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第十一集
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計画通り徐有容を殺しに刺客が来た。
(取り逃がしてしまったが……)
しかし、小有容は自分を殺そうとしたのは 蛇だと言う。予想しない言葉に俊豪は眉をひそめた。
小徐有蓉から詳しい話を聞いているが、頻りに見張りの兵に生死を聞いてくる。
自分の代わりになったのではと気になっているようだ。そう言えば見張りの兵の話を聞いていない。
(小有容を落ち着かせるためにも確かめに行くか)
小徐有蓉を隔離した部屋に行くと、古参の配下が一人立っていた。部屋に入ると、彼女の言っていた通り蛇の死骸があった。死骸を剣の鞘で裏返す。一太刀で切られている。部屋を見まわすが争った形跡は無い。当番の見張りの兵は何処へ行った? ……蛇に殺されていないなら刺客と戦ったはずだ。
(………)
蛇を殺したのは誰だ? 見張り? 刺客?
「誰か、ここに参れ!」
「はっ」
「当番の見張りの兵はどうした?」
「あれ? さっきまで居たのに姿が見えません」
一緒に古参の配下が辺りをキョロキョロする。しかし、何処にもその姿が無い。
考えられるのは刺客が一太刀で殺して何処かへ捨てた。または見張りの兵が刺客の仲間か、見張りの兵自身が刺客か……。
謎が次々と浮かぶ。
2の21
墨を磨っていた俊豪は徐有蓉暗殺未遂の報告書を書こうと筆を執る。
頭の中で事の顛末を思い出す。
小徐有蓉を守る事は出来たが、結局刺客の姿は煙のように消えて途中で見失ってしまった。
(応時が、まかれるなど今まで一度も無かったのに……)
折角の好機だったのに計画は失敗に終わってしまった。残ったのは蛇の死骸と見張り当番だった兵の死体。見張り当番だった者は猿ぐつわをされた状態で死体となって見つかった。狙ったのは新兵だった。その状態から死後三日、と言ったところだろう。つまり、本物を殺し何食わぬ顔で見張り当番としてその場に居たのだ。それなのに誰も入れ替わった事に気付かなかった。すれ違ったのは一人や二人ではない。言葉だって交わした者も居る。
見た目だけでなく 本人の細かい情報も入手している。蛇を切った切り口の鮮やかな剣裁きを見るにつけても玄人だと言うことは判断できる。
(蛇は小徐有蓉を部屋の外へ連れ出す為の手段だったと言う事か……)
筆は進まず墨がぽたりと真っ白な紙に落ちる。
「………」
あれほどの人間を雇うには、それなりに地位と金が必要だ。となるとやはり身分の高い者と言う事になる。つまり、徐有蓉の背後に黒幕が居たと言う事だ。犯人の尻尾も新たな手がかりもつかめなかった。陛下に必ず捕まえると大口を叩いたのに……。
狙ったのは新兵だった。気付けば墨で斑点が出来ていた。筆を置くと紙を丸めて捨ると新しく紙を置く。どう書いても叱責を免れないだろう。だが、今いる徐有蓉は本物の徐有蓉ではなんだから刑を執行させられない。そう思うと簡単に筆を取る事が出来ない。
報告書に何と書けば丸く収まるんだ……。腕組みして紙を凝視する。そうすれば文字が浮かんでくるかもしれない。そんな上手くはいくはずもない。しかし、なんとかして刑の執行
を遅らせなくてはならない。
(………)
「俊豪様。皇太子殿下がお見えです」
予想していたことだ。
捕まっている徐有蓉に刺客が現れたと言う事は誰かが口封じしたいからだ。そう聞かされたなら知りたいと思うのは当たり前だ。
しかし、報告できるのはそれだけだ。
全て私の責任だ。甘んじて受け入れよう。
「承知した。お出迎えいたそう」
俊豪は腕を戻すと席を立って迎えた。
そして、少し慌てたように皇太子が従者と共に入っきた。
「では黒幕に辿り着けなかったのか?」
「はい。力不足で申し訳ありません。次こそは必ず証拠を掴んで見せます」
「ああ、しかと頼んだぞ」
皇太子が鷹揚に頷く。俊豪は頭を下げながら皇太子の反応に疑念を抱く。
大した情報も無いのに、その顔は満足そうだ。徐有蓉に死んでほしくないのか?
