね。ありがと」と私は彼にお礼を言う。
・・・それから、撮影自体は順調に進んでいった。
しかし、時折昨日の事が頭の中によぎって集中できない時が出てきてしまう。
1日目の撮影が終わり、スタッフや他のモデルさんたちとの食事会の間もずっと頭に思い浮かんでいたのは、あの春江さんの表情だった。
「美鈴ちゃん?大丈夫?」と隣に座ったスタイリストさんに声を掛けられた。
「・・・え?あ、ごめんなさい!大丈夫です!」と私は慌てて答える。
すると彼女は微笑んでくれたが、その目はどこか心配そうな目だった。
(・・・いけない)と思い、私は食事に意識を向けることにする。
そして、食事会が終わり、私は用意されていた都内のホテルの部屋に入った。
シャワーを浴び、「・・・ふぅ」と一息つく。そして、ベッドに入って天井を見上げるが中々寝付けないでいた。
(・・・春江さん、今頃どうしているんだろう・・・)と私は考えてしまう。
彼女の切なそうな表情が忘れられない。
・・・何とかしてあげたいなぁ・・・という思いが昨日より強くなっているのを感じる。
そんな事を考えつつ、いつの間にか私は眠りについてしまっていたのだった・・・。
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・・・そして、私は寝ながら違和感に気づく。
なんか・・・ベッドがとても硬い気がするのだ。
「・・・ん?」と私は寝ぼけ眼で周りを見渡す。
そこは先ほどまで宿泊していたホテルの部屋ではなかった・・・。
目を覚ましたら、夜空の星が私を照らしていた。そして、なぜか私は硬い石畳の地面の上で寝そべっているようなのだ。
「・・・あれ?ここどこ?」と私は首を傾げる。
また、夢でも見ているのだろうか・・・?しかし、夢にしてはリアルすぎる気がする。まるで現実みたいだ・・・。
この夢には見覚えがある。そう、それは私が巨人になる夢の時にいつも訪れるとてもリアルな感覚だった・・・。
「私、またあの夢を見ているのかな・・・?」と私は呟く。
ここ数日は見ていなかったから、ちょっと驚いてしまった。
いったいどういうタイミングで見るのか全然見当がつかない。
「まあ、いいや。それより、ここなんか見覚えがあるわねぇ・・・」と言い、私はあたりを見渡した。
すると・・・そこには、あの神社があった。
「え?なんで・・・?」と私は呟くが、理由は分からない。
ただ、この夢は私が巨人になる夢だ。ということはまた何か起こるのだろうか?
「・・・まあ、とりあえず行ってみましょう」と私は呟き、その神社に向かうことにしたのだった・・・。
そして、神社の鳥居をくぐり、辺りを見回すと境内の中の一角に住居らしき建物が見えた。
私はふわりと浮かび上がると、空から中の様子を伺ってみたのだった。
不思議なことに遮蔽物があるというのに私は中の様子が手に取るように分かった。
住居は木造式の2階建ての建物のようだ。
私が中の様子を探っていくと、2階の一室に誰かが眠っている様子が見えた。
間違いない・・・春江さんだった。彼女は布団の上で誰かと一緒に眠っているようだ。
春江さんの妹さんだろうか?年はたぶんまだ小学校低学年くらいで、8歳か9歳くらいのとても可愛らしい女の子だ。
だけど、春江さんと同じで目鼻顔立ちが整っていて、将来とても美人さんになるだろうと思った。
女の子は春江さんに抱かれてすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
一方春江さんの方は・・・涙を流していた。
「・・・うぅ・・・ごめんなさい・・・結衣」と彼女は寝言を言いながら妹さんを抱きしめていた。
私は思わず息を飲む。春江さんはとても苦しそうな顔をしていた。まるで悪夢を見ているように・・・。
「神様・・・どうかこの子だけは・・・!」と春江さんは寝言を言っていた。
「・・・どうか・・・この子だけは・・・」と彼女は繰り返し呟いていた。
・・・恐らく、春江さんは妹さんを守るためにずっと一人で頑張ってきたのだ。
そんな春江さんの様子を見て私は胸が締め付けられるような思いになる。
私はもういても立ってもいられなかった。
辺りを見回すと、私の眼前にあの大岩が存在感を主張してきた。
私はさらに高く舞い上がると、そのまま大岩に向かっていった。
そして、その前に着地して、眼前に広がる大岩を睨みつけた。
その時、何故か大岩が私を嘲笑っている事が分かったのだ。
どうやら、私のことを認識しているらしい。
「・・・ふーん。昨日の私と同じだと思ったら、後悔するわよ?」と私はニヤリと笑って大岩に言い放つ。
すると、私の言葉に反応するかのように大岩は振動し始めたのだった。
『・・・お前など恐れるに足らん。お前も呪ってやろう』と大岩が言ったような気がした。
「・・・ふーん?そう?やってみれば?」と微笑んでやる。
そして、私は指をパチンと鳴らしたのだ!
次の瞬間、私の身体は光り輝いた!
