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第二十三集
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3の33
沈天祐はスーパーに初めて行った。前を通ることはあっても必要性を感じていなかったから入ることはなかった。
だが、スーパーはまさしく宝物庫!
(また行こう)
心密かに決めた。そして、そこで買った食材で調理がされている。異国の物も混ざっていた。どんな物を作る気だ?
気になって何も手につかない。
怪我人の蓉蓉に作らせるのは正直気が引けるが、レンチン飯には飽き飽きしていた。
炒めてるのか? 蒸してるのか? 焼いているのか?匂いもさることながら、聞こえてくる音も食欲を唆る。リビングで待っている私のところに料理の匂いが漂って来る。
(ああ、早く食べたい!!)
「用意が出来ました」
待ちに待った言葉に、すくっと立ち上がる。
食卓に行くと卓一杯におかずが並んでいる。見た事がある料理も無い料理も、どれもこれも、ホクホクツヤツヤで美味しそうだ。貧しい家の子だから店に出てくるような料理が作れるとは思っていなかった。いい意味で期待が外れた。
「容容は料理上手だな」
「そんな……材料が新鮮だからです。私の腕ではありません」
この一か月腹を満たす以外考えなかった。
久々の御馳走に腹が鳴る。席に付くと早速箸に手を伸ばす。しかし、容容は立ったまま座らない。
「どうした? 一緒に食べないのか?」
「私は後で頂きます」
勧めると一歩後ろに引いた。
まるで使用人のような態度に閉口する。
どちらかと言えば客として扱いたいくらいなのに何も出来ない私が接待を受けているようで情けない。よく見ると箸も飯も一人分しか用意されていない。容容も私と同じで握り飯しか食べていないのに?
どうして別々に食べるんだ?
朝は一緒だった……否、対面式の台所だから気付かなかったが、テーブルと台所で別れていた。
(………)
「遠慮するな」
我が家の使用人でもないんだから同席しても良いのに……。一人飯など味気ない。
「お腹が空いてないので」
ぐぐーっ。
音のする方に顔を向けると容容が顔を赤くする。
(容容の腹の虫が鳴ったのか?)
私と目が合うと慌てて逃げて行った。
「………はぁ~」
容容にも困ったものだ。腹が減っているなら、減っていると素直に言えばいいものを。
否、待て……あの父親のことだ。同席するなと躾けられているのか? 実の娘なのに使用人扱いしていたのか? あの父親なら考えられる。全部親父のせいだな。このまま遠慮ばかりされるのも窮屈だ。何せこの時代の知り合いは二人しかいない。しかも王元より役に立つ。
(………)
徐が居なくなってやる事も無くなった。
何かするにも、こっちの生活になれる必要がある。その為には誰かに教えて貰わなければならない。知らぬ人間に教えてもらうより容容の方が何倍も良い。私の素性を知っているから気が楽だ。知らない事を知らないと言うには……負けた気になる。何より、普通に仲良くなりたい。その為にはこの関係をどうにかしないと。方法としては一緒に食事をするのが手っ取り早い。「同じ釜の飯を食う」と言う言葉がある。
しかし、そう言っても容容の事だ断るに決まっている。他人と一線を引く傾向がある。
人の好意を素直に受け入れられない。
自分は他人より下。そんな根強い劣等感を当たり前だと思うまで、どれたけの月日があったとのか……。想像するだけで腹が立つ。人は皆平等だ。しかし、どんなに言葉を尽くしても今の容容の常識に穿つことは出来ない。一緒に食べるには……理由が必要だ。
ただ仲良くなりたいだけなのに……。策を練らねばならないとは。いやはや、小さく首を振った。
3の34
容容はお腹のなった音を聞かれて恥ずかしさに逃げ出すと台所に行ってコップになみなみと水をそそいでゴクゴクとのどを鳴らして飲み切る。やらかしてしまった……。
(何であのタイミングで腹が鳴ったのよー)
火照った頬を手で隠した。空腹何て何時もの事なのに……。
ねんのためもう一杯飲もう。これでしばらくは空腹がしのげる。天祐さんが食べ終わるまでの辛抱だ。たくさんおかずを作ったから一つくらい残すだろう。
少しでも食べ残してくれたらご飯にありつける。気をまぎらわそうと、洗い物をしているが、頭は天祐さんの食べ残しをどうやって食べようかと考えていた。炊飯器の中にご飯が残っている。おかわりされても、あれを水でふやかせば二倍の量になる。
考えるだけで口の中によだれがたまる。食べ残してくれなかったら、何時ものように皿をなめよう。あれやこれやと考えていると名前を呼ばれた。
「容容。飯と箸を持って来い」
「は~い。只今」
ご飯? 箸? 返事をしながら首をひねった。怒鳴り声でも無かった。怒ってはいないと思うけれど……。落としたのかな?
疑問を抱えたまま天祐さんの所へ行く。すると、腕組みして私を待っていた。
お店で文句を言う客と同じ態度だ。ドキンと心臓の音が大きくなる。良く見ると少しも手を付けてない。
(どうしよう……)
嫌いな物でも入ってたのかな?