いくら気になると言っても、情報を知るのも早すぎる。皇太子と言う身分を考えれば参内させれば良いものを。態々私の所へ出向いて来るのも何となく釈然としない。心の奥に押し込めていた考えが浮上してくる。
✳✳✳
光海沈天祐は五階建てのマンションを王元と一緒に見上げていた。
「これが全部寮なのか?」
「 そうです一棟 まるまる 借り上げる方が安いんですよ」
案内するように王元がドアを開けると操作盤にキーを差し込んだ。
(どこかでくすねてきたのだろう)
「 ああ言うところで働く女子は 訳ありの者が多いですからね」
「………」
家出娘に暴力から逃げた者、貧困層の者。
生活が豊かになっても人の生活というものは変わらないな。そんなことを考えているうちに目当ての部屋に着いた。王元が胸ポケットから何かを取り出すと 鍵穴に差し込んだと、同時に鍵が開く。
大したものだ。
「 後は私がするからお前は帰れ」
「本当に大丈夫ですか?」
誰に聞いている。ギロリと睨むと戯けた顔で帰って行った。
2の22
徐有容は今夜も風の音で目を覚ました。
前以上に音に敏感になった。
刺客に命を狙われて二日がたった。しばらくは大丈夫だと俊豪さんが言うけれど。
あんな経験初めてだ。目を開けたらまた居るかもしれない。と言うあの恐怖が忘れられない。
(ネズミならともかく、蛇が居るなんて……)
そのせいかよく眠るのが怖い。気付くと無意識にハリを見上げている。何も無いのに、安心して良いはずなのに心がざわつく。どうしてか、言い知れぬ不安を感じる。ドアを開けたらお父さんが待ちかまえているようなそんな気持ちになる。
部屋を見わたす。私一人誰も居ない。窓に人影も無い。ここにお父さんは居ない。
アリ一匹だって入れないようにすると約束してくれた。大丈夫。なだめるように心臓の上に手を置く。念のためもう一度、ハリを見る。大丈夫。蛇は居ない。
落ち着こうと水を飲もうと起き上がってテーブルに置いてある急須に手を伸ばした。ところが、つかまえる前に首がしめられたように苦しくなる。首に手の感触がある。しめられてる。また刺客? でも人の姿が無い。姿の見えない人に誰かにしめられているのはまちがいない。
「なっ……何……」
妖術? 透明人間? 影も形も無い。だけど、たしかに殺されそうなになっている。
「くっ、くっ、苦しい」
あまりの苦しさに寝台からころがり落ちた。
必死に手を外そうと自分の首に手をのばす。自分の首に触れている感覚はあるのに、私の首をしめている手に触れる事が出来ない。
(どうなってるの?)
苦しさに手足をバタつかせると足がテーブルに当たった。
そのひょうしに茶碗がこわれる。
パリーン!