そして、グググ・・・と身体が大きくなっていく。
大岩よりも大きくなり、やがて神社の境内全体を見下ろすほどの大きさになった時、私は身長180メートルの巨人の姿になっていた!先日の夢よりもさらに私は大きくなっていたのだ!
『・・・なんだ!?貴様は!?』と大岩が驚愕の声を上げる。
「ふふん?驚いたかしら?」と言って私は不敵に笑ってやった。
そして、私はゆっくりと大岩に向かって手を伸ばし、その巨岩をガッシリと掴む。
私はニヤリと笑うと、そのまま大岩を持ち上げ、両手の手のひらに乗せた。
「ふふっ・・・私の手のひらに乗っちゃったわよ?」
と言って私はクスクスと笑う。
『・・・離せ!この小娘が!』と大岩は思念波で叫んでいる。
しかし、私は気にせずにそのままギュッと大岩を握る手に力を込めた。
ミシッという音が鳴り響くと同時に大岩から苦悶の声が聞こえてくる。
・・・しかし、流石に大岩は硬かった。
180メートルの巨人になった私がかなり力を込めて両手で締め上げているというのに壊れそうもない。
信じられない程の硬さだった。
「なるほどね・・・こんなに硬いとは思わなかったわ。これじゃ人の手に余るわね・・・」と私は呟く。
すると、大岩は私の手の中で再度振動する。
『ふっ・・・その程度の力で我は砕けぬぞ?小娘』と大岩が余裕そうに思念を送ってきたのだ。
「・・・ふーん。そうなんだ」と私は首をひねり、続けて言った。
「じゃあ、もっと大きくなっちゃおかな♪」と私は笑ったのだ。
大岩は『なに・・・!?』と叫んでくる。
「・・・これが限界だと思ったの?笑えるわね」と私は大岩を嘲笑ってやる。
・・・そう、私はもっと大きくなれる。今の私はそれが感覚的に分かるのだった・・・。
「ふふっ・・・見てなさい?」と言うと、私は再度指をパチン!と鳴らしたのだ!
その瞬間、私の身体がさらに大きくなっていく!
ググ・・・と私の身体は大きくなり、大岩を片手で握り潰せるほどになった!
『ぐわぁああぁ!!』という叫びが大岩から聞こえてきた。
私はニヤリと笑ってやる。そして、さらに大きくなっていく・・・。
「どう?これが今の貴方の姿よ?」とちょこんと手のひらに乗っている大岩を目の高さまで持ってきて言ってやった。
大岩の大きさは5cmくらいだろうか?今の私の手のひらに楽に収まってしまう大きさだ。
そんな小さな存在になってしまったのだ!
『・・・きさまぁぁ・・・!』と大岩が怨嗟の声を上げる。
「あら?悔しそうねぇ・・・」
そう言って私は嘲笑の笑みを浮かべる。
「・・・ふふっ、じゃあ、今度はどうかな?」と言いながら、ゆっくりと手のひらに力を込めていった・・・。
『・・・や、やめろぉお!!』と大岩は叫ぶが無視して力を込める。
すると、大岩は再度振動し始めた!どうやら私の手のひらの中で必死に抵抗しているつもりらしい。しかし、無駄な足掻きだった。
「ほらほら、頑張って!頑張らないと潰れるわよ?」と私はクスクスと笑う。
『・・・ぎゃああああ!!』と大岩は絶叫するが、私はそのままググッと力を入れる。
ミシミシという音が大岩から聞こえてくる。
「ふふっ、そろそろ限界かしら?」と言いながらさらに力を込めた!
すると、バキッ!!という音と共に大岩が砕けたのだ!
『た・・・たすけて・・・』という声が最期に聞こえてきたが、私は構わずぎゅうううう!!と大岩を握り潰す。
そして、グシャ!!という音と共に大岩は砕け散ってしまい、完全に沈黙してしまった。
「・・・ふぅ」と私は息をつく。
手のひらを上に向けると、そこには小粒になった大岩の残骸だけが残っていた。
パラパラ・・・と大岩の破片が落ちていくのが見える。
私は手のひらを払って、それらを足元の地面に落とすと、大岩だった残骸の上に足を踏み下ろした!
そして、そのままグリグリと踏み潰してやった。
グシャッという音と共に大岩は粉々になり、砂粒のようになって消えていったのだった・・・。
「ふふっ・・・これでスッキリしたわ♪」と私は満足気に笑う。
しかし、私が暴れてしまったせいで美しい神社の境内が荒れてしまったようだ・・・。
大岩はともかく、境内の方は直しておかなくちゃね・・・と私は思い立ち、足元に意識を集中させて念じる。
すると・・・神社は見る見る内に修復されていったのだった。
「・・・よし!こんなもんかな?」と私は満足げに言うと、元の大きさに戻った。
そして、空中に浮かび上がり、再度春江さんたちがいる建物の中に目を通す。
「すぅ・・・すぅ・・・」と春江さんの寝息が聞こえてきた。
もう、悪夢にうなされてはいないようだった。
「よかった・・・」と呟き、私はニコリと微笑む。
そして、そのまま神社を後にしたのだった・・・。
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