味はお店を再現出来たと思っていけど……。舌が肥えてるから満足出来なかったのかな?
箸とご飯の乗ったトレーをつかむ手に力が入る。
「あっ……あの……」
「お前はこの料理の毒味をしたか?」
そう言って料理を顎でしゃくった。
「毒味……ですか?」
そんな……。
さーっと頭のてっぺんから冷たいものを浴びせらたみたいに体が冷える。足元に溜まったそれが、ミシミシと凍りながら這い上がって来る。
(うたがっているんだ……)
私は天祐さんを殺そうとなんか考えてない。
何か誤解している。貧乏でも真面目に生きて来た。悲しいし、悔しい。私はそんな人間ではない。でもそれを証明する事は出来ない。言いわけ一つ思いつかず、やるせなさに唇をかみしめる。どうしたら信じてもらえるのか分からない。
「そうだ。してないならさっさと済ませろ」
「あの……」
でも、信じて欲しい。言葉を探していたけれど、その前に命令された。
「愚図愚図するな、ここに座れ」
天祐さんが自分の前の席を指差す。
「はっ、はい」
言われるがまま席に着くと持ってきた茶碗に
次々とおかずが乗せられた。
「えっ?」
どう言う事? 毒味と言って無かった?
唖然としたまま お椀と天祐さんを交互に見た。
気付けばお茶椀山盛りにおかずが乘っている。そして、その茶碗を私に向かって差し出した。
「んっ」
「えっ?」
「早く毒味をしろ」
意味がわからず 問うように見ると、天祐さんが私の手を取って茶碗を持たせた。
「全部食べろ。食べないなら毒が入っていると思うぞ」
「何を……」
「これからは毎回私の目の前で毒味をするんだ」
「天祐さん……」
そこで初めて天祐さんの意図を理解した。一緒に食べて良いんだ。あったかいご飯を、作り立てのおかずを。こんなふうに私に気づかってくれる人は初めてだ。おかずの乗った茶碗を見てお母さんを思い出す。お腹一杯食べろと、よくこうしてくれた。早く食べなくちゃいけないのに唇が震える。
「ほらほら、早く食べろ」
「はい……」
家では父の食べ残し、バイト先でも一人で賄いの残りを食べていた。誰かに見つかると取り上げられるから、部屋のすみでかくれて食べていた。だから、こうやって誰かと向き合って食事をすることがこんなに楽しいなんてすっかり忘れていた。東岳国でも一人だった。
自然と涙があふれる。
沈天祐はスーパーに初めて行った。前を通ることはあっても必要性を感じていなかったから入ることはなかった。
だが、スーパーはまさしく宝物庫!
(また行こう)
心密かに決めた。そして、そこで買った食材で調理がされている。異国の物も混ざっていた。どんな物を作る気だ?
気になって何も手につかない。
怪我人の蓉蓉に作らせるのは正直気が引けるが、レンチン飯には飽き飽きしていた。
炒めてるのか? 蒸してるのか? 焼いているのか?匂いもさることながら、聞こえてくる音も食欲を唆る。リビングで待っている私のところに料理の匂いが漂って来る。
(ああ、早く食べたい!!)
「用意が出来ました」
待ちに待った言葉に、すくっと立ち上がる。
食卓に行くと卓一杯におかずが並んでいる。見た事がある料理も無い料理も、どれもこれも、ホクホクツヤツヤで美味しそうだ。貧しい家の子だから店に出てくるような料理が作れるとは思っていなかった。いい意味で期待が外れた。
「容容は料理上手だな」
「そんな……材料が新鮮だからです。私の腕ではありません」
この一か月腹を満たす以外考えなかった。
久々の御馳走に腹が鳴る。席に付くと早速箸に手を伸ばす。しかし、容容は立ったまま座らない。
「どうした? 一緒に食べないのか?」
「私は後で頂きます」
勧めると一歩後ろに引いた。
まるで使用人のような態度に閉口する。
どちらかと言えば客として扱いたいくらいなのに何も出来ない私が接待を受けているようで情けない。よく見ると箸も飯も一人分しか用意されていない。容容も私と同じで握り飯しか食べていないのに?
どうして別々に食べるんだ?
朝は一緒だった……否、対面式の台所だから気付かなかったが、テーブルと台所で別れていた。
(………)
「遠慮するな」
我が家の使用人でもないんだから同席しても良いのに……。一人飯など味気ない。
「お腹が空いてないので」
ぐぐーっ。
音のする方に顔を向けると容容が顔を赤くする。
(容容の腹の虫が鳴ったのか?)