「どうした?」
茶碗がわれた音に見張りの兵が声を掛けて来た。
「たっ……助けて……」
「おい。返事をしろ」
苦しみながら助けを求めて見張りに向かって手を伸ばした。
息が、息が、……死っ、死ぬ。今すぐ手をどかしてくれないと死ぬ。姿の見えない誰かが私を本気で殺そうとしている。その気持ちが指先から怒りがつたわってくる。
「おいしっかりしろ。誰か!」
見張りの叫び声がする。さわがしく動く人のケハイがする。誰でも良いから助けて。
苦しさに気が遠くなりそうになる。
駄目だ。
ここで諦めたら死んでしまう。気を失いしなそうな自分に言い聞かせた。すると、
3の1 光海
見えない犯人の手が緩んだ。これで助かる。そう思った。
「けほっ、けほっ、けほっ、けほっ」
(取り逃がしてしまったが……)
しかし、小有容は自分を殺そうとしたのは 蛇だと言う。予想しない言葉に俊豪は眉をひそめた。
小徐有蓉から詳しい話を聞いているが、頻りに見張りの兵に生死を聞いてくる。
自分の代わりになったのではと気になっているようだ。そう言えば見張りの兵の話を聞いていない。
(小有容を落ち着かせるためにも確かめに行くか)
小徐有蓉を隔離した部屋に行くと、古参の配下が一人立っていた。部屋に入ると、彼女の言っていた通り蛇の死骸があった。死骸を剣の鞘で裏返す。一太刀で切られている。部屋を見まわすが争った形跡は無い。当番の見張りの兵は何処へ行った? ……蛇に殺されていないなら刺客と戦ったはずだ。
(………)
蛇を殺したのは誰だ? 見張り? 刺客?
「誰か、ここに参れ!」
「はっ」
「当番の見張りの兵はどうした?」
「あれ? さっきまで居たのに姿が見えません」
一緒に古参の配下が辺りをキョロキョロする。しかし、何処にもその姿が無い。
考えられるのは刺客が一太刀で殺して何処かへ捨てた。または見張りの兵が刺客の仲間か、見張りの兵自身が刺客か……。
謎が次々と浮かぶ。
2の21
墨を磨っていた俊豪は徐有蓉暗殺未遂の報告書を書こうと筆を執る。
頭の中で事の顛末を思い出す。
小徐有蓉を守る事は出来たが、結局刺客の姿は煙のように消えて途中で見失ってしまった。
(応時が、まかれるなど今まで一度も無かったのに……)
折角の好機だったのに計画は失敗に終わってしまった。残ったのは蛇の死骸と見張り当番だった兵の死体。見張り当番だった者は猿ぐつわをされた状態で死体となって見つかった。狙ったのは新兵だった。その状態から死後三日、と言ったところだろう。つまり、本物を殺し何食わぬ顔で見張り当番としてその場に居たのだ。それなのに誰も入れ替わった事に気付かなかった。すれ違ったのは一人や二人ではない。言葉だって交わした者も居る。
見た目だけでなく 本人の細かい情報も入手している。蛇を切った切り口の鮮やかな剣裁きを見るにつけても玄人だと言うことは判断できる。
(蛇は小徐有蓉を部屋の外へ連れ出す為の手段だったと言う事か……)
筆は進まず墨がぽたりと真っ白な紙に落ちる。
「………」
あれほどの人間を雇うには、それなりに地位と金が必要だ。となるとやはり身分の高い者と言う事になる。つまり、徐有蓉の背後に黒幕が居たと言う事だ。犯人の尻尾も新たな手がかりもつかめなかった。陛下に必ず捕まえると大口を叩いたのに……。
狙ったのは新兵だった。気付けば墨で斑点が出来ていた。筆を置くと紙を丸めて捨ると新しく紙を置く。どう書いても叱責を免れないだろう。だが、今いる徐有蓉は本物の徐有蓉ではなんだから刑を執行させられない。そう思うと簡単に筆を取る事が出来ない。
報告書に何と書けば丸く収まるんだ……。腕組みして紙を凝視する。そうすれば文字が浮かんでくるかもしれない。そんな上手くはいくはずもない。しかし、なんとかして刑の執行
を遅らせなくてはならない。
(………)
「俊豪様。皇太子殿下がお見えです」
予想していたことだ。
捕まっている徐有蓉に刺客が現れたと言う事は誰かが口封じしたいからだ。そう聞かされたなら知りたいと思うのは当たり前だ。
しかし、報告できるのはそれだけだ。
全て私の責任だ。甘んじて受け入れよう。
「承知した。お出迎えいたそう」
俊豪は腕を戻すと席を立って迎えた。
そして、少し慌てたように皇太子が従者と共に入っきた。
「では黒幕に辿り着けなかったのか?」
「はい。力不足で申し訳ありません。次こそは必ず証拠を掴んで見せます」
「ああ、しかと頼んだぞ」
皇太子が鷹揚に頷く。俊豪は頭を下げながら皇太子の反応に疑念を抱く。
大した情報も無いのに、その顔は満足そうだ。徐有蓉に死んでほしくないのか?
