モデル女子高校生の創世記~生誕編~

異世界サボテン

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「・・・ん?」と私は目を覚ます。どうやら夢から覚めたようだ。


 辺りを見回すと、そこはホテルの部屋の中だった。

 そうだ。昨日は都内に出張で、ロケで用意されたホテルに宿泊したのだった。


「あーーーーよく寝た!」と背伸びをしながら私は起き上がる。


 ・・・なんだかすごく気分が良い。

 ずっと煩っていた胸のつかえが取れたような気分だった。

 なんでだろうと思いながら、昨日の夢を思い出す。


(あーそっか、私、あの大岩をぶっ潰す夢を見たんだったわね・・・。だから気分がいいんだ)と私は納得する。


 あれが正夢になってくれたらいいんだけどねぇ・・・と私は思う。

 だが、なにはともあれ、これで気に病むことは少しはなくなるだろう。

 仕事に集中できるというものだ。


「・・・さてと!今日もお仕事頑張らなくちゃね!」と私は呟き、ベッドから降りて出かける支度を始めたのだった・・・。











「はい!OKでーす!お疲れ様でした!」


 撮影スタッフの、終了を告げる声がスタジオに響き渡る。

 私はカメラ目線にポーズを決めていた手を下ろし、「ふぅ・・・」と息を吐いた。


「美鈴ちゃん!お疲れ~」とマネージャーさんが私を労ってくる。


「お疲れ~」

「いや~、美鈴ちゃん、本当に良い表情するね。この写真なんか最高だよ!」

「ふふっ・・・ありがとう!」


 私は少し照れながら、マネージャーさんにお礼を言った。


「じゃあ、美鈴ちゃん。今回はこれで終わりだから、今後のスケジュールはまた連絡するね~」

「うん!了解!」


 私は元気よく返事をして笑顔を見せた。

 そして、更衣室で私服に着替えた後、そのまま撮影スタジオを後にする。


「ふぅ・・・今日の撮影も長かったわね・・・」


 私は長丁場の撮影に疲労を感じながらも、満足感が身体を満たしていた。

 なぜなら、今日の撮影は昨日と違い完璧だった。

 やっぱり昨日のすっきりした夢の影響かしらね?

 今日は笑顔がバッチリ決まっていたのだ!

 先ほど撮られた写真を自分でも見たのだが惚れ惚れするほど良かった。

 これで私の人気はさらに上がることは間違いない。

 帰りのタクシーの中で私は「ふふっ・・・」と人知れず笑みを浮かべるのだった。


 そして、私は都内の出張から戻り、2日ぶりに自宅があるタワーマンションに帰ったのだった。

 エレベーターで上がる前に自分のポストを見ると、郵便物が大量に入っていた。

 私は思わず「うげっ・・・」と顔をしかめてしまう。

 とりあえず、郵便物は手提げ袋の中に入れて後で時間がある時に見ることにした。


 30階建てのタワーマンションのエレベーターを使い、最上階にある自宅へと私は戻る。

 夕食はもうスタジオで頂いてきたから、今日後はシャワーを浴びて寝るだけだ。

 ふと、キッチンを見てみると、私はあることに気づいた。


「あっ・・・カレーそのままにしてた・・・・・」

 