私と目が合うと慌てて逃げて行った。
「………はぁ~」
容容にも困ったものだ。腹が減っているなら、減っていると素直に言えばいいものを。
否、待て……あの父親のことだ。同席するなと躾けられているのか? 実の娘なのに使用人扱いしていたのか? あの父親なら考えられる。全部親父のせいだな。このまま遠慮ばかりされるのも窮屈だ。何せこの時代の知り合いは二人しかいない。しかも王元より役に立つ。
(………)
徐が居なくなってやる事も無くなった。
何かするにも、こっちの生活になれる必要がある。その為には誰かに教えて貰わなければならない。知らぬ人間に教えてもらうより容容の方が何倍も良い。私の素性を知っているから気が楽だ。知らない事を知らないと言うには……負けた気になる。何より、普通に仲良くなりたい。その為にはこの関係をどうにかしないと。方法としては一緒に食事をするのが手っ取り早い。「同じ釜の飯を食う」と言う言葉がある。
しかし、そう言っても容容の事だ断るに決まっている。他人と一線を引く傾向がある。
人の好意を素直に受け入れられない。
自分は他人より下。そんな根強い劣等感を当たり前だと思うまで、どれたけの月日があったとのか……。想像するだけで腹が立つ。人は皆平等だ。しかし、どんなに言葉を尽くしても今の容容の常識に穿つことは出来ない。一緒に食べるには……理由が必要だ。
ただ仲良くなりたいだけなのに……。策を練らねばならないとは。いやはや、小さく首を振った。
3の34
容容はお腹のなった音を聞かれて恥ずかしさに逃げ出すと台所に行ってコップになみなみと水をそそいでゴクゴクとのどを鳴らして飲み切る。やらかしてしまった……。
(何であのタイミングで腹が鳴ったのよー)
火照った頬を手で隠した。空腹何て何時もの事なのに……。
ねんのためもう一杯飲もう。これでしばらくは空腹がしのげる。天祐さんが食べ終わるまでの辛抱だ。たくさんおかずを作ったから一つくらい残すだろう。
少しでも食べ残してくれたらご飯にありつける。気をまぎらわそうと、洗い物をしているが、頭は天祐さんの食べ残しをどうやって食べようかと考えていた。炊飯器の中にご飯が残っている。おかわりされても、あれを水でふやかせば二倍の量になる。
考えるだけで口の中によだれがたまる。食べ残してくれなかったら、何時ものように皿をなめよう。あれやこれやと考えていると名前を呼ばれた。
「容容。飯と箸を持って来い」
「は~い。只今」
ご飯? 箸? 返事をしながら首をひねった。怒鳴り声でも無かった。怒ってはいないと思うけれど……。落としたのかな?
疑問を抱えたまま天祐さんの所へ行く。すると、腕組みして私を待っていた。
お店で文句を言う客と同じ態度だ。ドキンと心臓の音が大きくなる。良く見ると少しも手を付けてない。
(どうしよう……)
嫌いな物でも入ってたのかな?
味はお店を再現出来たと思っていけど……。舌が肥えてるから満足出来なかったのかな?
箸とご飯の乗ったトレーをつかむ手に力が入る。
「あっ……あの……」
「お前はこの料理の毒味をしたか?」
そう言って料理を顎でしゃくった。
「毒味……ですか?」
そんな……。
さーっと頭のてっぺんから冷たいものを浴びせらたみたいに体が冷える。足元に溜まったそれが、ミシミシと凍りながら這い上がって来る。
(うたがっているんだ……)
私は天祐さんを殺そうとなんか考えてない。
何か誤解している。貧乏でも真面目に生きて来た。悲しいし、悔しい。私はそんな人間ではない。でもそれを証明する事は出来ない。言いわけ一つ思いつかず、やるせなさに唇をかみしめる。どうしたら信じてもらえるのか分からない。
「そうだ。してないならさっさと済ませろ」
「あの……」
でも、信じて欲しい。言葉を探していたけれど、その前に命令された。
「愚図愚図するな、ここに座れ」
天祐さんが自分の前の席を指差す。
「はっ、はい」
言われるがまま席に着くと持ってきた茶碗に
次々とおかずが乗せられた。
「えっ?」
どう言う事? 毒味と言って無かった?
唖然としたまま お椀と天祐さんを交互に見た。
気付けばお茶椀山盛りにおかずが乘っている。そして、その茶碗を私に向かって差し出した。
「んっ」
「えっ?」
「早く毒味をしろ」
意味がわからず 問うように見ると、天祐さんが私の手を取って茶碗を持たせた。
「全部食べろ。食べないなら毒が入っていると思うぞ」
「何を……」
「これからは毎回私の目の前で毒味をするんだ」
「天祐さん……」
そこで初めて天祐さんの意図を理解した。一緒に食べて良いんだ。あったかいご飯を、作り立てのおかずを。こんなふうに私に気づかってくれる人は初めてだ。おかずの乗った茶碗を見てお母さんを思い出す。お腹一杯食べろと、よくこうしてくれた。早く食べなくちゃいけないのに唇が震える。
「ほらほら、早く食べろ」
「はい……」
家では父の食べ残し、バイト先でも一人で賄いの残りを食べていた。誰かに見つかると取り上げられるから、部屋のすみでかくれて食べていた。だから、こうやって誰かと向き合って食事をすることがこんなに楽しいなんてすっかり忘れていた。東岳国でも一人だった。
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