いくら気になると言っても、情報を知るのも早すぎる。皇太子と言う身分を考えれば参内させれば良いものを。態々私の所へ出向いて来るのも何となく釈然としない。心の奥に押し込めていた考えが浮上してくる。
✳✳✳
光海沈天祐は五階建てのマンションを王元と一緒に見上げていた。
「これが全部寮なのか?」
「 そうです一棟 まるまる 借り上げる方が安いんですよ」
案内するように王元がドアを開けると操作盤にキーを差し込んだ。
(どこかでくすねてきたのだろう)
「 ああ言うところで働く女子は 訳ありの者が多いですからね」
「………」
家出娘に暴力から逃げた者、貧困層の者。
生活が豊かになっても人の生活というものは変わらないな。そんなことを考えているうちに目当ての部屋に着いた。王元が胸ポケットから何かを取り出すと 鍵穴に差し込んだと、同時に鍵が開く。
大したものだ。
「 後は私がするからお前は帰れ」
「本当に大丈夫ですか?」
誰に聞いている。ギロリと睨むと戯けた顔で帰って行った。
2の22
徐有容は今夜も風の音で目を覚ました。
前以上に音に敏感になった。
刺客に命を狙われて二日がたった。しばらくは大丈夫だと俊豪さんが言うけれど。
あんな経験初めてだ。目を開けたらまた居るかもしれない。と言うあの恐怖が忘れられない。
(ネズミならともかく、蛇が居るなんて……)
そのせいかよく眠るのが怖い。気付くと無意識にハリを見上げている。何も無いのに、安心して良いはずなのに心がざわつく。どうしてか、言い知れぬ不安を感じる。ドアを開けたらお父さんが待ちかまえているようなそんな気持ちになる。
部屋を見わたす。私一人誰も居ない。窓に人影も無い。ここにお父さんは居ない。
アリ一匹だって入れないようにすると約束してくれた。大丈夫。なだめるように心臓の上に手を置く。念のためもう一度、ハリを見る。大丈夫。蛇は居ない。
落ち着こうと水を飲もうと起き上がってテーブルに置いてある急須に手を伸ばした。ところが、つかまえる前に首がしめられたように苦しくなる。首に手の感触がある。しめられてる。また刺客? でも人の姿が無い。姿の見えない人に誰かにしめられているのはまちがいない。
「なっ……何……」
妖術? 透明人間? 影も形も無い。だけど、たしかに殺されそうなになっている。
「くっ、くっ、苦しい」
あまりの苦しさに寝台からころがり落ちた。
必死に手を外そうと自分の首に手をのばす。自分の首に触れている感覚はあるのに、私の首をしめている手に触れる事が出来ない。
(どうなってるの?)
苦しさに手足をバタつかせると足がテーブルに当たった。
そのひょうしに茶碗がこわれる。
パリーン!
「どうした?」
茶碗がわれた音に見張りの兵が声を掛けて来た。
「たっ……助けて……」
「おい。返事をしろ」
苦しみながら助けを求めて見張りに向かって手を伸ばした。
息が、息が、……死っ、死ぬ。今すぐ手をどかしてくれないと死ぬ。姿の見えない誰かが私を本気で殺そうとしている。その気持ちが指先から怒りがつたわってくる。
「おいしっかりしろ。誰か!」
見張りの叫び声がする。さわがしく動く人のケハイがする。誰でも良いから助けて。
苦しさに気が遠くなりそうになる。
駄目だ。
ここで諦めたら死んでしまう。気を失いしなそうな自分に言い聞かせた。すると、
3の1 光海
見えない犯人の手が緩んだ。これで助かる。そう思った。
「けほっ、けほっ、けほっ、けほっ」
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