 先週の金曜日に2・3日分カレーを作って、そのまま放置して旅行に出てしまったのだ。

 4・5日放置してたから、カレーがすっかり“熟成”しすぎてしまっている・・・。


「うっ・・・勿体ないけど仕方ない・・・次回は気をつけよう」


 落ち込みながら、私はカレーを捨てる。

 その後、シャワーを浴びた後、私は部屋に戻りパジャマに着替えてベッドの上に座り込んだ。


「あぁ~、明日は学校行っとかないとねぇ・・・」


 そう言いながら私はベッドの上でゴロゴロする。


「・・・さて、もう、寝ようかな」


 部屋の明かりを消した。そして、そのまま布団に潜り込むと目を閉じる。

 最近、寝るのが少し楽しみになってきた気がする・・・。

 もちろんそれは”例の夢”のおかげだろう。

 今までに見たこともない奇妙な夢ではあるのだが、同時に物凄いスッキリするのだ。

 自分が人間を超越した全能の何かに変わるあの爽快感は現実じゃ得られないものだった。

 まさにあれは夢ならではの特権と言っていいだろう。


「今日もあの変な夢また見るのかな~・・・」


 そんな呟きと共に、私はニンマリと微笑むと、そのまま眠りに落ちていくのだった・・・











「・・・美鈴様・・・美鈴様」


 どこからか私の名前を呼ぶ声がしてくる。


「・・・美鈴様・・・起きてください・・・」


 ゆさゆさと誰かが私を揺さぶってくる。


「・・・美鈴様、そのような所で寝られてはお風邪を召してしまいますよ?」と声がしてきた。

「ん・・・んん・・・」と私は目を擦りながら身体を起こす。


 何故か私はまた、石畳の上で眠っていたようだ。

 そして、声のする方を見るとそこには見覚えがある巫女装束姿の美女が立っていた。


「あ、あれ?・・・春江さん・・・?」と私は寝ぼけ眼で彼女の姿を見る。


 すると、彼女は嬉しそうに頷いた。


「はい!そうです。美鈴様!また、お会いできて嬉しゅうございます!」と春江さんは私に抱き着いてきた。


 私は彼女の柔らかい感触と身体から漂うお香の良い匂いに思わずドキッとする。


「ちょ、ちょっと・・・は、春江さん!?」と私は慌てて彼女から離れようとするのだが、春江さんは離してくれようとしない。


 それどころかさらに強く抱きしめてくるのだ。


「ありがとうございます・・・本当にありがとうございます・・・・」

「貴方様は、間違いなくわたくしの女神様です・・・・」


 そう言って、なぜか春江さんは嬉し涙を流してきた。

 私は訳がわからず困惑してしまう。


(な、なによ?これ・・・)と私は思った。


「・・・え?えっ!?」


 私は思わず声を上げて、辺りを見回す。

 そこは昨日私が夢の中で見たのと同じ場所だった。石畳の上で寝ていた所為か背中が痛い。

 そして、目の前には春江さんがいた。彼女は私の前に跪き涙を流している・・・。


「ど、どういうこと?」と私は呟いたが答えは返ってこない。


 彼女の嗚咽だけが聞こえてくるだけだ。しかし、しばらくすると落ち着いたのか、春江さんは涙を指で拭い、私に向かって微笑んでくる。

 その笑顔は同性の私から見ても見惚れるほど美しかった。


「美鈴様・・・貴方様のおかげで、悪しき大岩は消滅いたしました」

「私も・・・そして私の妹も貴方様に救われたのです」

「本当にありがとうございました・・・!」


 と彼女は正座をして、地面に頭を付けるように深く頭を下げたのだ。

 そして、私も頭が覚醒し「あっ・・・!」と声を上げる。


(そうだ・・・私は昨日、夢の中であの大岩を倒したんだ!)と思い出した。


 そして、私は周りを見渡すがどこにもあの憎たらしい巨大な岩の姿はない。

 あるのは綺麗な神社の風景だけだった。


「そっか、良かったわね!春江さん!」

「これでもう寿命の心配はしないで済むんでしょ?」


 と私は尋ねる。

 すると、彼女は「はい!」と嬉しそうに返事する。

 そして、彼女は襟を正すと、正座をしながら改めて私を見据えてきたのだ。


「美鈴様・・・この御恩は返しきれるものではございません・・・」

「先日お約束いたしました通り、わたくしは貴方様に全てを捧げる所存でございます」

「みすず・・・いえ、”女神・美鈴様”」

「この春江・・・今後貴方様の”信徒”としてお仕し、終生の信仰を誓います!」


 そう春江さんは私に向かって宣言したのだった。


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